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入身投の基本(下)

植芝合気道には入身投がある。吉祥丸氏によれば「合気道技法の特長は入り身と捌きにある。しかも人間が全身全霊(心・気・体)の統一された力を出し得れば、その技法は力強い生命力の発揮となる」そうで「合気道ではその力を呼吸力といい、おもに手刀を通じて現わされ、技の活性化がはかられる。」(同書114頁)とのことである。「合気の投げは、自然の理に順応するように工夫されているが(中略)入り身投げは中でもあざやかで、入り身で相手の死角に入り、一瞬のうちに制する武道のきびしい一面と、丸い円転の妙からくる超合理性の一面を表現している。」(同書133頁)
この入身投は時宗系の技法にはないものである。時宗氏は最近、小野派一刀流との関係性を強調しているが、自ら江戸柳生系合気柔術とは関係がないことを証明している。
 
補足説明:大東流柔術には入身投はありません。よく似た技としては第2か条の逆襷(ぎゃくたすき)がありますが、活用する術理は異なります。
 
ところで、輪島の、彼自身が開発したというゴールデン・アームボンバー(喉輪落し)は、「黄金の左」を使う技だが、相手の左に進みながらあごにカウンターで入っていくところ、柳生流柔術と変わらない。腕は左右逆だが、正面から来る相手を受け押さえ、引き落として(回らないで)入身に入る、右腕がカウンターとなり効果的な技となるのである。武田惣角が伝えた江戸柳生系合気柔術の序破急の分類によれば、右足前で受けている、その基本となる「非力の養成」も右足前としているが、小野派系柔術(小野派一刀流)を相手にする場合は、柳生流柔術では左足前で受けるのである。このように構えと足捌きだけでも戦略思考が反映されている。

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