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日本顕微鏡学会第79回学術講演会(現地開催のみ)に参加してきた話

こんにちは、じゅんです。
Hokkaido MotionControl Network (#DoMCN)というHoloLens・VR技術好きの技術者コミュニティの勉強会を運営していて、開発者の知見の交流を促進しています。また、元・物性研究者として、研究機関に所属する若手研究者でxRに興味を持つ人を見つけてはHoloLensを被せに行き、開発者コミュニティへの橋渡しを行う事を続けています。これらを適切に表現する職名が無いので、勝手にScientist/Developer Relations と名乗っています。
 私の所属学会の全国大会が6月26~28日の期間で開催されました。今回は島根県松江市で行われ、現地開催のみという体制でした。運営・参加者の皆さんお疲れ様でした。参加レポートを例年通り残しておこうと思います。

 去年までのハイブリッド開催とだいぶ体験面で変化を感じましたので、差分も書いておきます。29日に札幌に帰ってきて約二週間ですが、特に体調面の変化も見られないので、なんとかリスクは回避できたようです(今回が一番ドキドキした)。


オフライン会場の様子

 会場のくにびきメッセでは、数トラックの口頭講演が5か所の講演会場で行われていました。会期中に見られるポスター発表が大きな展示ホールに貼られており、ディスカッション用のコアタイムは今回はお昼休みの直後に設定されていました。ポスター番号の奇数番と偶数番のコアタイムが別日に割り振られており、隣り合うポスターが過密にならないようになっていました。
 企業展示ブースは会場エントランスとポスターの間の領域に置かれており、今回は展示社の数も多そうでした。
 コーヒー無料のゾーンは今回も設置されず、代わりに茶道の雰囲気のある休憩所(来場者数に上限アリ)が設けられていました。
 今回、新たな試みとしてキャリア相談所が企業展示ゾーンの脇に設置されていました。就職に興味のある学生がそこに行くと、働き方などの紹介をしてもらえるようでした(私が辞める前にこういうのが出来ていれば相談しに行ってたのに。。)。

オンライン会場が廃止に

 前回はzoom配信へのリンクのついた視聴用ポータルのようなものが設置されていましたが、今回はそれが無くなりました。
 講演アブストラクトはPDF版、Web版をそれぞれ利用可能で、参加者はこれらの情報か、受付で渡されたプログラムの冊子を見て行き先を決める感じになっています。Web版にはログイン用のパスワードがかかっており、会場に掲出されているものを見ないとログインできない運用になっていました。

無くなったもの・復活したもの

 会場入り口の体温測定の装置は無くなったような気がしました。消毒設備も最低限でした。

 今回は懇親会が2日目の夜に開催される事になりました。展示ブースのある広いホールの脇での出し物が催されたようですが、コロナ予防のため私は不参加でしたのでよくわかりません。
 ランチョンセミナー・ワークショップが復活してきて前回よりも開催数が増えたように思います。

三日間の過ごし方(会場)

 松江駅すぐそばのホテルから徒歩で橋を渡り、直接会場に行けました。講演を聴いたり展示を見て、担当の人たちと交流して夕方になったら宿に戻るという感じで過ごしていました。
 展示ホールにはwifiが設置されていました。
 今回は配信が無いため、各ルームにWi-Fiが配置されてたりもしませんでした。私は自分で持ち込んだモバイルルーターを使ってネットに繋いでいました。
 配信が無くなったことにより、講演を聴くには会場に行く以外の方法が無くなり、講演ごとに研究者たちの大移動が起きるようになりました。
 コロナ前の風景がいよいよ戻ってきたなという印象でした。

文化を乱さない参加方法(去年と同じ)

 悪目立ちして出禁になるのがイヤなので、会期中のコミュニケーション内容に関してはほぼ顕微鏡の話題のみ議論する形で参加していました。
 ただ、マスク着用だと私だとわかる人が少ないので、HoloLens 2の首掛けスタイル+いつものキャリーをずっとガラガラ引いてる人を去年に引き続きやっていました。去年の様子を知ってる人から声をかけてもらえました。
 二日目はショルダーバッグに機材詰めてキャリーおいてきたのですが逆に肩から腰に来ると分かったので、三日目はキャリーに戻しました。
 機材全部持って行ってましたので、いついかなる時でもデモが出来るんですが、今回も前回同様、HoloLensの電源すら入れずに普通に過ごし、首のデバイスを気になって訊いてきた人にだけ簡単に説明して様子を見ていました。


成果

 今回は、主に民間企業で装置開発をしている人達とのお話をする機会が多かったです。また、遠隔運用の様子を公開している発表ポスターが1件ありましたので、そこでお話を伺わせてもらって現状の課題などを教わってきました。秋に行われた顕微鏡学会シンポジウムとは異なり、遠隔支援技術の活用についてのセッションなどは無かったため、「研究発表」として遠隔活用技術を前面に押し出している研究者はほとんどいませんでしたが、コロナ前にくらべれば活用への意識が増していると感じています。

