こばやしかつと

映画監督。20年間テレビ番組の制作・演出をしていたが、人生後半から映画製作に。拙作「3…

こばやしかつと

映画監督。20年間テレビ番組の制作・演出をしていたが、人生後半から映画製作に。拙作「369のメトシエラ」「フローレンスは眠る」は海外でも配給中。 でも、最近ではなかなか制作もできず、映画監督を名乗っていいのか迷い中。できることなら生まれ変わりたいと思う。もっと売れる監督に。

マガジン

  • たしかに、そんなこともあったわね

    以前、他サイトに書き連ねていました。 そちらが閉鎖されたので、こっそり引っ越し保管しています。 話のネタにならないかとメモった駄文のたぐい。保証します。

  • だから「映画」はやめられない

    「映画」は人生の清涼剤に違いありません。 でも、なんでこんなに惹かれているのか、自分でもよくわかっていません。その理由が知りたくて、時々考えたりしてもいますが、やっぱりよくわかりません。

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後悔というものの大きさ

 高校がキライだった。  3年間の記憶はすべて灰色。一日もはやく抜け出したかった。  卒業式の日は晴れ晴れしていた。やっとオサラバできる。  社会に出て、ぼくはテレビ番組のディレクターになり、映画監督になった。ぼくは才能のある演出家ではないが、何十年かその世界で生きてこられているのは、多少は向いているのかもしれない。  しかし世の中には、大人になってわかることがたくさんある。ぼくが今日ここにあるのは、あの高校の3年間があったからということに気がついた。卒業から20年も

    • 「百億の昼と千億の夜」そのしじまにこそ。

       人生観のコア、といっても大げさだと思わない。数年に一度は読み返し、再発見をしながら、ますますその思いは強くなる一方だ。 百億の昼と千億の夜著者: 光瀬 龍出版社:早川書房 発行年:1973  「百億の昼と千億の夜」―このタイトルをつぶやくだけで、ぼくは自分の根底を再確認する。  初めて読んだ中学生の自分が、どれだけこの小説を理解できていたか、まったく自信はない。  しかし、読みふけっている最中ぼくのなかには、それまで味わったことのない浮遊感が膨らみ続け、ページをめく

      • 妄想SF映画「御先祖様万歳」(ネタバレあり)

         映画化を試みることにした。  原作は54年前に書かれた小松左京氏の短編SF「御先祖様万歳」。  主人公の木村三平は、失業し田舎に帰ってくる。「神隠しの山」とよばれる裏山で、不思議な洞穴を見つける。なにげなく中に入り、出てきたのは入口と同じ風景。ぐるりと回ったらしい。が、よくよくみると微妙に違っている。出た側は1863年。文久3年、いわゆる幕末である。「神隠し山」の洞穴は、タイムトンネルだったわけだ。  これはいい。  ハリウッドばりのとてつもないセットもVFXも必要もない

        • 今度のエルビスさん

           エルビスさんは今も世界中にいて、どんな小さな催し物にも出てくれて、集まった人たちを楽しませてくれる。  今度のエルビスさんは、それはそれはもう気合い十分、世界中のエルビスさんのなかでもトップクラスだとは思う。  スクリーンの中の新しいエルビスさんは、それまで彼のことをあまり知らなかった僕にも自分がどんな人間だったかを教えてくれた。ラストシーンでは、思わず目頭が熱くなってしまうほどだった。  スクリーンの中ではエルビスさんはずいぶんまえに亡くなったというけれど、数年前に

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        • だから「映画」はやめられない
          17本

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          わずか一言、短文の名手か!?

           日に日に、そいつの存在が気になりだした。  思い切って、向かい合うことにした。 「こ、これは…!?」  たいそうに構えたけれど、なんということはない。  某日記サイトのページ間にときおりあらわれる一行広告のこと。  前々からぼくは、このわずか一行の言葉が妙に気にかかっていた。それでクリックした。  跳んだ先は、アマゾンのサイト。  つまり一行広告はアマゾンで販売している映画のDVDやビデオの宣伝文だったわけ。  まるで映画のタイトルあてクイズみたいで、面白くなってしま

          わずか一言、短文の名手か!?

          ぼくはネコは飼ってなんぞいません・後編

           「にゃあ」  と呼ばれて飛び出て、ハタと気づいた。  そうか、外に出していたエサ皿は、母親<1時>だけが食べていたわけではなかったのか。鬼と化した母親とダブらないように、子どもは時間をずらしたわけだ。  やるではないか。  ためしにエサ皿を外ではなく、玄関の内側に置いてみた。  彼女は警戒し眺めていたが、腹が減ってどうしようもないのか、なかに入ってきた。ぼくが目の前で見ているにもかかわらず、しっかり食べ終えると、逃げるように去っていった。  彼女は夜8時にやってきたので

          ぼくはネコは飼ってなんぞいません・後編

          ぼくはネコは飼ってなんぞいません・前編

           最近周りの方から、  「飼ってるんですってねー」  と言われているが、ネコは飼ってなんぞいません。  ヤツ(♂)が、ぼくの部屋に勝手に出入りしているだけです。  便宜上、現在<きゅう(仮名)>とは呼んではいるけれど、他のところでなんと呼ばれているかはわからない。  この茶白ネコとの出会いはひとことでは言い切れず、今の関係もとても微妙で説明しにくい。  しいて言うなら「知り合い」か。  ちょうど1年前の9月のいまごろ。  映画の製作も大詰め、音楽や音を整理す

