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2023年夏、白内障手術のてんまつ(Ⅲ)~いよいよ手術の日

【トップ画像】白内障の手術後、数週間たって、両目を見開いて月を見つめると、クレーターまで見えたことに感激した。(韓国ドラマ「花が咲けば月を想い」から、打ち解けたW主演の二人が月下で語らうシーン)

あんがい冷静でいられた手術の日

まず、手術前のセルフケアの3種点眼を起床時に済ませ、午前10時30分集合の指示どおり、眼科医院の待合室に向かうと、すぐに医院のビル3階に案内され、ふかふかの椅子が用意されたリビングルームのような一室で待つことになりました。
 
室内を見渡すと、わたしのほか、4人の患者がおり、中央に据えられたテレビをじっと見る高年女性、講談社新書を読む高年男性、付き添い人とファッション談義に花を咲かせる高齢婦人(聞けば、前週の右眼に続き、この日は左眼を手術するというツワモノ)、もう一人は持参した魔法瓶からしきりに飲み物を注ぐ高齢男性と、見たところ年齢層も幅広く、でも、一様に落ち着きがないふうでした。
 
やがて、看護師が現れ、「手術の準備をしていますので、2時間ほどお待ちください。手術の順番はこれから決めますので、12時30分ごろ決まりしだいお伝えします」と部屋を出ていきます。
 
わたしなどは手術されるにあたっての覚悟を、その間に決めろと告げられたのだなと思ったのですが、1日に5人を執刀するのですから、医師だって疲れるだろう、それなら早い順番で手術してくれと祈ったものです。
 
さて、手術は当初予定より若干遅れて午後1時から始まることになり、高齢婦人がトップ、わたしは2番目になりました。
 
手術着に替える必要もないというので、平服のままトイレに立って、しばらくしていると名前が呼ばれ、待機している同じフロアーの手術室に向かうと、すでにトップバッターの手術が始まっている様子で、半透明のドアからはゴーッという大きな音が漏れてきます。
 
やがて手術室がやけに静かになったかと思うと、トップバッターが退出。
さあ、いよいよ自分の番だと、両手を握りしめ、看護師にうながされるまま手術室に入っていきました。

まるで、SF映画の撮影現場のよう

すると、かすんだ目にもあざやかな光景が広がっていました。
まるでSF映画の撮影現場のように、中央の手術台がものすごい光量で照らしだされ、まわりには看護師や手術の助手なのか、大勢の白衣の人が待ち構えていたのです。
 
執刀医が「リラックスしてくださいね」と言い、いきなり手術台にあおむけにされたかと思うと、全身がさっと分厚いゴム状のカバーで覆われ、次に、手術する右眼の上瞼と下瞼を強粘着のテープできつく固定され、左手の人差し指には心拍計でしょうか、(医療ドラマでよく見る例の)クリップがはさまれます。
 
「説明しながら進めます。痛みがあったら、右手を少し上げてください」と執刀医の声が聞こえたかと思うと、「麻酔しますね」と眼に点滴され、時間をおかず、見開いたままの右眼の上で、おそらく医師の手なのでしょう、目まぐるしい動きがチラチラしています。
 
そして時間を置かず、ぐわんぐわんとバキューム機が動くような音がして(老廃物を吸引しているのか)、数十秒くらい静かになったと思ったら、眼の表面が(レンズを装着しているのか)ギラギラ光って、「終わりましたよ」という執刀医の声がして、瞼の粘着テープがベリベリッとはがされ、「殺菌の軟膏を投与しますね」という声に続いて、分厚い眼帯が装着され、促されるまま、ゆっくりと起き上がったのでした。
 
それはあっという間の出来事でした。
手術室を出るとき、介助してくれた看護師に「手術はどれくらいかかりました?」と聞くと、「正確には11分でしょうか」
 
その後、1時間ほど、もとの控室で静養して、迎えにきてくれた連れ合いに腕を引かれて帰ったわけですが、手術の一部始終を頭にメモできるほど、自分でも驚くほど冷静でいられました。
 
ただ、片目で見る外界がやけにまぶしく、手術した右眼が一晩中、チクチクとしていたのですが、抜歯したあとの痛みに比べれば、大したことはありませんでした。
 
(つづく)


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