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夏の「学び」@東エルサレム【前編】

こんにちは、エルサレム事務所の木村です。日本はまだ残暑が厳しいでしょうか、相次ぐ台風や水害なども心配な季節ですね。ここエルサレムは「夏も終わりかな」というくらい、朝晩は半袖では涼しくなりました。日が落ちるのも早くなり、あっという間に秋を通り越して冬に突入しそうな勢いです。

ということで、忘れないうちに夏休みの思い出を、、、ではなく、東エルサレムの女の子たちがこの夏に体験したさまざまな学びについて、ご紹介したいと思います。長くなるので「前編」と「後編」に分けてお届けします。

エルサレムの多くの学校は、6月下旬~8月末まで夏休みです。ちょうど学年が切り替わる(9月から新学年)ため、夏休みの宿題はほとんどなく、2ヵ月以上フリータイムとなります。学校によっては休み中にサマーキャンプといって、美術やスポーツなどのアクティビティを提供したり、家庭によっては有料の宿泊を伴ったサマーキャンプに参加したりするようですが、多くの子どもたちは一日中家にいるので、お母さんたちも大変そうです。

そこでJVCは現地パートナー団体AWCと連携し、青少年(女子)を対象としたコミュニケーションなどの研修や、グラフィックデザインやネイルなどの職業技術体験の機会を提供しました。

コミュニケーション研修では、ペアワークなどを通じて意思疎通をはかる難しさや楽しさについて改めて学びました。

さて、うまくいくかな?
もうこれ以上、高くならないよ~

2人1組になり、プラスチックカップをできるだけ高く積み上げる競争をしました。5段くらいまで積み上げるものの崩れてしまうカップに、「あーーー!!!」と女の子たちの歓声が部屋中に響き渡ります。

終わった後に感想を聞いてみると、「時間がないと焦るほどうまくいかなかった」「2人とも緊張すればするほど、重ねたカップが倒れやすくなるような気がする」「私がカップに水を入れたらどうかと話したら、ペアの相手の子にその案は受け入れられなかった」など、プレッシャーがかかる中で目標を達成することの困難さと、平常心を保つためのコミュニケーションなど感じるところがあったようです。

いろとりどりの風船、どのくらいの大きさにしようかな?

続いては風船をつかったアクティビティ。風船と楊枝(のような形状のもの)を渡された女の子たちは、思い思いの大きさに風船を膨らませます。いかに自分の風船を守るかという主旨のゲームでしたが、ほとんどの女の子がキャーキャー言いながら、友達の風船をいかに割るか悩んでいました。

真ん中の子、微動だにしません、、、

その中で、じっとイスから動かない女の子を発見。彼女は、ソフトボールくらいの大きさに膨らませた風船をお腹の中に入れそのままじっとしていました。他の女の子のように戦いの輪?に入ることなく、最後まで風船を守ることができました。

研修トレーナーは「風船を守って」と言いましたが、楊枝を渡された女の子たちのほとんどはお互いの風船を割ってしまいました。より多くの風船を守るためには、ここにいる女の子たちがチームとしてどうすればよかったのでしょうか?

アクティビティをするたびに、振り返りをします

こうやって楽しみながら、お互いにコミュニケーションのスタイルが違うこと、その違いを認め合いながら意思疎通をしたり、同じ目標に向かって活動したりといったことの難しさと意義を彼女たちなりに感じた2時間でした。

農場の向こう側には、ユダヤ人の入植地が見えます

続いては、郊外での体験研修。エルサレムから車で1時間ちょっと離れたヨルダン川西岸地区のラマッラ郊外にある農場に出かけました。野菜などの収穫のお手伝いも予定していましたが、あまりの暑さに肥料をつくって苗床に入れたりといった屋内でできる作業をすることにしました。

農場にはたくさんの種類の野菜が育てられています

訪問したオム・スレイマン農場は、アグロエコロジー(※)とコミュニティ支援農業を行っていて、共同設立者のひとりは女性で、研修生やボランティアなどたくさんの女性たちが活躍しています。トマト、ブロッコリー、スイカなど季節ごとにさまざまな野菜をつくっていて、ヨルダン川西岸地区で唯一、有機サツマイモを栽培しているとか。
※環境への影響を最小限に抑えようという農業の手法

つくった肥料をプラスチック容器につめ、1つ1つの穴に種を入れます
ハーブは種類ごとに仕分けして乾燥させます

女の子たちは農園を歩きながら、農園の成り立ちや野菜がどう育つかなどの説明を受けたあと、肥料づくりや乾燥ハーブづくりを手伝いました。そして、最後に農園でお手伝いをしているシバさんに、「どうして農園で働くことにしたのか」「女性ということでの困難などなかったか」など人生の先輩として生き方をお伺いしました。

シバさん(真ん中の黄色いTシャツを着た女性)の話を熱心に聞く女の子たち

シバさんは体験研修に参加した女の子たちと比較的年齢が近いこともあって、シバさんの考え方や人生の選択に、大きくうなずき積極的に質問する子もいました。後で感想を聞いた際には、「男性にしかできない職業はないことがわかって、勇気をもらった」「女性も社会で活躍できることがわかって嬉しかった」といった声をきくことができました。

いずれの研修でも学校ではなかなか学べないことや出会いがあり、夏休みが終わった後も女の子たちの人生の一部に、何らかの刺激があったら良いなあと思います。
(後編へ続く)


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