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【最近読んだ本】2024年:①

 面白いと感じた要素や、一部の表現や、お話の構成については書いているので、多少のネタバレも嫌で、作品を予備知識無しで読みたいという方は、見ない事をお勧めします。
 読んだ後の方や、多少の展開バレは気にしないし、『他者の感想はあくまで他者のモノ』と割り切れる方でしたらどうぞ。

◆漫画◆

『片田舎のおっさん、剣聖になる』③巻 

『片田舎のおっさん、剣聖になる』③巻 
原作:佐賀崎しげる・鍋島テツヒロ 漫画:乍籐和樹
 田舎道場の天才剣士が、弟子達によって表舞台に連れ出され、様々な人に影響を与えながらその剣名を広めて行く物語の③巻。

 ネームドモンスターとの死闘を経て、ギルド内での知名度も上がって行くベリル。
弟子の剣術スタイルを改善するのを切っ掛けに、鍛冶師:バルデルの登場や魔剣の話等、彼の周りの世界が鮮明に描かれていく。
ベリルが、魔力を持つ少女のスリと出会う事で、物語は世界の闇の部分へと進んで行く。

刀工や魔法の概念、魔法使いの立ち位置や魔物の生態等、剣と魔法の世界のを形作る要素の説明が、物語の中で奇麗に組み込まれている。

個人的には鍛冶師:バルデルの、武器をあつらえる為に客を測る演出が、かなり好き。
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『BAD DUCKS』①~ ④巻

『BAD DUCKS』①~ ④巻 武田登竜門
親に捨てられた上に借金を押し付けられ、恋人と内臓を失い、実験体にされたモーガンは絶望の中でも【人】である事を辞めない。
孤独な異種族の売春婦や捨てられた赤子を抱えての逃避行。
お人好しの男が全てを失いながらも、それでも人としての【大事なモノ】を守り抜こうと足掻き続ける。
多種多様な種族が居る独特の世界観の中で、映画の様に展開される濃厚な人間ドラマ。
各登場人物達の立場の違いが簡潔且つ明解に描かれている為、一つ一つのシーンに重厚感を感じる。
人と人の世界は、意見と立場の相違が致命的な悲劇を生み、ちょっとした勘違いいや行き違いで壊れてしまうのと同時に、ほんの些細ない思いやりが他者の人生を救ったりもする。
絶望の中にも希望は存在する事を思い出させ、自分に大事なモノが有る様に、他者にも大事なモノが有るで有ろう事を再認識する。
読み終えると、他者との関係に少し思いやりが持てる様になる作品。
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『映像研には手を出すな』④巻

『映像研には手を出すな』④巻 大童澄瞳
アニメ制作を志す女子高生3人組を中心に、創作の喜びや楽しみ、それらに関わる人々や社会との関係を描く作品の④巻。
冬休みの旅行で見つけたタヌキに関する伝説が、作品にインスピレーションを与える。
設定を大事にしながら、ストーリーを魅せる。
時間や予算の制約の中、膨大な理想をどの様に見せて行くか?
それに伴って必要な技術や、実際に形にする為の各々の苦悩を見せる。

書店再建への協力から、作品の限定上映やファンの拠点の話は、新たな世界の広がりと可能性を感じさせ、先の展開にワクワクする。
【成すべき事】と【やりたい事】は双璧なのか?延長上なのか?コストなのか?
進み続ければ、いつか分かる事なのか?
相変わらず、色々と考えさせられる作品。

今回の好きなセリフは生徒会書記の、
『自由は脆く、自由の方に気づく者は少ない。
 気付かなければ価値は存在しない。
 お前にはわかるか? 自由の価値が?』ですね。
皆が当たり前に有ると思っているモノですが、その意味や価値への認識は人によって大きな差異が有ります。
ある意味でそれも【自由】なのでしょうが、自分や周りの人間にとって【自由】の意味を考えるのは良い事です。
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『騎士王の食卓』

『騎士王の食卓』 ゆづか正成
修道院で育った少年レノは、盗賊達によって育った場所を失い、
助けてくれた騎士に導かれ、建設中の城で料理係としての人生が始まる。
レノの料理は人々の体と心を温め、明日への活力を与え、時に政治的場面も動かして行く。
中世の料理を通して、そこに生きる人々のドラマや文化、生活を解り易く描いている。
一回目は物語を読み、二回目は料理のレシピから味を想像し、三回目は中世の文化の紹介や説明部分を読んで楽しむ。
何度も読み返せる楽しく勉強になる作品。

◆小説・エッセイ・その他◆

『大江戸火龍改』

『大江戸火龍改』 夢枕獏
怪事件を理を持って解決して行く、謎の美しい男、
遊斎が行くところ、様々な不思議な事が起こり、妖物や化物が世に現れる。
古の邪法と人の怨念が合わさった時、人知を超えた災いが形となる。
江戸の人々と夜の闇の狭間を描く様な作品。

人であって人でないモノや、怪しくも人として生きる者達の描き方が、空気感や匂いが伝わる描写やセリフ回しが素晴らしい。
何話でも見たいと感じる作品。

ただ、惜しむらくはタイトルの『火附盗賊改』の裏組織という設定が、活かせていない様に感じられた。
江戸の役人や組織機構との関りが殆ど描かれておらず、個人の陰陽師探偵でも違和感なく成立する。
『鬼平』が好きな俺としては、少しガッカリ感が有った。

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