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小説を書くときにいちばん重要なこと

小説というものを書くときにいちばん重要なこと。それは主人公の変化を描くことです。

小説だけではなく、映画や漫画など「物語」と呼ばれるものは、ほぼすべての作品が主人公の変化を描いています。

しかし小説投稿サイトの小説や小説コンテストへの応募作品を見ると、主人公の変化を描けていない作品が多い印象です。

ですので今回のnoteでは、主人公の変化とはなにか?変化を描くとはどういうことかをお話ししたいと思います。


主人公の変化とは、主人公の心の成長のこと。

主人公の変化とは、どのようなことを指すのでしょうか。

主人公の年齢が上がったとか、背が伸びたとか、結婚して子供が生まれたとか、目に見えることの変化ではありません。

主人公の内面の変化、心の成長を「主人公の変化」と指します。

小説の始まりの時点での主人公と、エンディングの時点での主人公。主人公という人間を見比べた時に、なにか変化があること。心が成長している部分があること。それが小説において最も重要です。「主人公が変化していない小説は、小説になっていない」と言ってもいいくらいです。

具体的にどういうことが主人公の変化なのか。実際の小説を見てみましょう。宮部みゆきさんの『ブレイブ・ストーリー』です。

三谷亘(ミタニ ワタル)は小学5年生。成績はそこそこで、テレビゲームが好きな普通の少年だった。大きな団地に住み、ともに新設校に通う親友のカッちゃんがいる。街では、建設途中のビルに幽霊が出るという噂が広がっていた。ある日、亘は幽霊が出ると噂される"幽霊ビル"で、要御扉(かなめのみとびら)に出会う。そこを潜り抜けると、亘たちが住んでいる現世(うつしよ)とは違う不思議な世界・幻界(ヴィジョン)が広がっていた。

wikipedia

主人公・ワタルは自分の運命を変えるためにヴィジョンへ旅立ち、女神がいるとされる運命の塔を目指して旅をします。

旅のなかで出会いと別れ、喜びと悲しみを経験したワタルは、ある答えに辿り着きます。

僕の運命。変えようと試みて、また新しい悲しみにぶつかる。それをまた変えようとしたら、その先には何が待っているのだろう。──変わるべきなのは、変えるべきなのは、僕の、僕の、──いったい何だ?
(中略)
変えるべきなのは僕の運命じゃなくて、──僕自身なんだ。

『ブレイブ・ストーリー〈〝旅人〟の道〉』

現実世界の不幸な自分の運命。それを変えようとしていたワタルは、「変えるべきなのは僕の運命じゃなくて、僕自身なんだ」と気が付きます。これが主人公の変化です。

主人公の考えが、小説の冒頭と終わりで変わること。心が成長して、以前の主人公とは別人のようなたくましさや優しさを得ること。

このような主人公の変化を描くことが、小説において最も重要になります。


プロットの段階で「主人公にどのような変化を与えるか?」を考えておく

小説のなかで主人公にどんな変化を与えるのか?はプロットやアイデアの段階で考えておくのが望ましいです。

例えば、「自分の意志がなくて周りの意見に流されていた主人公が、自分の意志を持ち、夢に向かってがんばれるようになる」

これは主人公がどのような変化、成長を遂げるのかをまとめた文章ですが、この一文が主人公の変化に関するアイデアとしてまとめられているだけでも充分です。


①どのような主人公?
②その主人公はどう変化するのか?

この2つを原稿を書き始めるまえに考えられておけば、それが小説の核となります。

主人公以外のキャラクターやストーリー、小説のなかで起こるイベントはすべて、主人公に変化を与えるためのものと言っても過言ではありません。

ですので主人公にどのような変化を与えるのか?が決まれば、小説としてのゴールが決まるのです。ゴールが決まれば、そこに到達するためにどんなキャラクターを登場させるか、ストーリーのどのようにするかなど他の要素も考えやすくなると思います。


ほぼすべての物語が主人公の変化を描いている

小説だけではなく漫画や映画などほぼすべての物語が、主人公の変化をその作中で描いています。

映画『ローマの休日』では、主人公・アン王女の変化があります。

ストーリーの序盤でアンは、王女としての自分の生活に窮屈さを感じています。
しかし終盤に「(王女としての)果たすべき義務をわきまえているからこそ、今夜ここに戻ったのです」
というセリフがあります。このセリフにアンの成長が表れています。

王女としての義務に嫌気が差してローマの街へ逃げ出したアン。しかし新聞記者のジョーと過ごすなかで、自分の王女としての義務を知ったのです。


映画『ギルバート・グレイブ』でも主人公の変化があります。

ギルバートは、食料品店で働きながら重い知的障害を持つ弟アーニー、夫の自殺から17年間も家から出ず、過食で極度に肥満した母ボニー、そして2人の妹たちとの生活を支える。アイオワ州の小さな町を生まれてから一度も出たことがないギルバートは、家族を置いて自分だけ町を出るわけにも行かず悶々としながら日々を送る。
そんな時ギルバートは、キャラバンを組んで全米を放浪する途中でトレーラーが故障し、ギルバートの町にしばらくとどまることになった少女・ベッキーと出会う。

wikipedia

主人公・ギルバートは、映画の冒頭では自分の生活に閉塞感を抱えています。また「家族を置いていけない」と家長である責任感を見せています。

そんなギルバートでしたが、映画のラストはギルバートの「どこにでも行けるんだ」というセリフで締められています。

家族のことがあり、「自分はこの町から出られない」と感じていたギルバートが、ストーリーを経て「どこにでも行けるんだ」と自分の人生に対して自由な価値観になります。この不自由から自由への変化が『ギルバート・グレイブ』で描かれている主人公の変化です。



まとめ

主人公の考え方の変化、心の成長を描くのが小説では重要なことであり、他の多くの物語も主人公の変化を描いています。

小説では、プロットの段階で主人公にどんな変化を与えるか?を考えておけるのが望ましいです。

どのような主人公が、どんな変化を遂げるのか?
他の小説を読むときに主人公の変化にも着目して見てみてください。きっと発見があると思います。




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