 秋にお会いした会社の方々と再会する事ができ、そこでもしばらくお話させてもらいました。秋の時点で温めていた工場訪問が具体的に前進しはじめましたので(秋予定)、北海道の電子顕微鏡系エンジニアと道外の企業を結ぶ活動の基礎作りにも役立ったかなと思っています。

 また、コロナ前以来会えていなかった研究者の人たちともお会い出来ました。みなさんお元気そうで良かったです。

・若干期待と違ったこと
 会の中で今年もVR活用された展示はありませんでした。とても残念です。今年の夏はZEISS社のブースで現状のVR活用のお話を尋ねてみるという目的が大きかったので聴いてみたのですが、展示スタッフさんから聞き出せた内容は0でした。ブースの誰に訊けばいいのかもわからないまま終わってしまい、国内外の情報の差を感じました。。
 とっかかりさえあれば是非周知にお手伝いさせてもらいたいところではあるのですが、まだ難しいのかな。

オフ会場だけになったらコロナ前の不便が戻ってきた問題

 去年の参加記事ではオン参加者とオフ参加者の分断について記録しました。ポスターがオンライン視聴できなくなったことと、zoom越しに質問してくる人を会場では記憶できない事などが参加者体験に影響してくると思っていました。

 今回はオフライン会場しかありませんので、若手も学生も島根に集まるしかなくなりました。結果として現地参加者は前回より増えているようで、会場内外であいさつしあっている様子を多く見ることが出来ました(自分も挨拶してた)。
 その代償として、講演被り問題と席取り問題というハイブリッド以前にもあった問題を再び体験する事にもなりました。

・講演被り
 今回はセッションが再編されたという事で、今までのプログラムの組まれ方とは違う雰囲気に整理されていました。自分の専門はTEMその場観察と低次元物質なのでその関連テーマで受講して回っていたのですが、今年は同じ時刻に別の階で関連講演がされているという事が4つくらいありました。
 ホール間の移動にはエレベーター移動がほぼ必須でしたが、エレベーター前の渋滞がいつも起きていて移動に数分かかり、(講演者交代に設定されている時間)> (移動にかかる時間) となってしまいました。つまみ食い的に両方を見ることが現実的ではなくなりました。
 どちらか一方を観るしかできず、したがって挨拶しに行く機会も失われてしまいました(講演に関する質問をすることで仲良くなるため)。

・席取り問題
 現地会場のホールは10列-15列くらいの100人規模の部屋であることが多かったです。↓の図のような風景の中で受講する事になります。今回、参加者が多かったこともあってか、セッションの始めの方から会場に居ないと前方の席に座ることができず、ちいさなスクリーンを見てスライドを理解する必要がありました。しかし、上でも書いた通り、自分の関連領域が妙に同じ時間帯に固まっていて会場間を行ったり来たりしてた時には後ろの席に座るしかなかったりして、近眼と乱視の進んだ自分にはなかなかつらいものがありました。

くにびきメッセ フロアガイド (https://www.kunibikimesse.jp/facilitys/floorguide_u/) より引用

 ハイブリッド開催だった前回までは、同様の状況になってもオンライン配信を手持ちのPCやiPadに映しながら現地参加していたので席が後ろでも問題なく、なんなら移動時間も講演を聴けていたので講演間の間隔が短くても発表内容の前後が欠けることもなかったのですが、今回は配信がそもそもないため補完の方法を失った形になってしまいました。

 講演内容の録画禁止などは守ったうえで大会ルールの範囲内で対処出来ていた事が出来なくなったことにより、各講演から得られるインプットの質と量が下がりました。

 交流面での変化として、参加者が増えているので会場の密ポイントも増えています。今年の5類移行も影響してか、マスクをしてない参加者の方も増えており、帰札後に重要な道外ゲストに会う用事をすでに入れてた私は懇親会の参加をキャンセルしました。

 今回の体験を総合すると、コロナ禍前に感じていた不便がそっくりそのまま戻ってきたうえに、感染対策などの振る舞いについては各人の判断にゆだねられており、不安を感じる場合は一歩引かねばならないという状況でした。
 なお感染対策への意識について世代間でのギャップも観測してきました。


学会を取り巻く状況は複雑で、
①運営費はみんなからの参加費と出展企業からの出展料
②出展企業はブースに人が来てくれないとビジネスが進まないので困る
③なのでなるべく多くの人が現地に参加するようになんとなく圧がかかる
④配信の運用は運営費が上乗せでかかる上に、現地参加人数を減らす効果もある
⑤配信視聴の学生向け参加枠を格安で設置するとそれなりに参加者増は見込める
(⑥顕微鏡学会は他の学会より民間企業からの発表者が多い)
みたいなバランスのもとで運営されています。いろいろな施策の採用・廃止についても理解できる部分がありますので、一律にこうしたらというのは言及しないでおこうと思います。

 今回は市民講座の公開講座などが増えたとの事でした。来年はどのような運営スタイルに変わるのか今後も注目していきたいと思っています。私個人としては、無いなら無いで自分のできる事をしていくのでよいですが、ツールを持たない若手は今後もきついだろうなという印象です。

