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猛練習よりイメージトレーニングが効く!「脳を気持ちよくノセて」スポーツのスキルアップ方法

子どもにスポーツをやらせているが、運動神経が悪く上手くならない。

休まず練習をしてるのに、なかなか上手にならない。

子どもに、どんなアドバイスをしてあげればいいのか?悩んでいる。

親ならば、頑張っている我が子、成長した我が子がみたいですよね。猛練習も大切ですが、イメトレし脳を気持ちよくノセてスキルがアップする方法を教えます。


運動神経の良し悪しは脳で決まる


スポーツのスキルアップには、ひたすら繰り返し練習することが大切だと、されてきました。それは脳科学的に見ても正しいことです。

練習の初期では、意識的な活動にかかわる大脳新皮質、とりわけ前頭葉が活動します。そして練習を繰り返すと、この大脳新皮質の活動は小さくなっていき、代わって無意識的な活動にかかわる線条体や、小脳の活動が高まっていきます。そして、考えなくてもできるようになる。無意識化する。技になる。これが、脳が技を獲得していくプロセスです。

プロセスのなかで大切なのが、じつは「見る」ことです。

イタリアのリゾラッティーらによるサルの実験で「ミラーニューロン」が発見されました。言葉のとおり、鏡のような働きをする細胞です。リゾラッティーらは、サルのF5(前運動野の一部、運動のプランニングにかかわる脳部位)に電極を入れ、エサを取ろうとするときのニューロン活動を調べていました。サルがエサを取ろうとすると、F5がバリバリと活動するわけです。

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実験が一段落し、休憩。リゾラッティーらはジェラードを食べたのだそうです。すると、なんとそれを見ていたサルのF5がバリバリ。サルは手をまったく動かしていないのにです。手を動かしていないのに、手を伸ばしてエサを取るときに活動するのと、同じ脳細胞が活動したのです。

サル

それまで、「見て」分析するような入力処理用のニューロンと、運動プランニングや筋肉のコントロールなどにかかわる出力処理用のニューロンは、別物だと考えられていました。この結果は驚きです。

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私たちの脳には、目の前に入る人の動作や感情をも、写し取るシステムがあるということがわかったのです。

これがミラーニューロンです。

こんなしくみが脳にあるので、いわゆる運動神経がいい子は誰かのプレーヤの技を見ただけで、そのマネができてしまうのです。物理的あるいは心理的に近い立場のほうが、またマネたい思いが強いほうが、活動しやすいことが知られています。

ですから、「とにかく見ろ!」「必死で見ろ!」という子どもに対するアドバイスはじつは的を射ているわけです。

サッカーの技でクライフターン(サッカー選手クライフのフェイント技)というのがあります。当時は動画で見た人はほとんどいなく、写真からプレーを想像はするのですが、なかなか再現できませんでした。

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しかしクライフがやってきて、クライフターンを目の当たりにした多くのサッカー少年が、あっという間にできるようになりました。

「見ることは学ぶこと」それを可能にするのがミラーニューロンです。

運動神経がいいといわれる人は、このシステムが普通以上に発達していると考えられます。でも逆に気をつけるべきこともあります。ミラーニューロンが発達していればいるほど、相手の動作を脳が移してしまって、相手のフェイントに引っかかりやすいこともあります。

けど、スキルアップのための第一歩は、一生懸命見ることです。一生懸命に見て、大脳新皮質のミラーニューロンを活性化させましょう。


動画的なイメトレが有効


イメージトレーニングで浮かぶ画像にはレベルがあります。静止画のレベルなのか、動画のレベルなのか。ものを考えたり、段取りをしたり、しばらく情報を保持したり、そういう高次機能の中核であるワーキングメモリー(作業記憶)には、音韻ループ(音のメモ)、視空間メモパット(絵のメモ)、エピソードバッファ(ビデオクリップ)の3つのバッファがあります。

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なかでもエピソードバッファは、いわば「YouTube」のような動画的に絵が浮かぶもので、海馬が強く関与し、強い力を持ってます。

イメトレするなら「絵が動く」までイメージさせることが有効です。

子どもにいろいろな視点を持たせるには、経験が必要ですが、経験で得られるのは主に自分目線です。自分目線だけからでも、そのほかの視線をつくり出せます。車のアラウンドビューモニターです。

アラウンドビューモニターは、車の真上にカメラがあるわけでもなく、横のカメラの映像情報だけで、上から見た画像をつくっています。それが脳でもできるのです。頭頂連合野がその仕事をします。頭頂連合野にその仕事をさせるためには、一種の気づきが必要です。観客席からピッチを見た画像を試合中にもできるのか「鳥の目線」です。

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一方で、まったくわからない子もいます。そういう子には、いろいろな角度から撮影した画像を見せると早いでしょう。サッカーのシュミレーションのような、ひとつのプレーをいろいろな角度から、眺められる教材とあわせて説明するのも、有効な方法だと考えられます。

