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良い仕事をするために「感情をコントロール」する方法  【世界標準の経営理論14:感情の理論】

何を隠そう、私は感情的になりやすい人間だ。

今回は、そうした感情的になりやすい人にって、感情が仕事にどれくらい影響を与える重要なものか、また、感情をコントロールするためにはどうすれば良いか、について考えるきっかけとなる理論だ。

【読解】 3種類の「感情」

一般的に「感情」と呼ばれるものについて、経営学では3種類あるとされているる。それらの関係を見ていく。

①分離感情(個人レベル)
「怒り」「喜び」「憎しみ」「恐れ」「嫉妬」「驚き」といった、一般に我々が感情と呼ぶもの。

分離感情は、外部からの刺激・イベントにより生じるものである。例えば、親に怒られて、悲しい気持ちになる、といったこと。

一般に、ポジティブな外部刺激よりも、ネガティブな外部刺激の方が、心理的な影響度が強いと指摘されている。(ある研究ではネガティブな出来事の方が5倍も強い効果があるという結果も出ている)

なお、人によって、外部刺激の受け止め方には差がある(=認知評価に差がある)。その点について以下の帰属感情によって影響を受けるとされている。

②帰属感情(個人レベル)
人それぞれが持つ「感情の個性」。
「彼女は陽気な人だ」「彼は心配性だ」「うちの部長は怒りっぽい」

帰属感情は、物事を肯定的に受け止めがちな「ポジティブ感情」と、否定的に受け止めがちな「ネガティブ感情」に分けられ、ネガティブ感情の強い人の方が、ネガティブな外部刺激の影響を受けやすい。

そして、人は「分離感情」を何度も経験すると、その蓄積が「帰属感情」に反映される。

つまり、ポジティブな外部刺激を受け続けた人は、ポジティブな人になり、逆に、何度もネガティブな外部刺激を受け続けた人は、ネガティブな人(ネガティブなことに敏感な人)になっていく、とされている。

子育てにも繋がりそうな話である。

③ムード(主に職場・チームレベル)
明確な原因なく「なんとなく、そこに漂っている感情」であり、雰囲気。
「ここはいつも活気がある部署だ」「このオフィスは雰囲気が悪い」など

「嬉しい」「悲しい」などの分離感情の体験は、人の内面で起こるが、一方で、人はその感情を外に向けても表現する。

人の感情は、周囲の人たちとっては「外部刺激」となり、彼らの感情に影響を与える。つまり感情は伝達される

だから、ポジティブな感情表現を刺激として受けた人は、ポジティブな感情を抱きがちになる。

しかし、感情という非言語表現は遠くまで伝播しないという特徴があるため、経営者のように広い範囲の人に影響を及ぼす必要がある人は、表情、声のトーン、身振り手振りなどの非言語情報を使って、感情を企業の隅々まで引き渡らせるか考える必要がある。

【読解】 感情が仕事に与える効果

では、我々は組織に対して、常にポジティブ感情を持ち込むべきなのであろうか。

この問いについて、必ずもポジティブ感情だけではなく、状況によってはネガティブ感情も組織にとって重要な役割を果たすという研究成果も出ている。

感情研究の第一人者であるテキサスA&M大学のジェニファー・ジョージの論文によると、以下のような法則がある。

法則1 ポジティブ感情は、仕事への満足度を高めやすい
法則2 ポジティブ感情は、モチベーションを高めやすい
法則3 ポジティブ感情は、他者に協力的な態度をとることを促す
法則4 ネガティブ感情は、満足度を下げるのでサーチ(知の探索・深化)を促す
法則5 ポジティブ感情は、知の探索を促す
法則6 ネガティブ感情は、知の深化を促す

法則1〜3は、それほど違和感なく受け止められると思う。

一方で、法則4と5の関係はとても興味深く、現状の危機感や満足しない姿勢という意味では「ネガティブ感情」がプラスに働くことを示唆する。

しかし、それを乗り越えて新しい「知の探索」を進めていくには、ポジティブ感情が「多少の精密さ・厳密さを欠いても、より大胆で新規性の高いアイディアを求める」ことを促すことを示唆している。

健全な危機意識と、ある種の気楽さ、、、そうしたものがイノベーションを支える組織の感情的な雰囲気なのだと感じる。

著者も以下のように強調している。

”経営者、リーダーには、組織の現状に合った、適切なバランスの感情マネジメントが求められるのだ。”

