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【小説】魔法ファンタジー作品におけるオリジナリティの出し方

小説において、他の作品にはないオリジナルな部分をどう作るか?
書き手であれば1度は悩むポイントだと思います。

今回は特に、魔法や魔法使いが登場するファンタジー作品について、どのようにオリジナリティを出せばいいのかを書いていきます。

どこをリアルに書くか?でオリジナリティが決まる

魔法ファンタジー作品におけるオリジナリティの出し方。

それはどこにリアルさを出すか?が重要だと思います。

魔法が登場するファンタジー世界のお話ではあるけども、現実の世界と同じような部分もその世界にはある。戦争があったり、貧富の差があったり。貨幣が存在したり、大企業が存在したり。

魔法の世界ではあるけども、願いがなんでも叶ってしまう夢の世界ではない。私たちが暮らす現実の世界と同じように痛みや苦しみもある。

現実の世界にあって読者が共感できるリアルさ。そのなかでどのリアルさに焦点をあてて描くのか?それが魔法ファンタジー作品でのオリジナリティになるのではと思います。

具体例として、既存の魔法ファンタジー作品はどのようなリアルさを描いているのか、見てみましょう。


人の死を描く『ハリー・ポッター』


魔法ファンタジー作品の定番、『ハリー・ポッター』から見ていきます。
魔法学校で暮らす様子を描いた学園モノでもあって、まずその学園生活にリアルさがあります。

魔法学校の生活、というワクワクする設定ですが、ハリーポッターの世界ではちゃんと勉強しないと魔法を上手に使うことはできません。難しい魔法になるほど訓練と才能が必要です。これは現実世界でも同じですね。魔法の世界だからといって勉強をしなくていいというわけではないのです。

学校なのでテストもあります。そしてその結果で卒業後の進路の選択肢が決まってしまう重要なテストもあります。

OWL(ふくろう)って、どんな仕事に応募するかとかいろいろ影響するから、とっても大事さ。

「ハリー・ポッターと不死鳥の騎士団」

主人公・ハリーの成績がそこまで優秀ではないのもリアルですね。

普通魔法レベル(O,W,L)成績
〈合格〉
優・O(大いによろしい)良・E(期待以上)可・A(まあまあ)
〈不合格〉
不可・P(よくない)落第・D(どん底)トロール並・T

ハリー・ジェームズ・ポッターは次の成績を修めた。
天文学 可A
薬草学 良E
魔法生物飼育学 良E
魔法史 落第D
呪文学 良E
魔法薬学 良E
闇の魔術に対する防衛術 優O
変身術良 E
占い学 不可P

「ハリー・ポッターと謎のプリンス」




また、主要キャラクターが死亡することが多く、死というものをしっかりと描いていることにもオリジナリティを感じます。「死んだ人を生き返らせることができる魔法」もハリーポッターの世界には存在しません。

やはり「魔法の世界だからなんでもできる!」ということではないのだと分かります。



階級社会と腐敗した魔術師たちを描く『バーティミアス』


2つ目はバーティミアス。バーティミアスはハリーポッターほど有名ではないので、まずは作品のあらすじ。

魔術師たちが支配する街、ロンドン。両親によって売り飛ばされた少年ナサニエルは、国家保安省の役人でもあり、政府公認の魔術師でもあるアーサー・アンダーウッドの家へ弟子入りさせられる。魔術師としての修業を積みながら、その意義と使命を教えられたナサニエルは、偉大な魔術師となって成功することを夢見る。一流の魔術師サイモン・ラブレースにひどく恥をかかされたナサニエルは、周囲の大人への反発を感じ、復讐を誓う。そして、覚えたての魔法の力で、ベテランの妖霊(ジン)のバーティミアスを呼び出し、強力な「サマルカンドのアミュレット」をラブレースから盗み出す。しかし、単なる復讐のはずだったこの行動が「サマルカンドのアミュレット」をどうしても必要とするラブレースと命がけの戦いを繰り広げることになってしまう。

Wikipediaより


魔法ファンタジー作品としてのバーティミアスのオリジナリティは、魔術師たちを正義のヒーローとして描いていない点にあります。

魔法使いの存在を普通の人々には秘密にしていたハリーポッターとは異なり、バーティミアスで人々は魔術師の存在を知り、同じ社会で生活をしています。

バーティミアスの作中において魔術師は支配者階級であり、政府の要職は魔術師たちが占めています。魔術師たちが私利私欲の権力闘争に明け暮れた結果、政治は混迷を極め、そんな状況に普通の人々は反感を抱いています。


そんな社会のなかで、魔術師である主人公・ナサニエルが葛藤し、選択を迫られていくようすが描かれていきます。

閣僚のだれに対しても同じような不安を感じる。自分はこれまでなんとか心を鋼のようにして、地位を死守してきた。どの閣僚も野心、権力、才能、策略にものをいわせて、自分の利益になることしかしない。そのなかで生き抜くために、ぼくもそうしてきた。たぶんこれがふつうだ。そうじゃない人間なんているだろうか?

「バーティミアス プトレマイオスの門」

今、この国はなにもかも収拾がつかなくなっている。戦争も、一般人も、帝国全体の情勢も。国家を救うためには、英断を下さなければ。それも今すぐに。

「バーティミアス プトレマイオスの門」


魔術師を万能の存在として扱うのではなく、腐敗と堕落、魔術師たちのドロドロな権力闘争を描いたのがバーティミアスのリアルですね。



まとめ

魔法ファンタジー作品を書くときに、自分なりのオリジナリティを出す方法。
その1つとして、リアルに描く部分を決めることがあります。


ハリーポッターで主要キャラたちが死んでいくことについては、作者が「人の死というものは、この作品のテーマとしている」とインタビューで語っています。

魔法の世界のなかで現実と同じようにリアルにした部分。そこが作者の書きたかったものなのかもしれません。

どこをリアルに書くのか?それはなにを作品のテーマとするかによって決まるのでしょう。そしてそのテーマが、あなたにしか書けないオリジナリティとなります。


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