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最期に観たいアートは何ですか?

人生最期の食事は何が食べたいですか?
それしか食べられないとしたら、
何を選びますか?

よく話題として取り上げられるこのお話。
私が生涯最期に観たいアートは何かと問われたら…
運慶作 無著像と答えると思います。
その気持ちを今回は考察していきたいと思います。

運慶の作品の特徴はとにかく劇的な力強さと
言えるのではないでしょうか。
その特徴がよく表れているのが、東大寺 阿吽の
金剛力士像(仁王像)ですね。
構えたポーズと言い、眼力と言い、血管の浮き出た身体。
目の前に現れたら、とてつもない存在感に圧倒されます。

しかし無著像は、静かにそこに立っています。
非常に写実的で人間味があり、
ドラマティックな演出はありません。

静かで厳かな決意を秘めた存在感を放っていて、
無著像は人間の存在の重さを現わしていると
初めて観た時に感じました。
そして、目が離せなくなりました。
信念が宿っていると言う他ない。
多分私はその信念を感じ取って、動けなくなったのだと思います。

私たちが推しと言って憧れる存在というのは、
その人の信念を受け手が感じ取って、輝いて見えるのではないか。
信念に憧れて、呼応しているのではないかと思います。

人間の引き出しにあるものを厳選し、研ぎ澄ませたときに
芸術に信念という輝きが生まれるのだと思います。
日常にもきっと、そんな研ぎ澄まされた瞬間があることに
気が付かず私たちは生きています。

無著像を観た時に感じる、存在の重さ。
生み出した人間の信念と覚悟が、
人間への尊敬となって
何度観ても感動を生み出します。

絵具や写真、映画また文学、歌という素材を使って
私たちは信念を宿らせることができる。
あなたも私も、このような存在なんだよと教えてくれる無著像に、
これからも何度も会いに行くと思います。

追記:
無著像は同じく運慶作の世親像と一緒に
奈良 興福寺にあります。
毎年春と秋に特別展が興福寺で行われてます。
今年は無著像に会えなかった…
来年のウィッシュリストに”無著像に会いに行く”を
すでにリストアップしています。










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