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うまくいかない恋の醍醐味。

40年来の友達がいる。
彼女とは、うーんと若い頃から、毎日のように一緒にいた。一緒にお茶飲んで、一緒に働いて、一緒にテレビを見て、一緒に泣いた。もちろん、沢山、笑った。

さっき、懐かしい曲について、彼女とLineで話をした。
彼女には、ずっと会っていない。コロナだからと言うのではない。彼女には、10年近く会っていない。でも、昔のままだ。心の距離が何も変わらない。

話は、大沢誉志幸さんの曲について。
大ヒットした曲「そして僕は途方にくれる」の凄さについて語り、そして、私がもう一曲、大好きな曲があると言うと、彼女もバラードで好きな曲があると言った。でも、ふたりとも、タイトルが思いだせない。
もう、この時点で私には、分かっていた。

多分、ふたりとも同じ曲が好きなんだろうと。

「あのね、夜中に自分の住んでる町を彼女に案内するの。で、見えないけど、海を見せてあげるの」

はい、当たり。

こういう詞でしょ?私はLineに一番の歌詞を書いて彼女に送った。

「すこしだけ照れて笑った微笑みを頼りにして
初めて君を送った街角
ここからは海が見えると 暗いから今は無理だと
見えない海を見せてくれたね」

それだー‼️

と、速攻で返事が来た。

案内するのは、ボクじゃなくて、キミのほうだったけど。

「私と同じ。私も大好きだった。擦り切れるくらいレコード聴いたよ」

そう、この曲はレコードで持っていた。
1988年。CDもレコードも存在していた時期。

「『君の住む街角』というタイトルだったよ」

と、ネットで調べた彼女から速攻で返事がきた。

そうだ、君の住む街角。

作詞は、銀色夏生さん。

私が尊敬してやまない大好きな作詞家さんだ。

「すごいね、なんでわかったの?」

と、彼女からのLine。

「あなたの好きな曲と男のタイプは、大体わかる」

と、返事したら、

「私もあなたの恋愛のパターンは、わかる」

と、返事が来た。

笑った。

「分相応という文字が私の辞書には無くて、突っ走ってばかりだよ」

と、返したら、「私も」と返事が来た。

そうだった。
私が失恋する度に彼女に聞いてもらっていた。どんな言葉をもらったのか、全然覚えていない。しかし、その恋とか彼氏に関しての慰めでは無かったように思う。
彼女はいつでも、私の選択肢を肯定してくれた。悩む私も、情けない私も、全部、私らしくていいと思う、、、みたいなことを、いつも言ってくれた。

彼女の前では、情けない私のままでも、全然、気にならない。むしろ、自慢しなよって言われてるような気になる。

ありがたくて、泣きそうだ。

きっと、「痛い」と思う心の場所が一緒なんだ。
「触らないで」と思う場所が同じなんだ。
だから、お互いに距離の取り方を絶妙に心得てきたし、長い間、会わなくても懐かしい自分に会えたみたいに、すんなり再会できちゃうんだ。

「君の住む街角」の歌詞は、内気な男性が主役だ。
好きなんだけど、なかなか打ち明けられない。
でも、その女性のどんなことにも応えてあげたいと夢みている。

そういうのが、理想。

「君をさらって 君の望んだ どんな場所へも
連れてゆきたい
君は心にだれかがいるの?
繰り返す波の音 address in my life
抱きしめたくなると 遠くを見たよ」

情熱を隠し持っているけど、どう手渡せばいいのか分からないと悩む少年のような恋心を歌っている。

ここだよね。

私と彼女が、この曲を好きな理由は、ここだと思う。

たやすく成就しちゃう恋なんて、ニセモノのような気がしちゃうんだ。ちょっとダメかも。って半分思うような恋じゃないと、恋じゃない気がするのだ。

直球を投げたくないし、直球は受け止めたくない派。

ふたりとも、こんな感じで生きている。
損してるなって思った時期もあるけど、裏街道には、裏街道のお楽しみもある。

コロナが落ち着いたら、彼女に会いたいと思う。
10数年ぶりに会っても、きっと「うまくいかない恋の醍醐味」について、ずっとずっと語り合う気がする。

もう、全然成長しないよねぇーって言いながら。


※歌詞の一部が間違っていました。
address in my life が正解なのに、
address in my heart と書いていました。
銀色さん、大沢さん、大変失礼いたしました。
30年以上、間違えて覚えていたようです。
本当にごめんなさい。

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