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立石昼飲みチャレンジ

免許の更新を口実に休みを取り、兼ねてから気になっていた立石での昼飲みを敢行した。僕の狙っている栄寿司と宇ち多"はどちらも立石を代表する大人気店で、土日に行けば行列は必至。食べたい料理も食べられなさそうだったので、できれば平日の昼間にこっそり行くのがいいと思っていた。しかもこのご時世である。なるべく密を避けて楽しみたい。四半期末でヒマではないのだが、そろそろ更新期限が来てしまういまこのタイミングしかないと思った。

京成立石駅に着いたのは午後2時前。ここに至るまでが結構長かった。本当は栄寿司の開店する12時には到着してはやめに並ぼうと思っていたのに、免許の更新で想像以上に時間を取られたのだ。免許センターに着いたのは朝9時前だったが、すでに建物の外まで長蛇の列ができている。朝のんびり寝ずにさっさと来ればよかったとこの時点で後悔した。写真撮影を終えたのが10時ちょっと過ぎ、その後は初回更新者講習を2時間受ける。マスクを着けたおじさんが喋っているがモゴモゴしていて半分ぐらい聞き取れない。これじゃ講習にならないなあと思っていると左前のおじさんが居眠りをしている。初回更新者講習は違反者講習をかねて開催されているから、彼はなにかをやらかして減点されたのだろう。話も聞かずに船漕いで大丈夫なのかと思ってしまった。そもそも初回講習者の若者が大半なので、その中に違反者の大人が混ざっているのはそれなりに目立つ。やらかして減点されたことがバレバレなので結構恥ずかしい。自分は絶対に安全運転をするぞと密かに心のなかで誓った。

講習が終わるとすぐにあたらしい免許を受け取って京成立石駅に向かった。けど、途中で焦って快速に乗ってしまい、目的地を通り過ぎてしまった。京成は乗り慣れない。結局それで15分ぐらいロスして、なんとか駅にたどり着いたのが午後2時前。とっくにお昼の時間は過ぎている。朝からなにも食べていない。おなかの準備も十分すぎるぐらい整った。意気揚々とお目当ての栄寿司に向かうと、店の外に4人ほど並んでいる。アーケードの斜向かいにはここ以上に長蛇の列をなした店がある。ずいぶん混んでるなあと思って見ていたが、あとになってこれが次に行く予定の宇ち多"であると気付いた。蒸し暑い空気に包まれながら乗り換えのミスがなければ早く入れたのに…と悔やんだけど、このお店は立ち食いなので回転も早い。20分も待たずに店の中に通された。

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立ち食い寿司のスタイルは初めてだ。次に行く宇ち多"が酔っぱらい入店禁止なので、ここはお茶を飲むことにする。そして隣のおじさんの見よう見まねでとりあえずいわしを頼んだ。脂が乗っていておいしい。これで120円のクオリティは安いと思った。そのあとは金目鯛、鯛の昆布締め、しゃこ、しめ鯖、いか、中トロ、うに…などなど。宇ち多"のためにおなかのスペースを空けておこうと思ったのに、調子に乗ってたくさん頼んでしまった。まあこんなものかなと思うネタもある中で、しめ鯖はとても美味しくて気に入った。酸っぱいのが嫌いでふだんはあまり頼まないのだけど、ここのしめ鯖はほんのり酢が香る程度の上品な味わいで食べやすい。次来たらもういっかいこれを頼みたいと思った。

ちなみにお会計は3160円。相場的にはどうなのだろう?築地で食べたお寿司セットが2000円弱でたいして美味しくなかったことを考えると、個人的にはなかなかの満足度だと思う。京成立石まで足を伸ばす必要があるのが若干のネックだが、ヘタな寿司屋に高いお金を出すぐらいなら僕は迷わず栄寿司を選ぶ。