 今年は講演聴講で得られる部分が少ない事が分かったので、自分の見た目の視認しやすさを最大限上げて、久しぶりの研究者・企業展示者の人たちに挨拶をし続けるという過ごし方を選択し、次につながりそうな機会を得ました。

現地会場の忙しさアップで、SNS発信の届かなさもアップ

 秋のシンポジウムでSNS発信の重要性を紹介する講演が組み込まれていた事が記憶に新しいですが、今回、私のSNS発信は学会の他の参加者と相互作用しませんでした。
 今回は現地参加が忙しすぎた故に、私自身もほとんど顕微鏡学会参加者をツイッター上でチェックする時間が作れませんでした。おそらく他の方も同じ状況だったかと思います。発信はずっと切れないようにしていたものの、見ることが出来ていないので、誰かのツイートをきっかけに現地でお話する、みたいなことも起きませんでした。あとで顕微鏡学会のワード検索結果で見返したときに、動向をつぶやいている個人が私くらいしかいなかった事が分かりました。
 秋シンポジウムにくらべると参加者数も同時進行セッション数も多かったので、現地で私を見つける事も難しかったかもしれません。せめて、秋の時に知り合った先生方には挨拶しようと思っていましたが、私の方からも彼らを見つけることができませんでした。発信が即効的に機会に繋がる、という事はなかったですね。

他の領域のコミュニティ参加は充実していた

 出張の前後にいろいろなコミュニティイベントが重なっていたので今回はそちらも意識的に回ってみました。

・6/24 オープンソースカンファレンス北海道(#osc23do)

 北海道のIT系コミュニティが一堂に集まるイベントです。今回は数年ぶりに現地会場での開催がありました。オンラインセミナーパートと展示会パートが1週間の時間差で開催され、私は展示会の方にお邪魔してきました。

・6/25 Unityゆるもく勉強会 in 島根 #35 (#xrshimane)

 札幌→島根県内の移動日に、島根のXRコミュニティってあるんだろうか?と何気なくつぶやいてみたところ、@takesenit さんから #xrshimane のハッシュタグを教えて頂き、また、偶然にもその日の夕方にちょうどイベントをやっているところである事を知りました。早速主宰の @octi さんに連絡を取ってみて終わり際の雑談タイムに混ざらせていただきました。
 なお次回は7/29開催だそうです。


・6/29 #CMC_Meetup サッポロ Vol.5 -リブート!!

 2020年1月から3年半ぶりの札幌開催となった #CMC_meetup では、技術に限らずコミュニティ全般の話題として、コミュニティの新陳代謝に関わるトークをしていました。飛行機が思ったより遅延しなかったので、新千歳から札幌駅付近の会場に直行しました。

・7/1 Islay Summer (アイリッシュライブ)

 島根出張を早めに切り上げた理由はこちらのイベントでした。ライブの最後に、リスナー参加型の演奏企画が毎回あります。私は毎回伴奏パートをキコキコと弾いていて、6月30日はその練習をしていました。HoloLensで本番中のその動作をモーションデータとして記録していたりします。

(余談)IoT×XRな田中さんと、内田洋行にて活動紹介など

 出張中にリクエストがあり、東京からの訪問中に札幌の施設を見てみたいとの事だったので、ファクトリーに近いこの施設へ取り次いで、一緒に行きました。


まとめ

 顕微鏡学会に参加して昨年からの状況の変化をまとめました。今回はオフラインのみという事で、現地会場での活動にのみ注力せざるを得ない場面が多かったです。研究現場との距離が離れて5年以上経ち、装置的にアップデートが色々されており、私の当時の知識だけで理解しきれないものもそろそろ出てきています。実験現場を見学する機会をどうにか作り出したいなと思いつつ、秋もがんばってみようとおもいます。
 普段行かない地に全国から集まって、私もいろいろな機会を得られましたので、学会開催運営ありがとうございました。

おまけ

・今回は飛行機がネックで、直行便が無いゆえの自由度に悩まされる旅でした。逆に現地ではほとんどの期間雨が強かったので何もできなかったので、考えることは少なかったです。
 飛行機&宿で9万円弱、
 それぞれ空港へ行くための交通機関代5000円、
 おやつ、おみやげ1万円くらいです(飛行機が高い)。

・名刺

今回の出張に合わせてサンコーさんに発注をかけたものの、入稿が1日遅くて完成が間に合いませんでした。供養。

・今回のコロナ拡大予防対策
 5類移行後の今回が今までで一番緊張感のある行程になりました。自宅付近の停留所から高速バスで新千歳空港へ。小さなジェットで仙台空港へ行って、また小さなジェットで出雲空港に行きました(帰りも同じ)。バスで松江市内に入った後は、ホテルで出された朝食・夕食かコンビニで買ったパンを食べていました。
 懇親会は不参加、個別の飲み会も断って一人でいました。外食は帰りの仙台空港で食べたそばのみという感じでしたね。
 一般の観光客も非常に増えており、電車・バスともにぎゅうぎゅうでしたので、札幌に帰ってきてからもしばらく体調変化を注視していました。


(7/18 00:01 初稿 6487字 600 min )
 追記・改訂予定(読みにくい)