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花を買った話

自分のお金で自分に花を買ったのは初めてのことだった。それまで「花」は誰かに贈ったり、貰ったりするもの、という認識だった。

すっかり肌寒さを感じなくなった春の夜、自分で買ったものだけれど、花束を持って帰路に着くというのは心が躍った。

「自分のために花を買って帰る」ことは、なんの難しいことも無ければそこまでお金がかかるものでもないのに、なぜ今までしなかったのだろう?

誰かに贈ってもらう事ばかりを想像していつも帰り道にある花屋の花たちを通り過ぎざまに見ているだけだった。

数ある花の中から、気に入った花を選んで小奇麗な包装紙に包んでもらい、形が崩れないようそっと胸に抱く。

花って自分で買ってもこんなに幸せな気持ちになるものだったのか。

自分に花を贈るということは、心に余裕を持つということかもしれない。

逆算的な発想で、頑張って背伸びをしていたらいつの間にか自分の目線がそこまで上がっているように、切羽詰っている時こそ時間をかけて自分自身を労ってあげると、自然と心にもゆとりが生まれてくる。

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