「NKHは変わったか!原発問題」

 最近のNHKは原発問題について、核心を突く良質な番組を作っている。
3月の初めに放送されたETV特集「膨張と忘却  理の人が見た原子力政策」では、2018年に亡くなった国の原子力政策長年関わり続けてきた吉岡斉氏が残した数万点に及ぶ未公開の「吉岡文書」を紐解くことによって、日本の原子力政策の現状を赤裸々に明らかにした。科学技術史が専門の氏は1990年代から国の審議会の委員などを務めた。「熟議」や「利害を超えて議論を尽くすこと」を求め続けた吉岡氏はそこで何を見たのか。国の審議会では結果ありきの議論が進んだ。
 NHKでは、「吉岡文書」に加えて今回独自に入手した内部文書や関係者の証言などをもとに国の政策決定の舞台裏に迫る。
 高速実験炉「文殊」の運転には事故が頻発して停止していたが、廃止をせずいたずらに廃止を遅らせた結果、1兆円を超える税金が投入されて終了したのだ。誰も責任が問われずに。
この議論の際に吉岡は「文殊」の中止を主張した。しかし、結局いわゆる原子力村の策謀で、十数年毎年維持費を約百億円つぎ込みながら延命されたのだ。
 さらに福島原発の課題として、福島原発事故現場では、処理水が日量90トン出ている。そして、汚染水を処理した後に出るスラリー処理が問題になっていることを指摘していた。
 また、事故原発の廃炉の工程表では2051年が最終目標になっている。つまり、事故から40年で全て終えるということだ。この40年と云う数字はどこから出てきたかと言えば、アメリカのスリーマイル島原発事故の計画から引用しているという。そのアメリカの例に倣って、デブリの取り出しが事故から10年になっているのだ。しかし、スリーマイルと福島では事故の酷さが圧倒的に異なる。スリーマイルではメルトダウンしたが、原子炉は破壊されていなかった。しかし、福島では原子炉が炉心溶融に伴って穴が開いてしまい、溶融した核燃料がコンクリートと混ざって固まっているのだ。スリーマイルでは、原子炉を水で満たし、放射能被ばくを抑えながら作業で来たので、10年でデブリの取り出しが終了しているということだ。
 日本では、核燃料棒が融けて原子炉を突き破りコンクリートと混ざりあっていて、そのデブリ推定量が800トンになるという。さらに原子炉に穴が開いているのでスリーマイルのように水で満たすことができないのだ。それで、13年経った今、未だに1グラムのデブリも取り出せていないのだ。
 
 福島原発事故は人災だと言われている。結局は原発を取り巻く利権集団「原発ムラ」と言われている連中の影響力が今なお日本の原子力政策を牛耳っているのだろう。岸田首相が唐突に原発の再稼働を積極的に推進し、新型原子炉開発にも意欲を示していることに表れている。
 

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