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今年は『拝啓ボウイ様』になっていた。


【拝啓ボウイ様?】

2023年11月4日(土)。
昨年開催された「高崎おとまちプロジェクト10周年特別企画『拝啓BOOWY様』」が好評を博したとのことで、11年目の今年も同企画が開催されることになった。

……あれ?タイトルが微妙に変更されとる。
これ、何も知らない人が見たらデヴィッド・ボウイの方を思い浮かべてしまわないかい?
あぁ、でも『BOØWY』はねぇ……商標登録されてるからねぇ。イベント・興行の企画・運営・開催も音楽の演奏もみんなみんなひっかかってしまう。後援にも協賛にも権利者のユイミュージックが入っていないからやむを得ないのかな。
本当に権利関係はわけがわかりませぬ。
2013年に、映画『ベイビー大丈夫かっ BEATCHILD 1987』上映決定のニュースがテレビで取り上げられた際、最初の1週間くらいは告知映像にBOOWYのステージ映像もガンガンに使われて「尾崎豊」と「BOOWY」がこの映画の2枚看板的な扱いをされていたのに、いつの間にやら関連ニュースからBOOWYの映像が消え、それと同時に映画の公式写真もBOOWYだけステージ映像からよく使われる宣材写真に切り替わった(他のミュージシャンは全てステージの写真だった)ことを思い出した。

そんな大人の事情に想いを馳せつつ、今年も開催されましたよ。「拝啓ボウイ様が!
今年も出演されましたよ。「じぐろ京介 with SPECIAL MEMBERS」が!!

もっとも「SPECIAL MEMBERS」で昨年から続投なのは、ギターの香川誠氏とベースの西山史晃氏のROGUE組のみ。本田氏、永井氏、大島氏は残念ながら今年は不参加
……すみません。出演者発表を見て、ちょっと、いや、かなりがっかりしました。まぁ、昨年が最高すぎたせいですが。氷室氏のサポメン経験者ばかりのスペシャルバンドで、且つ氷室氏の楽曲オンリーという、何とものような時間だったので。そんな奇跡はそう起きないことはわかっていたのに、一度甘美な夢を見てしまうと、ね。

とはいえ、冷静になってよくよく考えてみると、香川氏と西山氏がBOOWY楽曲を演るだけでも十分過ぎるほど贅沢な話。
それに今回はドラムが田中一光氏だという。この御方も1ツアーだけとはいえ氷室氏のサポートを務められた方。
西山氏+田中氏または西山氏+香川氏であればはそれぞれ(ビデオで)観たことがあるが、この三者の組み合わせを私は観たことがない。
であれば、この三者のコラボレーションはどのような化学反応を起こすのか確かめに行かずばなるまい。
(もはやじぐろ京介氏はどうでもいい。)
(どうでもいいというか、これまで数回じぐろ氏を拝見して、「じぐろ氏ならば大丈夫」という謎の安心感?絶対的な信頼感?が醸成された。ちなみに何が大丈夫なのかは自分でもうまく説明できない。)

というわけで「SPECIAL MEMBERS」を観に、今年も高崎まで足を運んで参りました。

【『友達』への追悼】

結論:今年は実質「拝啓 天国の櫻井敦司様」でした。

何故そう感じたか。
まずは、今回の「じぐろ京介 with SPECIAL MEMBERS」が演った曲目をご覧下さい。

  1. MARIONETTE

  2. B・BLUE

  3. LIKE A MOON(ROGUE)

  4. CLOUDY HEART

  5. My Eyes & Your Eyes(BUCK-TICK)

  6. 惡の華(BUCK-TICK)

  7. JUST ONE MORE KISS(BUCK-TICK)

  8. Dreamin'

アンコール

  1. ONLY YOU

  2. NO N.Y.

そもそもこのイベントは「高崎でボウイづくしの1日」を謳うだけあって、「BOOWY または BOOWYメンバーの関わる楽曲」を演る縛りがある。
なのに、ゲスト扱いとはいえ、演奏した全10曲中3曲がBUCK-TICKの楽曲、1曲がROGUEの楽曲であった。

ROGUEの楽曲を演奏したのは、「SPECIAL MEMBERS」の3分の2がROGUEのメンバーだったから。折角ROGUEのメンバーと一緒にやれるのだから是非にとじぐろ氏が御二人に願って実現したという。

