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【技術士】送電容量拡大に向けた取組

R5年度の問題に取り上げられたテーマです。
試験の振り返りとして、このテーマについてにまとめます。

下記の経済産業省およびOCCTOのサイトを参考にしています。

背景

2030年の再エネ目標の達成や2050年のカーボンニュートラルを実現するためには、再エネの大量導入を支えるための送配電網の整備や系統安定性の確保が重要となる。そのためには、可能な限りコストを抑えつつ必要な投資を着実に確保していくことが不可欠となる。
コストを抑制するための取り組みとして
・既存系統の有効活用を着実に推進
・調整力を確保するための蓄電池等の設置
・マスタープランに基づく計画的な系統整備

が想定される。

既存系統の有効活用

電力ネットワークの次世代化は上記の3項目が軸となっていますが
ここではこれらのうち既存系統の有効活用について書いていきます。

日本版コネクト&マネージ

再エネ大量導入に伴う送電線の増強には時間を要する。早期の再エネ導入を進めるために、既存系統を最大限活用するための運用方法の見直し(日本版コネクト&マネージ)が行われている。
以下、具体的な取り組みについてまとめる。

①想定潮流の合理化

一般送配電事業者は、系統の潮流を想定し空き容量を算定している。
従来は、全電源をフル稼働させた条件にて空き容量の算定を行っていた。(いわば最悪条件)
接続されている電源がすべてフル稼働することは稀であり、同じエリアに需要が存在すれば、潮流はその分差し引かれる。
このように発電所の稼働と需要を考慮した精度の高い潮流想定に基づいて空き容量を算定することで、空き容量の拡大を図る。

②N-1電制

 数(N)ある設備のうち1台が故障(-1)することをN-1故障と呼び、N-1故障が起きても電力供給に支障を起こさないという考え方をN-1基準と呼ぶ。
送電線が停止する事故は、落雷のような自然現象や飛来物などが原因で一定の頻度で発生する。
このため、ほとんどの送電線はN-1基準に基づき1回線が故障しても、もう1回線で送電を継続できるように2回線以上で構成されていて、1回線分の空き容量を確保して運用されている。
この空き容量を通常時の運用に使用し、故障時には、電源遮断もしくは出力制御することで設備を有効活用する方法を「N-1電制」と呼ぶ。

③ノンファーム型接続

系統に接続された電源は需要や気象条件によって出力が変わるため、送電設備の容量上限まで使用している時間は限られている。
この空き容量を活用し、新しく電源を接続する方法をノンファーム型接続という。
ノンファーム型接続は、既存容量に空きが無くても設備増強を行わずに接続することが可能になる。一方で、平常時に空いている容量の範囲で稼働することになるため、空き容量が無くなると出力制御が行われる。

ダイナミックレーティング

送変電設備は、想定使用条件の下での電流容量を算出し、その容量を下回る運用容量で使用される。
ダイナミックレーティングは送変電設備の状態を常時監視し、現在の状況に合わせて運用容量を変化させて運用する技術である。設備の新増設を伴わずに低コストで実質的に電流容量の増加を図ることができる。


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