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長編小説【三寒死温】

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【note創作大賞2022/一次選考通過作】 死神から「死にゆく者の魂を癒やして欲しい」と頼まれた中年男が出会う、悲喜こもごもの人間模様。 【長編小説(中編連作)/文庫本換算:2… もっと読む
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記事一覧

長編小説【三寒死温】Vol.0 目次

死にゆく者の魂を癒やす。そんなことが、俺にできるのだろか・・・ 経験したことのない高熱に…

中村 十二
2年前
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長編小説【三寒死温】Vol.1

プロローグ 樹齢百年は優に超えているであろう黒松の一枚板が、黒檀色の鈍い光を放っている。…

中村 十二
2年前
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長編小説【三寒死温】Vol.2

第一話 人探しの得意な探偵 【第一章】気の利かない夢 縁側に続く障子戸を開けると、しっと…

中村 十二
2年前
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長編小説【三寒死温】Vol.3

第一話 人探しの得意な探偵 【第二章】暗転と終幕 一室だけ洋風に設えられた広い居間には、…

中村 十二
2年前
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長編小説【三寒死温】Vol.4

第一話 人探しの得意な探偵 【第三章】幻に恋する日々 「オミナエシ化粧品の小澤 菊枝です。…

中村 十二
2年前
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長編小説【三寒死温】Vol.5

第一話 人探しの得意な探偵 【第四章】命あっての物種 それが「再開」なのか「闇」なのかは…

中村 十二
2年前
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長編小説【三寒死温】Vol.6

第一話 人探しの得意な探偵 【第五章】春に降る長雨 祭りの最中の女衆のようなハードな雑用にどうにか身体が慣れてきた頃になって、仕事の合間を縫って私は残してきた娘たちに手紙を書いた。 自分自身が外に出て遊ぶような余裕はないけれど、少なくともこの街には活気が溢れている。川の西と東とでは雲泥の差がある。進駐軍が相手だということさえ目を瞑れば、こちらにはまっとうな仕事がある。私たちと似たような境遇の未亡人も数多くいるし、娘も自分と似たような境遇の友だちと仲良く暮らしている。 そ

長編小説【三寒死温】Vol.7

第一話 人探しの得意な探偵 【第六章】届いていた手紙 幼い娘を背負い、バチバチと肌を打つ…

中村 十二
2年前
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長編小説【三寒死温】Vol.8

第一話 人探しの得意な探偵 【第七章】憧れと戒め 一通り話を終えた私は、不覚にも、涙を流…

中村 十二
2年前
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長編小説【三寒死温】Vol.9

第二話 律儀な看護師の旦那 【第一章】用意していた台詞を飲み込む どんよりとした花曇りの…

中村 十二
2年前
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長編小説【三寒死温】Vol.10

第二話 律儀な看護師の旦那 【第二章】慈善事業を勘違いしている 現場に着くと、二人いるは…

中村 十二
2年前
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長編小説【三寒死温】Vol.11

第二話 律儀な看護師の旦那 【第三章】「少年A」と呟いていた 私とその青年は、食堂に整然…

中村 十二
2年前
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長編小説【三寒死温】Vol.12

第二話 律儀な看護師の旦那 【第四章】数え上げたらキリがない それは、私に孫ができて一年…

中村 十二
2年前
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長編小説【三寒死温】Vol.13

第二話 律儀な看護師の旦那 【第五章】溺れる者は藁をも掴む 小さなため息を吐きながら、私は紙コップに半分ほど残っていた白湯を飲んだ。味も素っ気もないが、喉の渇きは癒える。 「そうやってご自分のことを客観視できるだけでも、立派なものだと思います。それによく言うじゃないですか。自分たちの子として生まれてきて本当に幸せだったのかと不安になるけど、そう気遣ってくれる親の元に生まれてきたこと自体、子どもにとって幸せなことだって。」 あれ、ちょっと違いますかね、と言って、その青年は