読書感想「小説版ドラえもん のび太と鉄人兵団」

文庫化を待っていたので発売されてとても嬉しいです。
単行本を読んだのがもう10年以上前なので細かいところは忘れていましたが、終盤に星野スミレが登場しオリジナルの展開があったのは覚えていたので懐かしく読みました。

物語の序盤はセリフなども原作そのままでまるでマンガや映画を見ているように楽しめました。解説で辻村先生が仰っているようにコマとコマの間の描写によって物語に奥行が出て、こんなに濃密に“小説”だったんだと新たな驚きがありました。

ザンダクロスで遊んでいたのび太達がアクシデントでビルを壊してしまいその破壊力に怯えるところ、その後三人で秘密を誓う影が伸びる場面や、リルルが登場し美少女な外見とは違い少し言動が不気味なところなど、日常が徐々に不気味な侵食をされていく様子がさすがホラー作家さんだと思いました。

再び鏡面世界に向かいロボット達との戦いが始まる頃から原作にはない描写が増え、いっそう物語の世界やのび太達の心情を理解することが出来、大人が読んでも満足できる作品だと強く感じました。

リルルを助けたしずかちゃんの家にロボットが襲ってくる場面は子供心に普段のび太達が遊んでいる風景が破壊される怖さを感じたのを覚えています。

スミレと共に登場した任紀がエスパー魔美の登場人物だというのは今回の辻村先生の解説で初めて知りました。この後書かれる辻村先生の「~月面探査記」のスピンオフでエスパー魔美の高畑が登場するのはこれに影響をうけているのかもと思いました。

文庫版のあとがきで瀬名先生の「小説版」と「NOVELS」に込めた意味を知ることが出来て良かったです。この作品はドラえもんの正史にはなれなかったけどそれでいいという言葉も深い考えを感じます。

ドラえもん達と懐かしい冒険が出来てとても楽しかったです。ありがとうございました。

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