未来の地方xR就活場所を勝手に考えてみる

こんにちは、じゅんです。Hokkaido MotionControl Network(#DoMCN)という、HoloLens・VR技術好きの技術者コミュニティの勉強会を運営していて、開発者の知見の交流を促進しています。また、元・物性研究者として、研究機関に所属する若手研究者でxRに興味を持つ人を見つけてはHoloLensを被せに行き、開発者コミュニティへの橋渡しを行う事を続けています。これらを適切に表現する職名が無いので、勝手にScientist/Developer Relations と名乗っています。

xRの求職マッチングサービスを運営されている小磯さんからミーティングのお誘いを受けた事をきっかけに、私自身も今後業界から地方に求められる機能はなんだろうと思い始めたので、私なりに状況を整理してみようと思います。

前提

私の立ち位置:過去の自分自身をなんとか救いたい
非XR領域で働いていて、プログラミングスキルなどは全然ないけどなんか面白そうな領域に貢献出来たらいいなと思い始めている一般人を想像してください。しかも地方に住んでいるというハンデ付き。果たして彼は就職できるのでしょうか!?

2022年の状況分析

(ここは私の観測範囲で起きたことからの推測と私の経験のみで書く部分なので、他のエンジニアの方からは違って見えてる景色の可能性が高いです)

 東京のxR系スタートアップは大規模な採用キャンペーンをそれぞれ打ち上げて日々人材を求めて活動中の状態です。外部からの大きめの投資を受けて開発力強化をしようとしているような印象があります。とはいえ、2017年から比べると、最近はBtoCだった会社もBtoBにシフトしていったような印象が強く、どんな製品開発をしている会社なのかが外から見えにくくなった印象です。
 一方地元(地方)においては2017年付近はxRを新規事業として盛り上げようとする会社があったものの徐々にその姿を消していき、HoloLens 2が発売された時も新規参入をうたう企業はそれほど増えませんでした。参入が無いので当然地元に雇用が生まれている話は聞こえてきません。たとえば、情報系などに所属していて感度の高い学生は2018年以降VRを個人的に触るなどして技術を蓄えていました。しかし残念ながらxR系企業への内定を得ることはできずに、卒業後には地元の非xR系の企業に入社してしまいました。ですので、新規組の地元へのxR就職はないものと、この記事では扱います(事実かどうかはさておき)。

ミスマッチが増えそうな状況が続いているように見える

 まず、人材を募集している関東の会社では、案件が大型化・複雑化したことによってエンジニアに求められる能力水準が上がっている可能性があります。会社としては、目まぐるしく変わる社内状況を適切に助けてくれる技術者に自社の存在をアピールしなければならない状況が続いていると思われます。しかもタイミングを逃すとそのうちに社内事情が変わっていたりするので、なるべく早く採用に至りたいのが本音ではないでしょうか。
 また、他社の大きなIPを取り扱う案件などはたいていの場合には秘密保持契約などの縛りを受けますので発信が制限され、一般人に認知される期間が非常に限られます(公開期間が短いのも良くない(がIPホルダーの論理もわからないではない))。つまり、採用側は企業内の技術力を一般層にアピールする方法をこれによって失います。
 社内の弱点と強みを伝える事が出来ていなければ、満足感のある採用に至る事は少ないんじゃないでしょうか。安定軌道に乗っていない今だとなおさらだと思っています。社内に採用枠が産まれた時に、「うちの文化のこの案件なら〇〇さんが好きそうだな」と思い起こせる状況が理想だと考えます。

 求職者サイドではどうかというと、地方でxR技術のニーズ(というか東京並みの発注予算)が無い都合上、黙っていてスキルが伸びる土壌ではありません。開発力を育む環境は業務外という事になり、本当にやる気のある人しか目立って来ないのが現状です。さらに感染まん延などの要因で移動が封じられている事が多く、関東のイベントなどに直接行って会社と知り合うなどの手段も取れていないため、2020年以降の社内との縁づくりは絶望的な状況が続いています。もちろん採用側会社のプロダクトに触ることも、展示会などに行くことができていない現状だと難しいので、どんな製品がつくられているのかといった重要な情報が口頭だったりするわけです。
 求職者のエンジニアにとっては、どんなものをどんな思想で作っている会社なのかが重要なので、その情報の欠落は応募のブレーキになります。しかし飛び込んでみない限りは活路も開けないという微妙な状況に立たされているのが現状です。

 前提に戻って考えると、2017年くらいのスキルの当時の私は今は救われないことになります。情報が無い中で有名企業に片っ端からエントリーして全敗する姿が目に浮かびます。こういう状況になると、リファラル採用に望みをかけるしかありませんが、そもそも論として果たして関東の会社で、地方のxR民に継続的に目を付けている会社はあるのでしょうか?

