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鉄のカーテンの内側から 6


6、久々に再開、、、、日本の芸能界の事などをダラダラと。

「鉄のカーテンの内側からシリーズ」、2022年2月にロシアの特別軍事作戦が始まり、西側諸国からの経済制裁が強烈に行われているロシア。そんな中、日本での偏向報道の酷さに呆れて、現実のロシアやロシア人をきちんと知らせたいと感じて始めたこの「鉄のカーテンの内側からシリーズ」。まずは100本書こうと思いつつも、なんだかんだで2022年8月以来止まっていました。政治や紛争のことだけでなく、その他のロシアのことなども交えながら、諸々のテーマについて再び面白く鋭く書き始めたいと思います。

私がロシアでどんな生活を送ってるかとかは、日々更新しているXこと旧Twitterをご覧いただくとしまして、noteではもう少し深く詳しく解説しながら書いていきたいと思っています。まあ、そんなわけですが、本日は取り止めもなくダラダラと日本の芸能界のことなどを、、、。

昨年の夏に役者として撮影に参加したロシア映画 Олег Асадулин 監督「СТЕПНЫЕ БОГИ」。扉の白黒写真はその1シーンです。原作はロシアの著名な作家であるАндрей Геласимовさん。邦題は直訳すると「草原の神々」となりますが、ロシア人の少年オスタップくんと共に主演した私の感覚からだと、邦題は「草原の神様」という優しい感じのイメージでお願いしたいなと感じています。そもそもその前に映画祭以外でロシア映画が日本で上映されるかどうかという懸念もありますが、、、。

丁度、去年の今頃、この作品の私以外の日本人役の俳優さんをどうするかについて、監督やキャステイングディレクターから相談されました。キャステイングのスパンが日本よりもロシアの方がクランクインに近いので、ロシアの作品でお願いしようと思ったら、良い俳優さんはほぼほぼ日本でスケジュールが埋まっています。そこをなんとかお願いできないかと頼む訳ですが、お願いすると言っても無条件で役が決まってるわけではなく、必ずオーデイションを受けて頂かなくてはならず、「最初はまずはオーデイションなのですが、、」と言うと、一旦そこでマネージャーさんとの間に「えっ、、」という微妙な空気が流れます。その他条件面でも日本とロシアの諸々の感覚の違いなどがあり、俳優さんは超乗り気でも「まずはオーデイションなんです、、、」と言った時点から所属事務所はかなり色々言ってくるようになります。それでもハリウッドのようにそれに見合う高いギャラがあれば良いですが、ロシアはそこまでギャラが高くありません。それと、ロシアの軍事作戦が始まってからは、日本の広告業界もロシアに対して逆風が吹き荒れて「ロシア案件NG」という事務所さんもあります。特に一般の方がよく知るようなCMに出演している俳優さんやタレントさんを抱える事務所では、「基本的にロシア案件NG」となってる所が多々ありました。どこがどうとはもちろん控えますが、想像を上回る「ロシア案件NG」状況の日本です。俳優さんはロシアであろうがどこであろうが、作品に興味を持ってくれて役そのものは演じたい訳なのですが、日本の芸能界で大きなお金を稼いで生きていこうと考えれば諸々の広告収入は無視出来ず、それを得ようとすれば、大手広告代理店の支配する世界でその暗黙の了解を守った上で生きていかなければなりません。そのための芸能プロダクションであり、芸能界での諸々のお行儀の良い人間関係なのです。
私も日本の芸能界の中で生きてきましたから、これは身に染みるほどに良く理解できます。日本の自分の芸能界での立場を、ロシアの作品に1本出て一気に覆して世界的に活躍していけるか、、、、、と言えば現実的にそんな事はありません。ですから日本へ出演をお願いする時に「無理しないでくださいね」と必ず言うようにしています。

私も2010年にロシアに来るまで、2000年代は日本で仕事が強烈に忙しく、役者や占いを活かしたバラエテイ番組でのタレント活動、それに伴う占いの鑑定、雑誌や媒体への原稿など、とにかく24時間戦闘体制のような状況でした。当時、私が考えていた事は、役者の仕事にしても、まずは占いという得意技を使って日本の芸能界の中で自分の存在価値を高めていく、という事でした。例えるならば、グラビアアイドルにおいての水着が、私にとっては占いだった訳です。幸いにそういう芸能界での売れ方やアピールの仕方、、、という日本の芸能界独特の考え方をサポートしてくれる周囲の状況もあったので私はラッキーだったと言えますし、収入的にも広告代理店や日本の芸能界の恩恵を大いに受けていたとも言えます。そのおかげで監督の仕事にも触れることが出来ました。今はロシアで役者と監督しかしていないので、芸術家と呼ばれる落ち着いた日々です。要するに役者として内面的に磨いて表現する力を高める事のみが、仕事が増えるかどうか、の世界です。役者としての生き方がそのまま役者の仕事につながる、という極めてシンプルな世界です。役者、、、ですから本来はそうでなければならない筈です。しかし、日本の芸能界はそう単純ではありません。この話は、芸能界のないロシアの業界、ということで以前に解説させていただいてるので、そちらを読んでみてください。
ですから「日本の芸能界が役者にとってどれだけ特殊な構造か」という事もよく把握出来ていますし、逆説的ですが「世界の映画界や俳優業界にはありえない日本の芸能界という特殊構造の良さ」も私はよくわかっています。

ロシアキャスティングの際は、そういう事を踏まえた上で日本の芸能事務所さんやマネージャーさんといつも会話しています。

鉄のカーテンの内側のロシアの映画業界で働き始めた事で、日本の芸能界の事がより明確に詳しく見えるようになりました。それは悪いことばかりでなく、日本の芸能界にしかない良さにも気付きました。

ロシアの映画やテレビドラマのレベルはかなり高く、特に映像レベルはハリウッドやヨーロッパとも違う独特の素晴らしい感性で創られています。

結局のところ何を伝えたかったかと言うと、、、、、、、日本の役者の皆さんには是非とも役者人生の中で一度くらいはロシア作品にも触れて頂き、そして面白いなとか思ったら、私に是非とも声をかけてくれ、、、、という母国日本の芸能界から「ロシア案件NG」とか言われて、若干寂しく感じている日本人俳優「木下順介」の一人語りでした、、、、。




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