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肥後の走り屋たち ACT.3 蛍食堂

 あらすじ


 大竹のフォレスターから遅れて、虎美のGTOがスタートした。
 差を縮めるために覚醒技の技を使用して距離を縮めていく。
 前のクルマに近づくと、<片鎌槍>を使って追い抜き、相手がスピンしたこともあって勝利を手にした。

 大竹が去った後、かなさんと会話をする。

「指示していただき、だんだんです。お陰で勝てました」

 うちは彼女にお礼を言う。

「中々の走りだったぜ、まだノロマだけど」

「かなさんに指示されたとはいえ、勝ってしまうとはすごいわ、虎美」

「いや、それほどでもなか」

 その時、かなさんの腹の虫が鳴る。

「お腹空いたなあ」

「知っている店ありますよ」

「どこなの?」

 
 それをかなさんに教える。

「蛍食堂という所です」

「そこに連れていってくれよ」

 うちと飯田ちゃんはGTO、かなさんはAE101に乗り込んで、出発していく。

 2台は豊後街道57号線にある、蛍食堂に到着した。
 ここにはよく食事に来る。

「着きましたよ」

「どんな店だ? 不味かったら承知しないぜ、ノロマ」

 店に入ると、年配の女性と少女、少年がいた。

 少女は小学生並みに小さな身長であり、髪型は長い茶髪をポニーテールに纏めている。
 眼は垂れ目で、瞳の色は緑だ。
 上半身の服装は、緑のパーカージャケットに下には白のTシャツを着ている。
 下半身は灰色のホットパンツに、白いニーソックスを履いている。

「ひさちゃん、こんばんは」

「こんばんは、虎ちゃん」

 
 ひさちゃんという彼女のフルネーム森本ひさ子という。
 飯田ちゃんより付き合いは長く、それは幼い頃からだ。

 自動車免許を持っているのだが、筆記試験と実技試験に落ちつづけ、昨日ようやく手に入れた。

「森本さん、こんばんは」

「こんばんは、飯田さん。見たこつのなかな人がおるばってん……」

「こん人は庄林かなさんちゅう人ばい。とっても速かな走り屋ばい」

 ひさちゃんは初対面のかなさんの顔を見る。

「初めまして、森本ひさ子と申します。よろしくお願い……うわああああああ」

 
 近づこうとすると、転倒してしまう。
 かなさんの胸にぶつかった。

「うわッ!」

 衝撃で、かなさんは腰を床に降ろしてしまう。

「すんません、わしゃ運が悪かな者で」

(標準語訳:すみません、わしは運が悪い者で)

「ったく、気を付けてよ……」

 初対面の人に対してまた毒を吐くとは……。
 やれやれ。
 ひさちゃんの運の悪さはギネス級と言われているほどだ。

「すんません、すんません。わしの運が悪かもんで」

 ひさちゃんはかなさんに対して何度も土下座をする。

「分かった、分かったから、もういいから」

 1つの事故で場の空気が悪くなりそうな時に、年配の女性が口を開く。
 

「いらっしゃいませ。あら虎美ちゃん、飯田さん、見知らぬお客さんを連れてきたとね」

 その人はひさちゃんの祖母・トメさんで、蛍食堂の店長を務めている。
 年齢は60歳だ。
 ちなみにひさちゃんの両親は年に数回しか会えないほど忙しく、彼らに代わって育ててきた。
 

