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『修羅の都』 書評 【伊東潤ブックコンシェルジェ】

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【今回の選者:玉木造(@tamaki39)さん 】

タマキさん

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書評:『修羅の都』(文春文庫)

冒頭、いきなり「承久の乱」が開始される直前の政子の演説から入るこの小説。読み始めると背筋がぞくぞくします。頼朝と創り上げてきた鎌倉府への政子の想いの全熱量がこの場面に集約されている感じがするのです。

この本を読む前に、鎌倉時代の小説の草分けである永井路子氏の不朽の名作「北条政子」を読んで1つだけ不満に感じたことがありました。それは、政子と頼朝がこの鎌倉府を創り上げるにあたり、かなりの精神的な犠牲を払い、それが後の「承久の乱」の政子の大演説につながったというプロセスが見えなかったことです。

これを見事に描いてくれたなあと思うのが、この作品「修羅の都」です。

永井氏の本と同様、鎌倉府創生の様々なプロセスが彼女を苦しめたという心理的葛藤が良く描かれています。それが、この本の冒頭に「承久の乱の大演説という形で昇華した姿」となることは大いに説得力があります。

また、弱りつつある晩年の頼朝に寄り添いながらも、政治的英断をせざるを得ない妻・政子、それを受け入れる夫・頼朝とのやり取りは心の琴線に触れ、感涙せずにはいられません。

歴史小説は、史実に縛られ、ダイナミックな人間模様を展開しづらい場合が多いような気がします。ところが、この作品は、謎の多い頼朝の死に関して、史実はきちんと押さえながらも、大胆かつ蓋然性の高いストーリーを展開し、それが感動的な人間模様に繋がっているのです。

感動できる1冊です。

〈内容〉
「武士の世を創る」
生涯の願いを叶えるため手を携えて進む、源頼朝と政子。

平家討伐、奥州を制圧、朝廷との駆け引き。
肉親の情を断ち切り、すべてを犠牲にして夫婦が作り上げた武家政権・鎌倉府は、しかしやがて時代の波にさらわれ滅びに向かう。

魔都・鎌倉の空気、海辺の風を背景に権力者の孤独と夫婦の姿がドラマティックに描き出される。頼朝晩年に隠された大いなる謎とは?『吾妻鏡』空白の四年間を解き明かす圧巻のラストは必読!

新聞連載時から大きな反響を呼んだ感動の長編エンタテインメント。

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