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『2022年展望号』【人間発電所日誌】第一〇六号

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こんばんは。伊東潤です。
今夜もメールマガジンをお届けします。



〓〓今週の人間発電所日誌目次〓〓〓〓〓〓〓

1.はじめに

2. 「2022年展望号」
①小説の新作単行本
②歴史ノンフィクションの新作と準新作
③文庫刊行予定

3. 2022年の目標

4. 質問コーナー

5. お知らせ
Voicy・ラジオ出演情報

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1.はじめに

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 いよいよ正月も終わり、皆さん仕事に邁進しているのではないかと思います。
 今年はどんな年になるか分かりませんが、もうコロナ禍による様々な制限だけはたくさんです。私のような老人でさえそう思うのですから、若い人はなおさら辛いですね。
 ということで、今年も元気よくスタートしましょう。

 個人的には、1月7日に『威風堂々(上) 幕末佐賀風雲録』『威風堂々(下) 明治佐賀風雲録』(以下、『威風堂々』)の超大作を発刊することで、伊東潤の2022年がスタートします。発売から二週間ほど経った現在、上下巻の売り上げとしては絶好調で、これから一気に波に乗りたいところです。

 さて、今回は「2022年展望号」ということで、伊東潤の今年の出版予定をお伝えしていきたいと思います。
 本来だと年初の最初の号で恒例だったのですが、今回は1/7に『威風堂々』の発刊があったので、ロングインタビューを先にメルマガに掲載させていただき、新年第二号で「2022年展望号」をお送りいたします。

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2. 「2022年展望号」

①小説の新作単行本

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 コロナ禍によって自由な生活が抑制され続けた2020~2021年でしたが、2022年も新年早々、オミクロン株によって社会が壊されようとしています。
こうした不遇の時代だからこそ、元気の出る物語が必要です。その点、2021年の大河ドラマ『青天を衝け』は、実にタイムリーだった気がします。

『青天を衝け』で大きくフィーチャリングされていた一人に大隈重信がいます。伊東潤の2022年は、この大隈を主人公に据えた『威風堂々』で幕を開けることになります。
 幕末から大正にかけて彗星のごとく登場した大政治家・大隈重信。彼は何を見て、何を考え、何を成し遂げたのか。その波乱万丈の生涯を描いたのが、『威風堂々』になります。

 本作は、明治政府きっての実務家にして外交官の大隈の視点を通じて、幕末から明治、そして大正時代までウォークスルーしていくという評伝小説です。
無理を無理とも思わず、不可能を不可能としない明治維新スピリットの象徴・大隈重信の生涯をぜひ知ってほしいという一念で本作を書きました。きっと元気が出る一冊になると思われます。

続いて四月、『天下を買った女』が発刊されます。本作は「小説野生時代」連載時のタイトルは、『悪しき女(ひと) 室町擾乱(じょうらん)』でした。しかしそれでは内容が伝わらないということで、担当編集の提案によってタイトルを変更しました。

本作の主人公は日野富子。舞台は室町時代の京都です。これだけ聞けば、すぐに応仁の乱を舞台にした女性の一代記だとお気づきですね。
本作は女手一つで応仁の乱を収束させた日野富子の半生を描いた作品で、女性の社会進出が盛んになってきた令和の時代だからこそ読んでいただきたい作品です。

『天下を買った女』というタイトルには、ある思いが込められています。実は応仁の乱を収めたのは日野富子なのです(厳密には乱を地方に拡散させ、京都を戦火から救った)。
「それは本当?」とお思いの方も多いのではないかと思いますが、実は富子が財力に物を言わせ、京都で戦う東西両軍の諸将を引き揚げさせたのは、研究家の先生方の見解とも一致しています。しかも本作は夫の義政、息子の義尚との家族の物語でもあります。そこには擦れ違いだらけの夫との関係、また気性の激しい息子をコントロールできない母親の苦しみといった現代にも通じる富子の苦悩や葛藤が描かれています。

 三大悪女の一人として、これまでネガティヴなイメージを持たれてきた日野富子の実像は、いかなるものだったのか。おそらく全く新しい日野富子に会えると思います。

 七月には、『修羅奔る夜』という作品を刊行します。いかにも時代小説的なタイトルのイメージとは違い、2020年代を舞台にした現代物です。本作は、一人の女性の目を通して「何かを成し遂げること」の大切さを訴えたものです。こちらも女性の自立が盛んな令和ならではのテーマでしょう。

物語の舞台は青森。ねぶた師の家に生まれた一人の女性が、病で倒れたねぶた師の兄を助けるべく帰郷し、一度は捨てたねぶた師への道を再び歩み始めるという物語です。ねぶた祭りという独特の熱狂を生み出す舞台で、彼女は何を見出し、何に挑んでいくのか。老若男女を問わず、誰の胸も熱くさせる物語です。

 そして十月、大作『天下大乱』が登場します。舞台は関ヶ原。視点は徳川家康と毛利輝元(愛称テル)となれば、「おおっ、読みたい」となる向きも多いのではないかと思います。そうです。本作は、私が長編としては初めて挑む関ヶ原の戦いを描いた物語なのです。

 本作の特徴は、恋愛とか忍者、はたまた架空の人物が大活躍するといった「お約束の展開」を一切排除し、東西両軍の駆け引きだけを描いている点です。
歴史小説ファンにとって何が読みたいかと言えば、恋愛模様や架空の人物の武勇伝ではないでしょう。とくに関ヶ原の物語で最も望まれるのは、真っ向から描いた両陣営の駆け引きです。まあ、業界の評価は得られずとも(笑)、戦国物が好きな読者には「一気読み仕様」になっています。

 そして翌十一月、立て続けに刊行するのが『家康と淀殿』になります。もうタイトルだけで内容の説明は不要ですね。ただし本作は家康と輝元の駆け引きに徹した『天下大乱』とは違い、家康と淀殿双方の心理描写に重きを置き、それぞれの「思い」は何だったのかを探っていく作風になっています。大坂の陣という人間悲喜劇を、伊東潤がいかに描くのかご期待下さい。
 また本作によって、日本史上の「三大悪女」と言われてきた北条政子(『修羅の都』『夜叉の都』)、日野富子(『天下を買った女』)、浅井茶々(淀殿)を描き切ったことになります。三人の女性のイメージを書き換える(ただし史実を重視して)という私の念願が、遂に完結することになります。これは令和が「女性の時代」だからこそ、書き上げられた四作だと思います。

 今年刊行が予定されている小説の新作単行本は、以上の四作になります。たまたまですが、今年はすべて長編になります。

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