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INCOGNITO @高崎芸術劇場(20240310)

 上州の地に吹き起こした、ファンキー・グルーヴの風。

 インコグニート恒例の来日公演が、〈INCOGNITO "INTO YOU" Japan Tour 2024〉として開催。結成45周年というメモリアルと、4年ぶりとなる19thアルバム『イントゥ・ユー』を引っ提げた本ツアーは、3月5日から9日までの5日間のブルーノート東京公演に加え、3月10日に高崎(高崎芸術劇場スタジオシアター)、3月12日に大阪(梅田クラブクアトロ)を巡る精力的なものに。その高崎公演へと足を伸ばしてみた。

 曲構成は、3月7日に観賞したブルーノート東京公演(記事→「INCOGNITO @BLUE NOTE TOKYO」)をほぼ踏襲しており、詳細はそちらの記事に譲るとして、高崎公演ならではのトピックなどに触れていきたいと思う。

 高崎芸術劇場内のスタジオシアターはブルーノート東京同様に全席指定ではあるが、ホール公演ゆえ冒頭から多くのオーディエンスが立ち上がり、一気にフロアのヴォルテージが上昇。実質2列目が最前列だった(1列目には座席が設置されていなかった)ため、前から3列目という好ポジションから眺め、ブルーノート東京公演とはまた異なる景色に。当初は前2列は着席している観客も多かったが、終盤には立ち上がって、文字通りのオールスタンディング状態に。東京からは電車(高崎線/湘南新宿ライナー)で約2時間強と決して近しい場所ではないが、やはりホールにてスタンディングで体感するライヴは、また違った興奮と刺激をもらえること必至。足を運んだ甲斐があったと思わせるパフォーマンスで、胸を躍らす余韻が長らく続いたのは、言うまでもない。

 ツアーではアルバム『イントゥ・ユー』の楽曲を散りばめながら、定番曲や人気曲を配する構成なのだが、この公演では冒頭に「パリジェンヌ・ガール」をもってきた。アシッド・ジャズと代表格と称される以前、1981年のデビュー・アルバム『ジャズ・ファンク』にも未収録だった(1992年のリイシュー盤には収録)、インコグニートの嚆矢となる楽曲だ。45周年という節目も、この楽曲から全てがスタートした……そんなブルーイの想いが、高崎公演の冒頭に表われたのではないだろうか。

 ブルーノート東京公演(3月7日)では演奏しなかったが、本公演で披露した楽曲としては、前述の「パリジェンヌ・ガール」のほか、チェリー・Vがリード・ヴォーカルを務めた「シェイド・オブ・ブルー」と、トニー・モムレルがリード・ヴォーカルを執った「レイバー・オブ・ラヴ」の3曲。ステージの幕を切ったインストゥルメンタル「パリジェンヌ・ガール」以外の2曲は、テンションを抑えた落ち着きある“聴かせる”ミディアムだったが、「シェイド・オブ・ブルー」は(ブルーイの「コリブリ」誕生秘話……ブルーイが忙しく眠る時間もそうそうない時に、目を閉じていたら、耳元へ聴こえてきた空中でホバリングして花の蜜を吸うコリブリ(ミドリハチドリ)のさえずりの音にインスピレーションを受け、それが「コリブリ」のスキャットになった……という逸話を語ったMCを経て)「コリブリ」へ、「レイバー・オブ・ラヴ」はファンキー・ヴァイブスを発露させる「トーキング・ラウド」へと、ガラリと景色を変えるように、より加速度や盛り上がりを増加させるための助走的な役割として、効果的な位置に配されていた。

 チェリー・Vがリード・ヴォーカルを務めた「トーキング・ラウド」からは、熱度がさらに上昇。ナタリー・ダンカンのメイン歌唱による「ルーツ」、トニー・モムレルが歌う「アズ」を経て、再びチェリー・Vがリードを務める「オールウェイズ・ゼア」と展開。極上の音やグルーヴに身を任せて揺れるオーディエンスのパッションにも感化され、微笑みとエナジーが交差するバンドが一体となって、ファンキーなグルーヴを響かせていた。

 このツアーでは、チェリー・Vが「ドント・ユー・ウォーリー・アバウト・ア・シング」「イントゥ・ユー」「シェイド・オブ・ブルー」「トーキング・ラウド」「オールウェイズ・ゼア」で、ナタリー・ダンカンが「キープ・ミー・イン・ザ・ダーク」「コリブリ」「ルーツ」で、トニー・モムレルが「ホエン・ザ・サン・カムズ・ダウン」「レイバー・オブ・ラヴ」「アズ」でそれぞれリード・ヴォーカルを務め、序盤の「ナッシング・メイクス・ミー・フィール・ベター」は全員、「スティル・ア・フレンド・オブ・マイン」ではナタリー・ダンカンとトニー・モムレルが歌唱を担当。おおよそ4、5曲均等にリード・ヴォーカルを任され、ヴォーカルの偏りがないのも、ブルーイの配慮か。

 観賞した位置が異なるので単純な比較は出来ないが、本公演ではホーン・セクションの前にアクリル板が立てられていたので、開演序盤はホーンズ隊の音が若干くぐもった感じに聴こえた瞬間もあったが、その後は改善された模様。ダイレクトに音が伝わる位置での観賞が、よりライヴの醍醐味を体感出来るかけがえのない空間となるのは言うまでもない。

 ホール公演ならではか、序盤からオーディエンスが立ち上がって踊り始めたこともあり、盛り上がりはブルーノート東京公演以上。その姿を目にしたメンバーたちもテンションがより高まり、さらなるファンキーなグルーヴが巻き起こった感じがした。

 愛着ある日本の地で長きにわたり、ホープフルなメッセージとともにエネルギッシュなステージを繰り広げてきたインコグニート。来年も日本へ戻ってくると嬉しい宣言をして、大喝采の夜は幕を閉じた。

◇◇◇
<SET LIST>
00 INTRODUCTION
01 Parisienne Girl
02 Nothing Makes Me Feel Better (*I)
03 Don't You Worry 'bout a Thing(original by Stevie Wonder)
04 Keep Me In The Dark (*I)
05 When The Sun Comes Down
06 Into You (*I)
07 Still A Friend Of Mine
08 Shade of Blue
09 Colibri
10 bass & keyboard / Supersonic Lord Sumo(drums & percussions session)
11 1993 (*I)
12 Labour of Love
13 Talkin' Loud
14 Roots
15 As (original by Stevie Wonder)
16 Always There (original by Ronnie Laws)
17 OUTRO ~ One Love(BGM)

(*I):song from album "Into You"

<MEMBERS>
ジャン=ポール “ブルーイ” モーニック / Jean-Paul 'Bluey' Maunick(g)
チェリー・V / Cherri V(vo)
ナタリー・ダンカン / Natalie Duncan(vo)
トニー・モムレル / Tony Momrelle(vo)
フランシス・ヒルトン / Francis Hylton(b,Music Director)
チャーリー・アレン / Charlie Allen(g)
フランチェスコ・メンドリア / Francesco Mendolia(ds)
キッコ・アロッタ / Chicco Allotta(key,vo)
リッチー・スウィート / Richie Sweet(perc)
シド・ゴウルド / Sid Gauld(tp)
アリステア・ホワイト / Alistair White(tb)
アンディ・ロス / Andy Ross(sax.fl)

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