見出し画像

シャープな動きでチームに勢いをもたらすジェス・パーク :: P2W010 :: WSL Watch #053

アーカイブ的な意味合いもあるかも? って思って気まぐれに量産体制に入った'P2W = person to watch(注目したい人)'シリーズの第10弾はマンチェスター・シティのイングランド代表MFのジェス・パーク(Jess Park)を。"WSL Watch #051"で取り上げたグレイス・クリントン(Grace Clinton)に続いて、今シーズンの活躍が目を引く若手枠ってことで。

持ち前のスキルとスピードでチームに勢いをもたらすダイナミズムが魅力

プロフィール的な部分は後回しにして、とりあえず、ジェス・パークのざっくりとした印象を言うなら、「スピードとスキルを併せ持ってて、シャープで思い切りがいいプレイが魅力の若手アタッカー」って感じかな。

具体的には、グレイス・クリントンにもちょっと似てるんだけど、中盤でアグレッシブに動けて、前にスペースが空いてたらボールをどんどん前に運ぶ推進力を持ってて、そこからのパスもシュートも質が高い。個人的に、前からサッカー選手はざっくりと格闘技の階級制みたいに考えるとわかりやすいって思ってて、ボクシングみたいな細かい感じではなく軽量級・中量級・重量級くらいに分けて、実際の体重ってよりもあくまでもプレイの強度とかのイメージで考えて、プレミアリーグとかWSLは基本的に中量級以上であることがほぼほぼデフォルトになってるリーグだと思ってて、グレイス・クリントンもそうだし、"WSL Watch #048"で取り上げたエリン・カスバート(Erin Cuthbert)とか"WSL Watch #046"で取り上げたローレン・ヘンプ(Lauren Hemp)とか"WSL Watch #045"で取り上げたローレン・ジェイムズ(Lauren James)とかもまさに中量級以上だと思うけど、ジェス・パークはわりとレアな軽量級ってイメージだったりする。もちろん、軽量級だからダメって話じゃないし、実際にWSLでプレイしてる日本人選手だと宝田沙織以外はみんな軽量級だと思うけど、でも、やっぱり軽量級はリーグ全体で考えると例外的な存在で、特別な武器だったりチーム戦術との相性だったり、それを補うモノが何かないと難しいとは思うかな。例えば、長谷川唯なんかわかりやすく軽量級だと思うけど、それを補う武器を個人でもたくさん持ってるし、マンチェスター・シティのプレイモデル自体も軽量級であるデメリットが出にくいって側面もあると思うんで。話をジェス・パークに戻すと、基本的には軽量級のテクニシャンで、スピードもかなりあって、でも、フィジカル・コンタクトを上手く避けながらテクニックで勝負するタイプかっていうと案外そうでもなくて、勢いよく突っ込んでく思い切りの良さみたいな部分も目立つ。イメージとしては、マンチェスター・シティのメンズ・チームのイングランドMFのフィル・フォーデン(Phil Foden)とちょっと近いモノを感じることもあったりして。

実は今シーズンのマンチェスター・シティで出場機会が大幅に増えたのはウィンター・ブレイク以降だったりするんだけど、特に最近の試合で大きな仕事をしたインパクトが大きかったかな、やっぱり。例えば、14節のチェルシーとの頂上対決の決勝点になったカディジャ・ショウ(Khadija Shaw)のゴール・シーンでは、強いプレスでエリン・カスバートからボールを奪って、そのまま運んで、相手を十分引きつけてからカディジャ・ショウにパスしてゴールをアシストしてたり、直近のブライトン&ホーヴ・アルビオン戦でも見事なスルーボールでローレン・ヘンプのゴールをアシストしてたり。直接得点に関与するシーン、勝敗を左右するようなプレイが確実に増えてる印象で。

*緊急追記: マンチェスター・ダービーで2G1Aの大活躍

この記事は3月23日のマンチェスター・ダービーより前に書いてたんだけど、ジェス・パークがマンチェスター・ダービーで2ゴール+1アシストで全3ゴールに絡む大活躍を見せてくれたんで、さすがに追記しといたほうがいいかな、と。上に「直接得点に関与するシーン、勝敗を左右するようなプレイが確実に増えてる印象」って書いたけど、まさにその通りになったんで。

先制点のシーンは長谷川唯のボール・キープからの展開で、最終的には左サイドからのクロスに後ろから飛び込んできてボレーで合わせたゴールだったんだけど、ボックス内に飛び込んでくる勢いと感覚、クロスを合わせる技術が光ったゴールだったかな。