しかし、ここでの疑問は、「そうはいっても、感情なんてマネジメントできるのか?」という点ではなかろうか。

結論を述べると、近年の研究では、人・組織の感情はある程度まで人為的にマネージできる可能性が明らかになっている。

【読解】 感情は「認知」でコントロールできる

心理学・経営学のにおける研究では、「感情をうまく取り扱える個人の総合能力Emotional inteligence(EI)」が注目されている。EIが高い人ほど仕事のパフォーマンスが高いという研究結果も示されている。

EIの中でも特に注目されているのが「感情表現」だ。

感情表現の代表格といえば「笑顔の効果」である。「笑顔」は周囲への好影響を増やすことが研究から明らかになっている。

しかし、同じ「笑顔」でも、「作り笑い」と「本心から出てきた笑顔」には大きな差があることもわかってきている。

感情労働理論では感情表現を2つに分けて考える。

◼︎感情労働理論
①サーフェス・アクティング

外面と本心にギャップを持ったまま感情表現すること。「作り笑い」。

②ディープ・アクティング
自分の意識・注意・視点の方向を変化させることで、感情そのものを自分が表現したい方向に変化させて、それに合わせて自然に感情表現すること。

具体例だが、

飛行機のキャビンアテンダント(CA)が、理不尽な理由で起こっている乗客に対して、①だと無理やり笑顔を作るため心理的な負担が大きくなる。

しかし、実際にあるCAは「顧客の態度をどう捉えるかの認知的な視点をずらす」ことで、自然な形で対応することができた。

具体的には「その乗客が初めて飛行機に乗る人」だったと気づき、それをわざと強く意識した。「初めて飛行機に乗る乗客」という認識を起点とすることで、結果としてその乗客に対する感情を「初めての経験だから不安でこのようにイラついているのですね、かわいそうに」といった「同情」へと変化させたのだ。

まさに、「この事態は、別の角度からはこう解釈できるのではないか」などと、考え・視点を意識的にずらすことで自分の感情を変化させるのが、ディープ・アクティングである。

サーフェス・アクティングとディープ・アクティングの比較について、以下のような研究結果が導き出されている。

◼︎ディープ・アクティングは、当事者の心理負担が軽い
 本心から表情を作っているため心理的負担が少ない。
◼︎ディープ・アクティングは、効果が周囲へ波及しやすい。
 取り繕った表情は見抜かれやすいが、感情に沿った表情は自然なため、周囲の人が影響を受けやすい。

感情そのものの抑制は難しくても、「相手の立場に立つ」「多角的な角度で物事を見る」といった「認知をコントロール」することは、日頃から訓練することができる。

そして、そのことが結果的に、「感情をコントロール」することにつながる。

感情は、精神論ではない、ということだ。

良い仕事をするために、物の見方を変える

「相手の立場に立つ」「多角的な立場で物事を見る」

まさしく、、、

これが出来ていれば、必要以上に感情的になることなく、冷静で建設的な会話ができるはずである。

そして結果的に良い仕事に結びつく。

以上が今回の理論から学びである。

ーー

ここからは余談です。

もちろん「感情的な人間」を自認する私でさえ、肉体的・精神的に落ち着いて状態や、(強い危機感や、時間、数字など)何かに追われていない状況の時は、そうしたスタンスで人と向かい合うことはできる。

しかし困ったことに、仕事をしていると常にここのような「仏状態」で居られる訳ではない。

ちょうど最近、360度評価をする機会があり、まさに私の現在の課題は「人の話を公平に聞く力が低い」「表面的なことに囚われて、物事の裏側まで理解しようとしない」ということであり、自己・他己ともに低い結果であった。

その改善に向けた行動計画を考えることになっているのだが、私が考えたのは、以下のようなことである。

◼︎仏状態で居られる時は比較的に人の話は聞けるのだが、問題は仏状態ではない時にどうするか。
◼︎こうした時は、認知のコントロールを効かせる前に瞬発的に脳が反応してしまうために、そのような状態になる前からの普段の行動習慣が大事。
◼︎今後半年間は、身の回りで起こる全てのことに対して、以下を習慣にする。
 ①ポジティブな面を見つけて、それを(相手がいれば)相手に伝える
 ②ネガティブなことは発言しない

半ばセルフマインドコントロールですが、「はじめは人が習慣をつくり、それから習慣が人をつくる。」という大好きな名言を信じて実践してみたいと思います。

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