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Barにいる、優しい獣達

Barと言う場所には不思議な距離感が存在しています。

僕には行きつけのBarが何軒かあって、そこでしか会わない人達がいます。彼らのことを友達と言っていいのかどうかはわかりません。なぜなら、連絡先も本名も、何の仕事をしているのかも何となくしかお互いに知らないから。

でも、会うと仕事や恋愛や夢や女性の話を、友人よりも深く話し込んだりします。時にはは優しい言葉を掛け合い、親身になって相談にのってもらったりなんてこともあるのです。

でも、どんなに盛り上がっても、じゃあ飲みに行きかますか!とか、連絡先教えてください、なんて事を言う人はいないんです。稀に、仕事などで誰かを紹介することになって、連絡先を交換することもありますが、無駄に連絡を取り合ったりはしません。

そこには暗黙の協定が存在しています。あまり踏み込みすぎず、近過ぎずの距離だからこそ、話せる事、成立している関係があって、誰もがそれを理解し、ルールを自然と守っているのです。

まるで森の中に住む野生の動物達のように、すれ違い、互いの存在には気づいているんだけど、テリトリーを犯さず見守る。そして、困った時には少しだけテリトリーを広げて助けて、また自分の場所に戻ってゆく。

今夜も「酒瓶の森」では優しい獣達が距離感を保って優しく酒を飲むのでしょう。素知らぬ顔でシェイカーを振る、森の神に見守られながら。




僕は37歳のサラリーマンです。こらからnoteで小説を投稿していこうと考えています。 小説のテーマは音楽やスポーツや恋愛など様々ですが、自分が育った東京の城南地区(主に東横線や田園都市線沿い) を舞台に、2000年代に青春を過ごした同世代の人達に向けたものを書いていくつもりです。