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キュートガールが戦友になるまで。これからの未来に向けて

彼女と出会ったときのファーストインプレッションは、毛先パープルやん!かわよ〜!!!

だった。

仕事場で早々見ることのない個性的なスタイル。しびれた。
転職初日の朝会でのことである。

仮にここではパープルの髪色なので彼女のことを紫ちゃんと呼ぶことにする。

彼女とは10歳年が離れていて、転職した当初はそんな紫ちゃんのことを遠目から見ていた。
同じチームではありつつも、関わっていたプロジェクトが違ったのでなかなか話す機会がなかったのだ。

賑やかで、可愛くて、若いということもあり時折とっぴょうしもないことを言ったりするけど
がんばりやさんで、真面目で、素敵な女の子だった。

話しかけやすい雰囲気と、わからなくてもなんとかしようと努力する姿勢、持ち前の素直さで、いろんな人から可愛がられていた。
そのおかげで(?)仕事が増えたりもしていたけど、だからこそ信頼されていたとのだと思う。

彼女の素直さは、彼女の学びに直結していると思う。
そして普段の賑やかさとは裏腹に、仕事に対する真摯な態度がとても美しく、尊かった。

私が担当していたプロジェクトを紫ちゃんに引き継ぐことになったとき、もちろん真剣に聞いてくれていたのだけど、後になってから、
「あのとき、これはこういう意図でこういう対応をしてるって教えて貰えてすごく勉強になりました。引き継ぎってこうやってやるんやなって思いました。」
というようなことを、そっと伝えてくれた。

同じことを伝えても、そこから1を受け取る人、10を受け取る人、いろんな人がいる。
彼女は伝えた言葉以外の部分も、きちんと受け取ってくれるひとだった。

誰かの仕事を見て、聞いて、教えてもらって、
その裏にある理由や、伝え方、交渉の仕方、進め方、段取り。
言葉だけじゃない様々なことを、スポンジのように吸収していくのだった。

組織改編でチームが移動になったとき、紫ちゃんとまた一緒になった。
クソみたいな引き継ぎを担当者として受けながら、なんとか新しいチームを回していこうと彼女は頑張っていた。
わたしはそこで、リーダーというポジションになったが、名ばかりで彼女に助けてもらってばかりいた。
仕事への責任感という点で、紫ちゃんだけが頼れる存在だった。
自分がなんとかしなきゃ。そんな風に思ってくれているメンバーは、彼女だけだった。

自分の仕事をこなしながら、ほかの人のサポートもし、わたしの愚痴も聞いてくれた。
こんなに素敵な子、なかなかいない。
けれど、まわりのひとは彼女の頑張りに気が付かない。
若い頃から知っている、というのもあるのかもしれない。
彼女はもう立派な社会人で、チームをひっぱっていける存在なのに、髪の毛紫だったときのまま、みんな好き勝手なことを言ってくる。

わたしは歯がゆかった。
彼女の価値をみんなもっと理解するべきだと思っていた。
けれど、なにもできないままわたしは退職することになる。

ただでさえ回っていないチームから抜けると伝えた時も、紫ちゃんは
「湖晴さんが後悔しない選択をしてください」
と送り出してくれた。
こんなできた子。なかなかいない。


紫ちゃんとは今でもまだ連絡を取り合っている。
年に数回会うだけだけど、わたしは彼女のことが大好きで、彼女もわたしのことを慕ってくれる。
話すたびにどんどん成長していく彼女は、もう出会った頃のキュートガールではなくなっていた。
同じ目線で話ができる、大人の女性になっていた。
彼女はたくさん、感謝してます。
と言ってくれるけど、感謝しているのは私の方だった。
いつだって元気をくれた。
いつでも支えてくれていた。

彼女には夢がある。
夢を話すとき、紫ちゃんの瞳はきらきら輝く。
夢を叶えてほしいと思う。
仕事で疲弊した心は、本来の彼女の魂の美しさを隠してしまうけれど。
わたしは知っている。
彼女が美しいこと。
しがらみから放たれたら、自由に飛び回れること。だからこそ、彼女を疲弊させる環境を憎らしく思う。

先日、久しぶりに紫ちゃんに会った。
どんどん悪化していく職場環境にくらくらした。
彼女の尊い時間を奪わないでほしいと強く思った。

けれど、そこから飛び出す日も近いのだろうとも思う。
そこでの学びは終わったのだと、伝わったと思うから。
これまで彼女が努力してきたこと、積み重ねてきたことはひとつも無駄にはならない。
きっと今後の人生の糧になる。
それを糧にして、今度は自分を大切にできる場所を見つけてほしい。

そのための一歩は、自分が自分を大切にすること。

彼女は自分を責めてばかりいる。
なにもできてない。なんて。

でもそんなことはない。
頼れるひとのいなかったあの場所で、私を支えてくれた。
だからこそ、私も報いたいと思う。

君は存在しているだけで、価値があるよ。
だってわたしは、君のことが大好きなんだから。




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