「庄林かなさんと言います」

「初めましてかな。当店のお勧めは?」

「赤牛牛丼がお勧めばい」

「じゃあ、それを注文するよ」

「かしこまり」

 7分後、注文した料理が1人の少年によって運ばれる。

「お待ちどさま」

 この人はひさちゃんの兄・力也さんだ。
 年齢は18歳、妹を大切にする優しいお兄さんだ。

「お待たせしました。赤牛牛丼です」

「いただきます」

 ご飯を牛肉に挟んで、口に入れる。

「美味しい! さすが熊本の郷土料理だ」

 トメさんは何か訪ねてくる。

「あなたはどこから来たと?」

 うちもかなさんのことを知らない。

「鹿児島から来たよ。そこで大学生をやっている。夏休みだけど」

「そうたい。お隣から来たとね」

 かなさんは熊本県民ではなかった。

「うちもいただきます。赤牛牛丼をお願いします」

「私も赤牛牛丼で」

 うちらも注文する。
 14分後、その料理が来る。

 それを食べながら、会話をする。

「虎ちゃんとかなさんはどうやって出会ったと……」

「それは……」

 かなさんと出会った経緯について、ひさちゃんに話す。

「へぇ、かなさんってすごか走り屋ばい」

 
「そりゃ速かよ、運転のアドバイスも上手かったし」

「それで煽ってきた輩を倒したのよ」

 突如、かなさんがひさちゃんのある部分を見る。

「ヒサコン、あんた覚醒技超人か?」

「て、覚醒技超人!?」

 確かにうちの目にもひさちゃんの身体から出るオーラが見える。
 色は赤と黄色だ。

 かなさんは彼女に覚醒技について話した。

「隕石の影響でこんオーラを手に入れたとか……」

「とこで、免許は持っているのか?」

「昨日取りました」

「クルマは持っているのか?」

「持っとらんです」

「買う予定は?」

「あります」

「そうか。クルマはスポーツタイプのクルマか?」

「そうですばい。ホットハッチのクルマを買います」

「ホットハッチといえば、峠に向いているからな。中々の走り屋になるぜ」

 ひさちゃんは果たしてどんなホットハッチを買うのだろうか?
 楽しみだ。

 かなさんはうちらに何か訪ねてくる。

「ノロマのトラミン、べっぴんさんのサトリンに、運の悪いヒサコン、自分の弟子にならないか?」

 弟子入りを誘ってきた。

「断る理由はありません」

 
「私も」

「わしも」

 
 かなさんのような走り屋の弟子になれば、速くなれるかもしれない。

「けど、自分はそんなに甘くないぜ。本当にいいのか?」

「覚悟は出来とります」

「じゃあ決まり、ごちそうさま。今度会ったらビシビシ鍛えてやるからな」

 こうしてうちら3人はかなさんの弟子となった。

 その出来事から8ヶ月の歳月が過ぎ、日時は2015年4月19日午後11時となる。
 闇に包まれた箱石峠にて、2台の光が走る。

 前がエアロパーツを身に付けた緑のV35型スカイライン、後ろが黒のGTOが走っていた。

 後者の運転席には、青髪ロングで青い瞳の少女が運転している。
 それはうちだ。

 加藤虎美(Z16A)

 VS

 名称不明(V35)

 コース:箱石峠

 うちはV35の横に並び、水色のオーラを纏う!

「肥後虎ノ矛流<クリスタル・ブレイク>!」

 横のクルマをガードレールに押さえつけながら、GTOは走っていく!

「うわあああああああああ!!」

 クルマを押さえつけられたV35のドライバーは悲鳴を上げる!
 相手は失速し、GTOは前に出た。

 勝利:加藤虎美

 バトルを負えると、2台のドライバーがそれぞれのクルマが降りてくる。
 V35乗りの男性と会話する。

「参ったよ……押さえつけられる走りをしてくるとは」

「こん走りば……特別な力によるもんです」

 
 勝ったうちの所に飯田ちゃんとひさちゃんが来る。

「虎美、また勝ったのね」

「虎ちゃん、やるばい!」

 2人はうちの勝利を祝う。

 
 かなさんの弟子になったうちらは箱石峠のバトルで順調に勝利を重ねていた。

 仮免許だった飯田ちゃんも本免許を取り、ひさちゃんもクルマを購入し、どちらも走り屋デビューを果たした。

「けど、クルマを押さえつけながら走ったから傷ついちゃったよ。弁償はしてほしいな」

「ちょ、虎美!」

「それはいかんたい!」

 <クリスタル・ブレイク>は相手のクルマにダメージを与える技だ。
 うちは勝ちたいあまり、その技を使ってしまった。
 こんな展開になるとは、やれやれ。

 
 そんなことは置いといて、うちの物語はここから始まるのだった。

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