小説編集者が見る「ラストサムライ」

映画「ラストサムライ」を久しぶりに見ました。
主人公トムクルーズのキャラ設定がきちんと練られた作品でした。


「物語スタート時点で、主人公は心の傷を抱えている。

その傷は渡辺謙たちサムライと出会い、彼らの価値観と生活に触れていくなかで癒されていく。

最後に主人公は生きる気持ちを取り戻す」

主人公の「再生」がきちんと描かれていました。

「戦争や過酷な任務でトラウマを抱えて荒れた生活をしている元兵士、元CIAが新しい人との出会いを通して、自分を見つめ直し、生きがいを取り戻していく」

というストーリー。ハリウッドあるあるですね。みなさんも思い浮かぶ映画があると思います。


なぜこれがテンプレート化しているか、そしてなぜ人気があるかというと、作品をおもしろくする法則をきちんと取り入れられているからです。


法則に「魅力的な主人公を作る3要素」というのがあって、そのなかのひとつの要素が「主人公が抱える問題」です。主人公に問題を設定することが、魅力的な主人公を作ることに繋がります。


ラストサムライで言えば、

「アメリカの原住民との戦争で心に傷を負ったトムクルーズは、酒浸りで荒れた生活をしている。彼の人生が今後に幸せなものになるとは全く思えない」

これが主人公が抱える問題。人生についての問題ですね。
「この問題を解決しなければ、主人公は決して幸せになれないだろう」ぐらいの大きな問題。それを主人公に持たせることが必要です。

「戦争や過酷な任務でトラウマを抱えて荒れた生活をしている元兵士、元CIAが新しい人との出会いを通して、自分を見つめ直し、生きがいを取り戻していく」

さっきまとめたあるあるだと、↓がその問題に該当します。

「戦争や過酷な任務でトラウマを抱えて荒れた生活をしている元兵士、元CIA」


これがハリウッド映画でテンプレになるのは、おそらく主人公の問題が作りやすいからだと思います。
軍や諜報機関でつらい体験をさせておけば、それが主人公の問題の原因になりますので。


アメリカだと日本よりも軍人という職業が身近なのでしょうね。なので「元兵士の主人公」と聞けば、共感したり境遇がイメージがしやすい人が多いのだと思います。それもあってテンプレ化する、と。



小説には作品をおもしろくするための法則があります。
そしてそれは物語全般に共通するもので、ラストサムライのような映画にも同じ法則を見ることができるのです。


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