          ぼくはネコは飼ってなんぞいません・前編

          瓶の中の海

           蝶ネクタイをしたブレンダーはたずねてきた。  「名前は…なににしますか?」  ぼくはふるさとの海の名前をつげた。  「響灘(ひびきなだ)でお願いします」  世界にひとつしかない万年筆のインクができあがった。  万年筆のある生活をはじめて、インクにもたくさんの種類があることを知った。  定番である青や黒も淡いものから濃いものまで、さらにセピア、グリーン、黄色、赤系などなど国内外各メーカーがそれぞれ趣向をこらしたさまざまな色のインクを発売していて、ゆうに百は越えてい

          漫才台本『ビバ! 昭和歌謡』

          ◯イカ太郎&タコ美、登場。   ◯あいさつあって―― イカ「じぶん、カラオケって行く?」 タコ「あたしメチャ得意やで、歌。」 イカ「初めて聞いたで、そんなん」 タコ「南港の歌姫ゆうたら、あたしのことや」 イカ「知らんかったな」 タコ「女は秘密が多いの」 イカ「……こないだな、20代の子たちとカラオケ行ってん」 タコ「誰ッ!? 誰なのッ!?」 イカ「友だちや、ただの」 タコ「ウソ、ウソよ!?」 イカ「まあ、聞けって。でな、驚いたのがその子ら歌いまくったの

          漫才台本『ビバ! 昭和歌謡』

          ドレスコードの悪夢

           サラリーマンであれば、とりあえずはスーツにネクタイ、革靴。  これが恐ろしいことに、どこでも通用する。ラフにしたい時は上着を脱ぎ、ネクタイを外せばいい。便利だ。  ただし、日本に限る。海外では行き先やその場、仕事にあわせたドレスコードが存在する。 「日本人はいつでもスーツだから堅苦しく、つきあいにくい」  と、云われたことがある。  ビジネスの場においても、スーツを着ているのは経営陣やファイナンス関係者であって、ぼくらのような自由業は絶無に等しい。  来週からロスに行

          ドレスコードの悪夢

          なぞのみりん

           みりん、とは何ものぞ?  耳にはしたことはもちろんある。  調味料の一種だとはぼんやりわかってはいるけれど、どういうものかさっぱりわからない。  塩はしょっぱい。  砂糖は甘い。  こしょうは辛い。  酢は酸っぱい。  しょうゆは、なににかけてもよろしい。  で、  みりんとはなんぞ?  インスタントラーメンぐらいしかつくれない私は、食事を自分で作る修行をはじめた。  料理をはじめたことには理由がある。  必ず来るであろう首都圏の大地震を想定したのである。災害時用の

          なぞのみりん

          カウボーイからの、ウルトラマン

           先週、「シン・ウルトラマン」観に行きました。  庵野監督と同世代の人間としては、ウルトラマンがまさにウルトラマンで、初めてテレビで見た子どもの頃の感情と好奇心が蘇り、実によかったです。震えましたねえ。  翌日、DVDですが「真夜中のカーボーイ」(あえて邦題は”カウボーイ”ではないそうです)を観ました。  1969年のアメリカ映画で、アンジーのお父さんであるジョン・ボイドとダスティン・ホフマンが主演をしています。この映画はそれまでの勧善懲悪、道徳善的英雄的主人公像、ハッピ

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          中華鍋に踊るブタ肉のうしろには

          中華鍋でブタ肉を炒めていると、かならず、あの絶叫がよみがえる。  「あたしにこれを、どうリポートしろっていうのっ!!?」  脳裏にこだまする女性リポーターの声と重なって、撮影するカメラマンの冷静な声も聞こえてくる。  「これ、放送できんの?」  料理番組ではありません。  ずいぶん前のこと、食の安全というものを見聞したく、その先進国のひとつであったデンマークへ取材に行った。  デンマークは安全管理に基づいた豚肉を生産し、日本はメキシコや中国だけでなく、デンマークから

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          脳みそではなく、「手」が考える

           モノがモノを引き寄せる、ってことがあるんですかね?  数年前、46年も前に亡くなった祖父の遺品がぽろりと出てきましてねえ。  それが60年代のモンブランの万年筆だった。当たり前に、中でインクが固着していて使えない。  万年というぐらいだから修理すれば使えるだろうとメーカーに持っていったら、修理代が耳を疑うほどべらぼうに高い。ふざけんな、ドイツ人。  じいちゃんの形見をあきらめるのも悔しかったので、ほうぼうにあたり、ずっと安く修理してくれるとこを見つけました。さすが息の長

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          海の外に吹く風まかせ

           明日なにが起こるかわからない。  拙作映画「フローレンスは眠る」が突然、海を渡ることになった。
   来月(2017年5月)、ロサンゼルスで開かれる映画祭に、正式出品作として選ばれた。  『New Filmmakers Los Angeles Monthly Film Festival』  という映画祭。日本ではまったく知られていない。ぼくも知らなかった。  実はエントリーされていたことさえまったく知らず、いきなり「Congratulations!」とメールを頂いた。

          海の外に吹く風まかせ

          毎日、100万円を使うことにする。

           毎日100万円、なにを買おうかな。  想像するだけでドキドキする。  スーパーマーケットで、今日は野菜が高いなあと嘆息しなくていい。  納豆も高い方を選べる。バターの値段も気にしなくていい。  天国にいる気分だ。最高だなあ。  そんな妄想しかできない貧乏症のぼくは、ニュースで見た   「東芝の赤字が1兆円」  という数字。  これがよくわからない。  家計簿はつけていないけれど、毎月1万円の赤字のほうが切実に迫ってくる。  1兆円という数字の規模が、ぼくの感覚にはま

          毎日、100万円を使うことにする。