 上の困っている状態を何とか緩和できないものか(そしてついでに私を救いたい)と、思いつく仕組みを並べてみます。

重要そうな要件・機能

・世に出ていないアプリケーションを実際に試すことができる
・企業の現時点で補強したいポイントが分かる
・求職者の技術的関心領域・現有スキルが分かる

このあたりが、マッチングのハードルを下げる要因になるかなと考えます。求職者が2年前のプレスリリースで止まっている会社に応募するとかはちょっと無理だと思いますし、かたや採用側もエンジニアの素性が良く分からないまま採用しちゃうのもとても怖いですよね。双方、今の情報が欲しいですよね。と私なんかは思うんですが実態はよくわかりません。わかんなくても採ってるのかな。

脳内セッティングしてみるとこんな感じか

 まずアプリのお試し体験会をするための場所を新たに確保します。常設でも仮設でもOK。そこに機材一式を全部置きます。採用側企業が取り扱う製品を体験することができるに十分なマシンスペック・回線を確保します。
 そして採用側企業からアプリの使用ライセンスを特別に得るプロセス(大変そう)を経て、その場所でしか体験できないBtoBアプリ体験会が出来る場所にします。
 求職者がこの場所に来ると、採用側企業が今後推していきたいであろう製品・サービスの現行版が体験できるようになっています。採用側企業は、企業・アプリに興味ある人が現れた際にこういう場所を案内して、じっくり遊んでもらった後で面談なりなんなりの次のステップに行けば良さそうな気がします。

場所にアプリ体験を紐づける意味は2つあります。
 一つは場所の管理人が複数のアプリをそこで紹介できる体制があるという事です。コンセプトの似通った複数のアプリをその場所で求職者が体験することによって、その時求職者が知らなかった別の開発会社も候補に入れることができるようになります(細かなUIのニュアンスの違いから開発の哲学なんかも読み取れると思います)。そうするとその時の応募が残念な結果であっても、待ち時間なく次にチャレンジできそうです。
 もう一つは営業代行機能です。常時求職者が居るわけではないこの場所の近所に、採用側企業の潜在顧客が居た場合、ここを使って体験してもらう事もできます。xRデバイスの取り扱いのリテラシーのギャップがXR企業と非XR企業の間でどんどん大きくなる中、この施設を利用してもらえば取り扱いに慣れたアテンドの元で体験することができるので商談プロセスのアシストの効果が見込めます。ハードウェアを売りたい企業もここにデモ機が置いてあれば、一般層との接点において表面積を稼ぐことができますので普及の拠点にもなるかもしれません(貸し出しによる紛失・破損リスクは一般向けよりは低い)。開発機があれば、その場で検証作業なども行えると思いますので、機材が無くて始められないという状況も緩和されます。また、情報発信の許可が得られていれば随時SNSへの発信も行えますし、認知向上の手助けになりそうです。

運営面での工夫はアイデア次第でいろいろ出来そうな気がします。
 常設の場所であれば、ワークショップなんかを定期開催しておけば地方のエンジニアが最新技術をキャッチアップする手段も提供できそうですし、その方が採用側企業にとってもスキル把握の面で都合が良さそうです(利用者の会の運用も見えてきます)。
 仮設の場所での運用であれば、むしろ客先営業の能力を発揮できます。つまり出張授業のような形態で体験会出来るので、採用側企業の顧客ドメインの知識が付きそうです。

 マッチングの橋渡しの機能を主に担う事になるので、採用側企業の動向などは管理人がストックしておいて第三者の視点で参考資料を求職者に提供しつつ判断してもらうとかになるんでしょうか。採用担当者に実際に話を聴きたくなった時にはホットラインを繋いでみるとかそういう機能を持っても採用側企業としては助かるのかもしれません。管理人が大変になると本末転倒なので基本機能以外はオプションですね。

イメージはハンターズギルド

 ゲーム「モンスターハンター」シリーズのクエスト斡旋を担当する設定になっているハンターズギルドという組織を想像しながら書いています。窓口を通じて戦績に見合った仕事(クエスト)を紹介してくれます。今回のお話は、この機能に、xRアプリの先行体験機能がくっついてみたものと雑に解釈してもらうのが良さそうです。
 多分この仕組みは拠点一つだとあまり意味を成しませんが、各地域に散らばって存在して時々緩く連携しているとかだと付加価値が出てくると期待します。

おそらく大きく儲からないが数年以内に必要になる機能な気がする

 ここまでを読んだ方はお気づきかもしれませんが、人力の部分が業務の大部分を占め、しかも自動化できない領域の業務ばかりになります。しかも場所の管理業務にもそれなりのxR系のスキルが求められます。したがって、利用希望者が多くなってきても管理人を増やす以外のケアが無く、これは現代の商業的にスケールしません。しかも提供できる体験満足度と管理人の収入のトレードオフが発生します(体験させるアプリを手広く受け付けすぎると、管理人の中での理解度が薄まる)。なので、このアイデアで一獲千金とか考えるのは愚策になります。

