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美味しくて笑ってしまう瞬間

 推しと出会ったドラマ『ゴハンいこうよ』のタイトルを言おうとするたび毎回『オイシーのが好き!』(1989/TBS)が出てきてしまい、頭の中から石田純一を追い出す作業に追われるじゅんぷうです。
『オイシーのが好き!』について熱く語るnoteはまたあらためて。

 人って本当に美味しくて幸せを感じたとき、ただ笑ってしまうんだなあと思ったことが人生で何度かあります。

 社畜時代に出張で行った広島で、同行したスタッフ数人とお寿司屋さんで夜ごはんを食べていたとき。お寿司もなかなかのレベルだったのですが、こちらの「あら汁」が感動もので。みんな、口から出てくる音声が「フッ…」「へへ…」「ヘッヘッヘ…!」しかなくなってしまったんです。編集者たちから言語を奪うほどのあら汁。
 そしてお会計のとき、おもむろに奥から出てきた大将が、してやったり感たっぷりに「どうでした、あら汁?」と。人生で「どうでした、あら汁」ってセリフを聞いたのはこのときだけですよね。

 乗り鉄夫との平成よくばり鉄道旅noteにも書いた、真鍋島のちぬ(黒鯛)、篠島のカワハギやじゃこなどもわたしをただ微笑ませてくれましたが、どれもこれも、その場所の持つパワーみたいなものも一緒に頂戴してると思うんです。

 それとはちょっと違うけど忘れられないのが、やはり20年ほど前。

 結婚3年目ぐらいだったと思いますが、義母が、プラハのカレル橋に一緒に行ってほしい、あとはどこでも好きなところに行っていいからと、じゅんぷうを誘ってきたのです。それでチェコ、ハンガリー、オーストリア、ドイツの中欧4ヵ国を回るツアーに義母とふたりで旅立ちました。ツアーといってもわたしたち以外には年配のご夫婦が一組だけで、ツアーっぽさはほぼありません。

 ちょうど今頃のクリスマスシーズンで、行く先々でクリスマスマーケットが開かれていました。義母はふだんお酒を飲みませんが、クリスマスマーケットでは一緒にホットワインを楽しんでくれました。私もホットワインはもちろん、食事のときにせっかくなのでビールやワインを飲んでいましたが、さすがにふだんのようには飲めません笑

クリスマスマーケットのホットワインはほとんどがデポジット式の陶器のカップで、わたしはお土産に全部持ち帰りましたが、のちにうっかり者の夫によってすべて粉砕されました。

 旅行の日程は10日間。もしこれが実母と10日だったら相当ケンカしたりイライラしたと思いますが、義母とはお互い干渉することなくつかず離れずの10日間。4ヵ国目のドイツで全行程を終えて、最後の夜。夕食も済ませたし、明朝出発なので荷物を整理して日本に帰る準備をしないとね…。

 パッキングが大体完了したところで、寝支度を始めている義母にわたしは言いました。

「1杯だけ、飲んできていいですか?」

 義母に不満はまったくありませんが、そうですお酒が足りなかったんです。義母は快く送り出してくれました。といっても時間も時間なので街には出ず、行き先はホテルのバーです。シックな店内に恐る恐る入り、カウンターで「Sekt」と告げます。

シャンパンと同じ製法で作られたドイツのスパークリングワイン、ゼクト

 目の前に出されたグラスをそっと口に運びます。
 しゅわしゅわが喉を通っていくと、
「フフフフっっ」
 ひとりで笑っていました。
 華やかで美味しかったのももちろんですが、これは解放感? 打ち上げ的な?
 バーテンダーの女性も微笑んでいました。
 ベルリンの夜に乾杯。
 
 結局1杯ではおさまらなかった、というお話でした。

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