「3年に亘ったコロナ対策の総括を(4)」

 コロナワクチンが結局、国内生産できなかった。それは何故?
 それは、日本の薬事政策に問題がある。製薬企業は新薬開発に1千億円以上の資金を投じる。各国の価格、市場規模などを元に投資計画を立てて製品を投入して、投資を回収する。しかし、日本では、薬価のルールが頻繁に変わる。特許期間中でも薬価を下げる、年間1000億円以上売れた医薬品は特例として50%価格を下げるという。2015年以降のルール改定は50回以上。これでは日本市場で薬価の予見をすることが困難で、またそのルール改定にあたっても透明性も問題だ。このことが企業のイノベーションを阻害する要因になっているという。
 新薬を承認するスピードも問題だ。審査では「海外データも必要」「価格の海外比較がない」との指摘がなされ、揚句が海外で承認後に日本が後追いする。度重なるルール変更と消極姿勢で世界の市場は日本を迂回することになる。
 これは、政府が診療報酬改定に当たっては、圧力団体である日本医師会におもねて医師の報酬をアップするために薬価を低く抑えることがまかり通っているからなのだ。つまり、政府は薬価を診療報酬改定の調整弁にしている。
 欧米では、必要な医薬品を素早く開発し、供給する体制づくりを安全保障の観点から重視しているのに比べると日本はどこを向いて施策を進めているのだろうと思う。

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