 なぜそんなことを今考えているかと言えば、需要増のタイミングが必ず来るからです。学科の研究対象としてVR・ARを取り扱う情報系の学校が増えていたり、新たにxRの科を創設する学校などがコロナを契機に増えました。2,3年後にそれらの学校の卒業生が採用市場にドバっと溢れる事が想像できます。当然、一般層からの流入組も潜在的なエンジニアとしてそこに居るわけですから、満足度あるマッチングを手軽に執り行える機関が無いと、採用側も求職側も困る事になると考えています。
 もちろん、XR企業の顧客側にもxRネイティブな担当者が居ないとスムーズな導入が出来なくてつらいのでそちらにも学生が流れていく必要はあるとは思っています。それでも最初に志した業界に残れないのはたいへん不幸なことだと思いますので(私が体験したのでよくわかる)、そういう事が減らせる方法はないのかと日々考えている中から、就活をテーマに書いてみました。

ギルドを運営するのに必要なスキル

・お見合いオバサン的な人格と行動原理
・身の回りのコミュニティをいい感じにする運営スキル
・最新の機器や機能を理解して取り扱うxR系スキル
・適切にアプリの長所を引き出して未経験者に体験させるxRアテンドスキル
・企業側に協力いただくための交渉スキル
・求職者の希望を抽出するための会話スキル
・採用企業に人物を知らせる仲介スキル
・企業の顧客側の業務知識を聞き取るスキル
・炎上しない発信が出来るSNSスキル
・法令面とか衛生面で無茶をしないスキル
・セルフ健康管理

とかでしょうか。書いてみるとアレですが、大手だとできなさそうですね(割に合わな過ぎて)。

やるのかいやらないのかいどっちなんだい

今の環境だとやりません('ω')
 採用特化のサービスをするには私自身のxR業界知識が少ないことと、もともとの私の強みであったアカデミア属性が活きない事がネックになります。また、常時使える場所も現在模索中ですし、なにより維持管理費を最小に抑えたいフリーランス業のお財布事情とも相反しています。
 4年間コミュニティを運営してみて分かった事として、札幌で今更就職アシスト業を行う事は不利だと思っていますので、やるとしたら別の地域で試すのが定石だろうと考えます。
 こういうサービスが一番根付きそうな雰囲気を私が感じる地域は福岡エンジニアカフェでしょうか。東京近郊では、この手のサービスは不要でしょう。東京にある企業にそのまま訪問するのが最速である事実は変わらないので、それ以外の地域でエンジニアがキャリアを伸ばせる場所として運営する気持ちが必要です。
 スタート時はどこかのxR企業の紐付きで始めて、徐々に独立性を高めていく工夫なども必要になるかもしれません。管理人のキャリアとしては、場所の管理でスキルが上がっていって、開発会社の専属エバとして再び引き抜かれていく、とかでしょうね。後任は簡単には立てられないのでその拠点はクローズとなるでしょう。
 もし仮に私が始めるとすれば、カッコいい呼び名を使わず、ひたすらクソダサな見かけに徹するとかになりそうです。リスクも視えています。

まとめ

 最近身の回りで起こっている採用がらみのイベントなどを見渡して今書ける事をまとめてみました。xR企業なんだからフルリモートですべてが完結するなんてのは割と幻想で、実際には体験しないと分からないxR体験を取り扱う企業だからこそ体験重視ですべてを進める必要があるだろうというのが私のスタンスです。
 採用側企業の方がこれを読んで、なんかこういう機関があったら助かる!みたいに思ってもらえたとしたら、アクションとともに記事を広めてくれたりすると嬉しいです。反響によってはもしかしたら1㍉くらいやる気が出てくるかもしれません。
 今回は、お客の地域分布とかの情報はあえて抜いてまとめましたので、飛躍のある個所がたくさんあります。「うちは採用してるよ!」と反論したい方も出てくると思います。私は見ています('ω')しかし一般層の目には届いていません。多分。
 大事な事なので2回書きますが、個人が最初に志した業界に残れないのはたいへん不幸なことだと思いますので(体験するとわかる)、そういうことが無い界隈にして行けたら良いなと思いながら日々生きています。就職できてないけど。

参考にした事例・団体など
キーエンス(商材全部持ってきちゃう)・モグキャリ・#XR転職 合同相談会など各種イベント・ハロワの実体験・MatchXRs・アドバンスドテクノロジーラボ(ATL広尾) などたくさん

↑こういう場所と求人用ネタが組み合わさるといいと思った

以上です。(最近きんに君にツボってしまうので一部寄せてみました)

(2020/4/13 初稿公開 5673字 240 min)