大切なのは「しっかり見て、しっかりイメトレを行うこと」


脳をノセてくれるイメトレの威力


ただひたすら練習を繰り返すよりも、あいだに具体的な動作をイメージするトレーニングを、はさんだほうが効果的です。たとえばダーツを投げる訓練では、毎日投げづつけるグループより、1日おきに投げ、あいだの日には「脳で投げる」つまり、具体的に投げるイメージをトレーニングしたグループのほうが、成績が良くなることが知られています。

指でダーツを軽くつかみ、的の中心を見て、肩の力を抜いて、やや上向きの軌道を手首が描く。このような具体的にイメージしているときの、脳をスキャンすると、じっさいに投げているとき以上に、強い脳活動が現れます。脳にとっては、イメージすることこそがリアルなのです。

子どもがスポーツのスキルを習得するさい、

「見ること」「具体的にイメージすること」が大切です。

このことは、スポーツに限った話ではありません。勉強のときでも、やりっぱなしではなく、ちゃんと脳の中でイメージし直すことが大切なのです。ただ教科書を読んだくらいで、あるいは問題集を例題を見ながら解いたくらいで、「なんでできないんだろう?」などはおこがましい限りです。少なくとも、もう一度、脳で解くことは必須です。


正しい見方がイメトレ効果をあげる


NHKテレビで以前、小学生に速く走らせようという番組がありました。自分が走っているところをイメージし、そのときの脳をスキャンします。すると、視覚の処理にかかわる後頭葉や右の前頭葉が活性化しました。自分が走っているところを、ビデオカメラで見ているようなイメージが浮かんでいるのでしょう。その後、東海大学で高野進氏(400メートル走日本記録保持者)の指導により、短距離走のトレーニングを1週間してもらい、そこでは筋肉の使い方、姿勢の傾斜具合などの実際的なトレーニングのほか、体の部位を動かすイメージのトレーニングも含まれていました。


練習前は、自分の走る姿をビデオで見るように、離れた視線からイメージしていたのに、練習後では、じっさいに走る自分自身の立場でイメージできるようになったのです。できるようになってから、「走り」を見ると、ミラーニューロンがさらにしっかりと活動します。その人になりきり、筋肉がピクつくようにイメージできれば、その人の技を次に見たときには、ミラーニューロンがしっかり働きます。

また、相手のいるスポーツなら、自分から相手を見る「自分目線」も大切ですし、相手から自分を見る「相手目線」も必要です。サッカーなど集団対集団のスポーツは、フィールドを上から見たときの「鳥の目線」です。


見るだけで集中力は鍛えられる


勝負強さには、イメージトレーニングも欠かせません。相手と向き合うスポーツでは、とくにそうです。サッカーは一対一で相手と対峙するスポーツ。相手からの目線を意識してイメージできていれば、勝負強くなるはずです。そこに気持ちを込められれば、結果が変わってくるのは、当然でしょう。

子どもに集中力をつけたければ、「しっかり見させる」あるいは「着眼させる」ことが必要です。集中すると、眼野と頭頂葉の一部の上頭頂小葉などが活動します。

でも、集中力がない子に「ここをジーっと見てなさい」と言ってもできない。わたしたちは、1か所を見るとき、静止しているようで、じつは眼球を細かく動かしているので、一点を見るより、動いているものを見るほうが楽なのです。好きな競技の、好きな選手のプレーなら、おのずと集中して見るでしょうから、眼野の活動が高まるでしょう。それを利用して「見る」ことに慣れていけば、それ以外の人やものを、見つめられるようになります。

集中力を高める「合図」を決める(フォーカルポイント)

集中力を高めるテクニックのひとつ「フォーカルポイント」。これは、本番時、会場内のある一点をあらかじめ決めておき「ここを見れば集中力が高まる」「気が散っても、ここを見れば集中力が回復する」と自分に言い聞かせくといものです。

見る場所は、簡単に見られるところならどこでもいいですし、毎回変わってもかまいません。見る場所でなく、動作を決めるのでもいいでしょう。「空を見上げる」「天井を見る」「ゆっくり息を吐く」など、姿勢や呼吸で気持ちを切り替える方法を取り入れた動作なら、より効果的です。

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フォーカルポイントが効果を発揮するためには、「これを見たら集中すると決めたんだから、絶対集中できる」と本人が信じていなければなりません。普段から練習して「フォーカルポイントを見たら集中する」という習慣をつくっておく必要があります。家で勉強するときなどに、「気が散ったときに見るものを決めておこう」とアドバイスして、練習させておきましょう。

子どもにどんな、アドバイスをしていいかわからない人は、子どもの「安全基地」になりましょう。安全基地とは、何かがあった時に逃げ込める場所のことです。外に出てさまざまことにチャレンジし、もし失敗して傷づいたとしても、安全基地に逃げ込めば、そこには自分を温かく守ってくれるものがある。

安全基地となるのは、「親」です。つまり、親とは、人生の中で自分ができるかどうか分からない不確実なものに、チャレンジする時の基盤を確保してくれる人のこと。逆にいえば、親の役割とは子どもに安全基地を与えることにほかなりません。

スポーツにおいて、見ることは大切です。今はテレビ、YouTubeなどでいろいろな競技の試合などを見る機会が増えていますから、昔よりは子どものスキルは上がるはずです。


それでは、また。


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