BUCK-TICKの楽曲を演奏する経緯説明は香川氏の口から。
友達が死んでしまった」と。
同郷、同業者なので、BUCK-TICKのライブを観に行ったり、またどちらもお酒好きということもあって、酒を酌み交わす機会も結構あったたようで、その友達の追悼に、と。
「ROGUEもやるんだから、いいだろう?」と仰って。
あと、じぐろ氏の本名が「イマイアツシ」氏と仰るそうで、「ちょっとは関係ある」ということで。(笑)

緊張もあったのか、最初の「My Eyes & Your Eyes」の途中でじぐろ氏が少しだけ歌詞が飛んでしまったというアクシデントがありつつも、敬意を持って終始丁寧に歌い上げ、且つ愛のこもった演奏をされていらっしゃいました。あれはまさしく鎮魂の調べでした。
同業者なりの、こういう悼み方もあるのだな、と。
天国の櫻井氏に届けとばかりに天を見上げ天に手を伸ばすその姿に胸が熱くなりました。まさかじぐろ氏にうるっとさせられるとは……!不覚!!
中には泣いている観客もいらっしゃったな。曲が終わった後に、「きっと天国のあっちゃんも喜んでくれているよ」と涙ぐみながら呟いていた私の斜め前の、恐らくBUCK-TICKのファンでもあるのだろう観客の姿が印象に残りました。
このことで、BUCK-TICKファンの心が少しでも慰められればいいなと、心より思います。

【名は体を表しているのか】

今回、高崎に向かう電車の中で、「拝啓ボウイ様」というタイトルについてふと思った事がある。
拝啓」とは手紙の書き出しに使う言葉で、普通は手紙の相手先がそれに続き、その後に本文がある。だけど、このイベントの目的は「高崎からうまれた「BOOWY」をリスペクトし、BOOWYの楽曲を通じて演奏者/観客/BOOWYファン/高崎市民が一つとなって盛り上がり、『音楽のある街 高崎』の価値を高めること」だ。
勿論、「拝啓ボウイ様」というタイトルは素晴らしいと思うし、見た人の心を掴む秀逸なキャッチコピーだと思ってる。思ってはいるけれども、イベントの趣旨とタイトルが合致しているかというと……首をかしげざるを得ない
実際、昨年じぐろ氏が「この電波がL.A.に届いたらマズいんです」というネタを何度も繰り広げていたように(笑)、別にBOOWYやBOOWYの元メンバーに宛ててやってるイベントではない。むしろ、もし仮にこんなイベントをやってると聞きつけたメンバーが来場したり、正式にユイが後援に入ろうものなら、(個人的には)逆に興ざめする。
最低限の大人の事情に配慮するのは当然だが、公式やメンバーの目を気にするようになったら制約事項が多くなるわ、必要以上の配慮忖度が働くやらでつまらないものになっていくと思っているので。勝手に盛り上がっているのを公式やメンバーは「あーなんかやってるね」とうっすら横目で眺めているくらいの距離感が、こういうイベントには丁度いい

【櫻井氏への『手紙』のようなもの】

だけど、今回BUCK-TICKの3曲を演られていた時間は、まさに「拝啓 天国の櫻井敦司様」だった。

イベントの趣旨が趣旨なので、あの場に足を運んだ観客は全員「BOOWY目当て」だったはず。でも、BUCK-TICKの楽曲が3曲入ったことで、その分BOOWYの楽曲が減ってしまったのに、それに文句を言う人は誰もいなかった。(「もっと演って~!」というアンコールの声は上がっていたが。)
いくら群馬で開催とは言え、BUCK-TICKのファンではない人だっていたろうに。誰のファンかどうかにも関わらず、みんなが彼の死を悼んでいた

ステージ上の演者だけでなく、それを聴いている観客も含めた全員が、あの時、へと旅だってしまった『彼』に想いを馳せていたのではないか。曲を聴きながら、それぞれが自分の心の中で『彼』への気持ちに向かい合っていたように思う。まるで手紙をしたためる前のように。

「こんなにも貴方を愛している人がいます」
「こんなに多くの人が貴方の死を惜しんでいます」
「貴方(達)が生み出したは、こんなにも愛されています」
「貴方はいなくなってしまったけれど、貴方のはみんなの心の中で生きています」
「貴方の歌が大好きです。歌っていてくれてありがとう
「貴方への愛と感謝が天に還った貴方に届きますように
「どうかどうか安らかにお眠りください」