ただ、(上の動画には入ってないけど)実はこのシーンは長谷川唯からカディジャ・ショウ(Khadija Shaw)にパスが通った時点でオフサイドで、VARがあれば遡って覆されちゃうシーンだったとは思うけど。もちろん、SNSなんかでは話題になってたし、でも、それを言ったらその前にマンチェスター・ユナイテッドのハンナ・ブランデル(Hannah Blundell)に2枚目のイエローカードが出てておかしくなかったって話を含めて、今回のケースに関しては、VARが導入されてない試合でその場で副審の旗が上がらなかったんだからアンラッキーだったけど仕方ないのかな、と。ただ、どっちにしてもゴール自体の質はすごく高かったと思うけど。

2点目はショートCKからフリーの長谷川唯に渡してファーへのクロスっていう前節のカディジャ・ショウのゴールと似たルーティンで、この試合ではアラナ・ケネディ(Alanna Kennedy)が折り返したボールに誰よりも速く反応したジェス・パークが押し込んだんだけど、このゴールも反応の速さっていうジェス・パークらしさが素晴らしかったな、と。

マンチェスター・シティの3点目のカディジャ・ショウのゴールも、ジェス・パークの勢いと当たりの強さとゴールへ向かう推進力とパスの能力が存分に発揮された見事なアシストだった。もちろん、相手選手と接触しながら決めちゃうカディジャ・ショウもさすがなんだけど。

ちなみに、試合後のガレス・テイラー(Gareth Taylor)監督のコメントによると、クロエ・ケリーがサブでジェス・パークとメアリー・ファウラー(Mary Fowler)がスタメンだったのは、シンプルに2人の調子がいいから外せないってことなんだとか。「ビッグ・マッチで勝敗を左右する活躍を見せる」っていうのはスターの条件だと思うけど、そういう意味では、ジェス・パークはまさにそのプロセスに入りつつあるってことなのかも。

*3月25日に書いた追記はここまで

ローンで経験を積んでシティに戻った期待の若手アタッカー

プロフィール的な部分も押さえとくと、ジェス・パークはロザラム出身の選手でマンチェスター・シティでは背番号16を付けてる。2001年生まれだから現在22歳で、ハル・シティとヨーク・シティを経て2017年からマンチェスター・シティに在籍してて、18/19シーズンにリーグ戦デビューを飾ったんだけど、本格的に試合に絡むようになったのはリーグ戦13試合に出場した21/22シーズンから。昨シーズンはローンでエヴァートンでプレイしてたんだけど、リーグ戦17試合に出場して3ゴールを決めてるんで、大きく飛躍したのは昨シーズンって言っていいのかな。

ユース年代からイングランド代表には呼ばれてたけど、2022年からフル代表にも呼ばれてて、実は代表デビューは2022年11月に行われた日本とのフレンドリー・マッチでの途中出場で、代表初ゴールも決めてるんだとか。昨年のFIFAウィメンズ・ワールドカップのメンバーからは漏れたけど、今年2月の代表ウィークのフレンドリー・マッチ2試合はどっちも交代出場してたりするんで、基本的には今後もコンタクトに代表には絡んでいきそうかな。

上に「実は今シーズンのマンチェスター・シティでの出場機会が大幅に増えたのはウィンター・ブレイク以降だったりする」って書いたけど、今シーズンの前半に関しては基本的にWGの控えって位置付けで、ローレン・ヘンプかクロエ・ケリー(Chloe Kelly)を休ませるときに出てくる若手って感じで、持ち前のスピードを活かしてどんどん仕掛けるWGって印象だったけど、ウィンター・ブレイク以降はWGよりもインサイドMF起用が増えてて。もちろん、大きな要因としてインサイドMFの絶対的なファースト・チョイスだったオランダ代表MFのジル・ロード(Jill Roord)の長期離脱が大きいんだとは思うけど、ウィンター・ブレイク以降のプレイを観てる限り、この起用が見事にハマったって言えるんじゃないかな。ジル・ロードとはタイプが違うけど、スピードを活かしたエネルギッシュなプレイで中盤にダイナミズムを生み出してて。マンチェスター・シティでもイングランド代表でも、ますます存在感が大きくなりそうなフレッシュなタレントであることは間違いないはず。


more persons to watch ::

この記事が参加している募集

サッカーを語ろう

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?