お次は向かいにある宇ち多"だ。写真は出口なので人がいないけど、反対側の入口にはつねに10人ぐらい並んでいた。この店は注文の仕方が独特なことで有名だ。店内のメニューには「もつ焼き」としか書いていないが、じっさいは「シロ」「アブラ」「カシラ」「タン生」など10種類以上の部位が食べられる。お酒だと「焼酎」と記載のあるメニューは「梅割り」と「ぶどう割り」が選べる。しかも味付けも「タレ」「味噌」「素焼き」などあるほか、焼き加減も「普通」「よく焼き」「若焼き」とバリエーション豊富。その中から好みの組み合わせで、たとえば「シロタレよく焼き」といった形でオーダーするのである。だったら最初から書いておけよと思うが、頼み方(というか呪文)を頭に叩き込んでから来るのがこの店のルールらしい。いまでこそネットで下調べができるから良いものの、そうでない時代には完全に初見殺しのシステムだ。僕がこの店を知ったのはラジオ番組「ハライチのターン」なのだけど、「ちゃんと頼まないとキャップを被ったスキンヘッドの店員に睨まれる」と聞いていたので、びくびくしながら行列の中スマホで店のルールを暗記していた。

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列の最前列に来たので店内を覗き込んでみると例の店員さん(3代目マスターらしい)があっちへこっちへ動き回りながらオーダーをさばいている。なるほど、話に聞いたまんまだ。ラッパーの5lackみたいな風貌をしているなあと思って眺めていると、前に並んでいたおじさんに「マスク着けてよ!」とキツめに叱りつけていた。さっそく怯む僕。程なくして「お兄さん何人?」と聞かれたのだが、完全にビビりモードに入ってしまった僕はふつうに答えようとしたのにパニックになって「あ!」とでかい声を張り上げて店内の常連に白い目で見られた。恥ずかしい。僕は時々こういうことをやらかす。

このあとも失態の連鎖は止まらない。まず、狭い店内はかばんを前に持って通らなければならないのに、それを忘れて肩掛けのまま入ったせいでマスターから「かばん!」と注意を受ける。席についた際には「(お酒は)何にする?」と聞かれて「梅割り」と答えたのだが声が通らず2回ぐらい聞き返され、ふたたび常連たちの視線を集めてしまう。さらに自分で頼んでおいて呪文を忘れてしまい、マスターから「お兄さんなんだっけ?」と聞かれても答えられず、隣のお姉さんに「アブラ味噌ですよね」と助け舟を出される始末。鈍くさい僕が悪いのだが、相次ぐミスに完全に心が折れ、なんでこんなに狼狽しながらもつ焼きを食べねばならぬのだと悲しくなった(ちなみに常連に対しても「そんなに早く出せるわけないよさっき頼んだんだから」と締めていたので、マスターはどの客に対しても平等に厳しい。別に新入りいじめをしているわけではない)。

ちなみに味はとても良かった。僕は「シロタレ」「タン生」「アブラ味噌」の3品をオーダー。

宇ち多"ご自慢のタレを絡めて焼いた「シロタレ」は、ほどよく甘辛く香ばしい、お酒のすすむ味。

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「タン生」は赤みを残したタンのボイルに酢醤油をかけた一品。僕的にはこれがいちばん美味しかった。他のもつ焼き屋ではあまり見かけない料理だ。コリコリしすぎない柔らかめの食感と、さっぱりしたお酢の風味が、どちらかというと濃い目の「タレ」のあとにちょうどいい。

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混乱と記憶喪失の末に手に入れた「アブラ味噌」は、本当にアブラのかたまりで少々重かった。すでに胃にお寿司も入っていたせいか、はたまた失態続きのショックのせいか、あまりじっくりは味わえなかった。

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看板メニューのひとつ「煮込み」も楽しみにしていたのだけど、「アブラ味噌」でおなかの限界を感じたのでギブアップ。3品に梅割り2杯でお会計は1000円。まさしくせんべろ。お店のルールが僕のようなテンパりがちの人間に不向きなことを除けば、非常に良い飲み屋だと思った。近所にあったら常連になること間違いなしである。

緊張感をおぼえながらの梅割りがはたして本当に美味しかったのかは微妙なところだが、満足のいく昼飲みチャレンジであった。こんどは友人も連れ、もうすこし心に余裕のある状態で楽しみたいなあと思う。

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