そんな哀惜感謝の想いも共にのった音が、へと溶けていった
あのステージは、あの場にいた人々が彼への想いを込めた手紙をしたためた行為そのものだったと、私は思います。

追悼でBUCK-TICKの楽曲を演るという事前告知がなかったのも良かった。
事前告知すれば観たい人が観られるという利点があるけれど、反面、町おこし目的の集客イベントであるが故に、「人の不幸に乗っかって注目を集めようとしている」という批判が起きてしまう危険性もある。
『彼』の死からまだ間がなく、『彼』がいなくなってしまったことをまだ受け止め切れてないファンの中には、「もう少しそっとしておいてほしい」「お祭りの如きハレの場で大騒ぎしながら、軽々しく追悼されたくない」と感じる人もきっといらっしゃるだろうから。
今回のステージは、そういうビジネス臭めいたものを感じさせない、演者からは「友達」または「尊敬するボーカリスト」に対して、観客側からは「愛した歌い手」或いは「BOOWYをリスペクトしてくれていた後輩ボーカリスト」に対しての真心のこもった追悼であったと、私は感じました。
とはいえ、BOOWYのイベントで櫻井氏への追悼のために氷室氏のモノマネ芸人(という括りでいいのかな?)がBUCK-TICKの楽曲を演ったことに対して、そしてそれに心動かされた観客がいたことに対して、もし不快感を感じたBUCK-TICKファンがいらっしゃいましたら、申し訳ありません。
ただ、決して『彼』の死を軽々しく利用したようなステージではなかったことを、『彼」への愛と敬意が込められた歌と演奏であったことを、それだけはわかっていただければと願います。

【じぐろ京介 with SPECIAL MEMBERS】

さて、一応(?)主題の「じぐろ京介 with SPECIAL MEMBERS」によるBOOWY楽曲の演奏と歌にも触れておきたい。
(ものすごく独断と偏見に満ちているのはご容赦を。)

総括ベースの音が目立っていてよき。(私的感想)

最初の「MARIONETTE」を聴いて感じたのが「うわ~このベース懐かしくてたまらない!」だった。
ギター・ベース・ドラムの最低限の編成なので、それぞれの音がはっきりしていて聞き取りやすくはあるのだけれども、その中でも私の耳が拾ったのはベースの音色。ベースがとてもよく聞こえた。
昨年は永井氏も本田氏も大島氏もいて、昨年の「SPECIAL MEMBERS」の中でBOOWYの楽曲の演奏を私が聴いたことがないのは香川氏のみであった。だから昨年は、氷室氏がサポメンの皆様と作りあげたサウンドの原型が土台にあってそこに香川氏のギターが違う彩りを与える、というような感じだった(個人の印象です)。そのせいか、昨年はベースの音を私の耳が突出して拾うことはなかったし、「SPECIAL MEMBERS」の演奏に合わせて私の中の脳内氷室京介が歌い出していた。(唯一「眠りこむ前に」だけは歌ってくれなかったけど。)
だけど今年の音は全然違うことが私の素人耳でもわかる。私の中の脳内氷室京介が全く歌ってくれない。
だからダメというわけでは全然なくて。今年は今年でとてもよき
当然のことながら、ドラムは耳馴染みのある永井氏やチャーリーの音ではないし、ギターはDAITA氏でもYT氏の音でもない。全員氷室氏のサポメン経験者ではあるけれど、組み合わせ次第でここまで変わるのか!という驚きがあった。ギターソロなんかはまるで別物で、聴いていて楽しい。色んな解釈が聴けるのもカバーの醍醐味ですねぇ。

そんな「違う」音の中で唯一馴染みのあったのが西山氏の奏でるベースの音色。勿論、オリジナルのBOOWYの音色とは全然違うわけだけれども。松井氏のベースは無機質な感じがするが、西山氏の音はもっと温かくて包容力がある気がする。(全く音楽的知識がないので、超パーソナルな感想でごめんなさい。)
西山氏は最も多く氷室氏と同じステージに立ったミュージシャン。ということはつまり、それだけ西山氏のベースの音に氷室氏のファンが触れる機会も多かったというわけで。彼のベースが支えている演奏は、何だかとても安心して聴いていられる

