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ペライチ小説~メガネを掛けたおじさん~

今SNS上で話題になっている写真がある。
それは心霊写真だ。
どんな具合かというとカップルが遊園地で楽しんでいる姿をスマホで自撮りをしたら、カップルの後ろにうっすら人が写ってしまっていた。
写っていたのはメガネを掛けたおじさん。
年の頃は50歳を少し超えたぐらい。くたびれたスーツを着ている。
特徴としては「冴えない」という言葉がぴったり当てはまる見た目をしている。
その表情は苦しそうで何かを伝えようとしている様にも見える。
 
ここまでよくある心霊写真だが、なぜこの心霊写真が話題になったのかというと、このメガネを掛けたおじさんが色んなカップルの自撮り写真に写っていたからだった。
 
ラブラブのカップルが同棲している自宅でパシャリと撮った写真にもメガネを掛けたおじさんが写っていた。旅行で牧場を訪れたカップルがパシャリと撮った写真にも牛の隣にメガネを掛けたおじさんは写っていた。彼女の誕生日の記念にお洒落な創作料理屋でパシャリと撮ったカップルの写真にもメガネを掛けたおじさんは写っていた。
 
このメガネを掛けたおじさんは誰なんだという素朴な疑問と共に、なんでこんなに沢山の写真に写るのかという答えの分からない疑問も合わせ技となり、SNSを通じて瞬く間に世間へと広がっていっていた。
 
何人ものその道の専門家が写真の分析に挑んだが、メガネを掛けたおじさんの正体も何枚もの写真に写る理由も真相を解明するまでには至らなかった。
 
そして時は流れ、カップルの撮った写真にメガネを掛けたおじさんが写るようになって3年が経った。
もはやカップルで写真を撮ると、おじさんも写ることが当たり前となった社会で人々は暮らしていた。人間は慣れる生き物ということを改めて実感させられる状況になった頃、ようやくこの心霊写真の手掛かりを掴むことができた。
 
まずメガネを掛けたおじさんは別れが近いカップルの写真には写らないということが分かった。その理由は分からない。
要はラブラブカップルの写真にしか写らないということ。
つまりは別れの近いカップルは事前に別れを感じ取ることができるようになった。
別れを回避すべく、関係改善を目指し、話し合うカップルも現れた。
別れを回避すべく対策を教えてくれるラブラブ関係改善業者も現れた。
別れるカップルの数は減り、交際が始まるとそのままゴールインするカップルが増えた。
別れを回避することができて、メガネを掛けたおじさんに感謝するカップルも現れた。
メガネを掛けたおじさんを祀った神社もできた。
メガネを掛けたおじさんは成仏し写真に写らなくなった。
 
 
 

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