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グレン・グールドで逍遙

部屋を出て歩く時、撮る時、あるいは書くときに耳にするのはアンビエント音楽かドビュッシーかバッハだ。気持ちを整えようとするときに聞くのはバッハで、中上健次は代表作の「枯木灘」を『ブランデンブルク協奏曲』を聴きながら書いたという逸話に影響されて、聞き始めた。さらには「バッハを聴くにはグレンでしょう」というY氏の言葉もあって、グレン・グールドというピアニストが奏でる『ゴルトベルク変奏曲』を聞くようになった。

独自の解釈でバッハを奏でる彼のスタイルはクラシックの世界のみならず、ポップスやジャズ、ロックなどのアーティストに多大なる影響を与えている。『ゴルトベルク変奏曲』はその象徴ともいうべき曲で、クラシックの人っぽくない背中を曲げたルーズな姿勢で鼻歌を歌いながら演奏するという異端児ぶりも気に入った。確か、坂本龍一もそんなグレンの弾き方を真似たという発言もあった。

ただ、僕はピアニストではないので、彼の弾くバッハがどれだけ革新的なのかは正直なところ、正確にはわからない。「だって、グレンのバッハはヘロヘロやん?」とY氏が言うので、エレキギターの早弾きのように滑らかに演奏しているんだと解釈していて、実際そのように聞き、そして楽しんでいる。


わからないので、何度も聞いていて、そのうちグレンのバッハの素晴らしさをより深く理解できるようになると思って聞いていて(そういう聞き方は僕の鑑賞法によくあること)、それを習慣化して空を眺め、街を見つめ、対象物を見つけたらグレンの奏でる音色にフォーカスするうちに、見ているものが違う表情を見せ始める。

それらを撮影して、iPhoneに収め続けている。気持ちが揺れる時に、その場を離れる時には気持ちを切り替えるように静かにゴルトベルク変奏曲に耳を傾ける。何か書き始めようというときに、心にリズムを持たせる時も気持ちを支えてくれる。いまも、そんな感じ。

グレン・グールドと『ゴルトベルク変奏曲』についてはまた。晴れてきましたよ。


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