唯一、御三方の演奏で「あれ?どしたん?!」と感じたのは「ONLY YOU」の出だしのみ。
欲を言えば「NO N.Y.」前の掛け合いをもう少しやりたかったかな。すぐにドラムが始まってしまって、それはちょっと残念。
でもそれ以外は、本当にいい演奏でした。短い時間でしたが、十二分に堪能させていただきました。

で、主役の「じぐろ京介」について。
当日のご衣装は4,980円だそうで。昨年よりもなんと千円もアップ
氷室氏の口癖随所に挟んだ吉野家の牛丼ネタと脊髄反射の速度で返す「サンキュッ」連発には笑わせていただきました。

そんなどうでもいいことはさておき、いやぁ相変わらず見事な(偽)氷室京介っぷり。細かすぎて観客側が氷室氏をきちんと履修していないとわからないのでは?というネタもあちこちに散りばめられており、氷室氏を好きすぎることがよ~くわかるステージングでした。大変研究熱心でいらっしゃる。
じぐろ氏のステージアクションで「あ、これあの時のツアーの仕草の完コピ」と感じたり、歌で「今度はこのツアーの時の歌い方かぁ」と思ったりと、見ていて飽きないし、本当に楽しい。
あと、氷室氏への深い深いリスペクトが根底にあることが伝わるから、何をやっても安心して笑えるというのは、観ている側にとってはとても大きい

DJダイノジ氏の出演前(だったかな?)に市長が登壇し、「来年もやりたい」的なお話をされていらっしゃっいましたが、本当に実現するといいですね。
もっとも、仮に来年あったとしても「じぐろ京介 with SPECIAL MEMBERS」が出演されるかどうかはわかりませんが。特に「SPECIAL MEMBERS」が!
とはいえ、あるかもしれない来年に向けて、血圧180超えと宣うじぐろ氏は、今からでも生活習慣の改善に努めていただきたいと、切に願います。健康大事
私も、相変わらずコピバンの正しい楽しみ方がわからないままですが、来年「SPECIAL MEMBERS」の再々登場があるのであれば、もしかしたらまた高崎にまで足を延ばすかも。なお、昨年同様の「SPECIAL MEMBERS」で氷室氏の楽曲を演るのであれば万難を排して馳せ参じます。(告知はどうかお早めに。)

あともう一つだけお願いするならば、もしこのイベントの紹介記事でじぐろ氏の写真を使用される場合は、でっかく「じぐろ京介」と記名していただきますよう。
じぐろ氏の責任ではないことは重々承知しておりますが、「拝啓ボウイ様」の紹介記事で、じぐろ氏の写真に名前が書いてなかったり、書いてあっても小さくて気付かれにくかったりしたため、「え、これ氷室さん?!今こんなになっちゃったの?!」「氷室さんがこんなに太っちゃったのかと思っちゃったじゃないか」などと言っている人々をチラホラ見かけたので。

ち、がーう!!それ、氷室氏じゃないから!じぐろ京介氏だから!」

ネタで仰っている人が大多数のようでしたが、中には真面目に「え、昔憧れていたのにショックです」「やっぱり人前に出て来ないと太るもんなんですね」というやりとりを交わしていた人もごく僅かですがいらっしゃってですね。
なんという風評被害……!!

氷室氏自身が最後に公に姿を現したのが7年前だし、それ以前もほとんど露出せずにいたので、昔ほんのちょっと好きだったな程度の人は最近の姿がイメージできなくて誤認してしまうのかもしれませんが。どうしてそういう人に限って事実確認をせずすぐにネットに書き込むのでしょうか。そうしてそれを見かけたアンチや野次馬が面白がって拡散するという悪循環……。
そんなわけで、もし記事でじぐろ氏の写真を使われるのであれば、是非大きなフォントで「じぐろ京介」と
伏してお願い申し上げます。


本当は、ボウイメモラビリア展にも行った話と、どうせ高崎まで行くのであればついでにと企画した「高崎市内BOOWY所縁の地巡り」の話も書こうかと考えていたけれど、思いの外長くなったし、区切りもいいので、一回ここで終わります。
こちらの話は、まだ書く気力が残っていたら、後でアップするかも。


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