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2020年の映画ベスト10

 映画産業にとって受難の年となった2020年でしたが今年もさまざまな傑作がスクリーンやディスプレイを賑わせました。劇場公開作とオンライン配信作の中から今年の10本を紹介します。

1.燃ゆる女の肖像

 2020年は『燃ゆる女の肖像』ためにあったといっても過言ではありません。今後長く語り継がれるマスターピースとなるでしょう。どれだけ言葉を尽くしてもこの映画の美しさを語ることはできません。この映画がたくさんの人に愛され、社会に影響を与え、触発されたクリエイターたちが次世代の傑作を生み出すことを願っています。

2.バクラウ 地図から消された村

 私の中でワンツーはこの2作になるだろうなあと年初には思っていました。鮮烈で、オリジナリティに溢れ、カルト的で、普遍的な魅力を備え、私が映画に求めているものが全て詰まった何者にも代えがたい傑作です。監督のデビュー作「ネイバリング・サウンズ」もあわせて観るともっとよく分かるのでどこかで上映してくれ~。壺屋めり先生の記事をぜひ参考にしてください。

3.エマ、愛の罠

 チリの天才パブロ・ララインが世に放った新作は、性、愛情、ダンス、政治、暴力などさまざまな要素が入り組んだ魅惑的な映画でした。ちなみに彼の次作(主演クリステン・スチュワート)は撮影前にもかかわらず既に日本配給が決まっています。やったね! パブロ・ララインについて書いたnoteはこちら。

4.はちどり

 たった1館からスタートした小規模映画が4ヶ月にわたるロングランで最終116館という歴史的快挙を成し遂げました。ミニシアターの運営が困難な時代にあって真に人々の心を揺さぶる映画はどこまでも広がっていくという好例となりました。

5.タイム

 「2020年を特徴づけるアート作品10」の3位にランクインしていることからも分かるように、米国を侵食する問題を美しい映像で呈示したドキュメンタリーがこの「タイム」です。あまりに完成度が高く一度観たら心から離れません。話題にしている人がほとんどいなかったのでどうしてもここで紹介したかったです。Amazon Primeで配信中。ちなみにギャレット・ブラッドリー監督の次作は大坂なおみ選手のドキュメンタリーです。

6.ハーフ・オブ・イット 面白いのはこれから

 あ~もう大好き! すべてが愛おしく、熱く、面白く、誰もが自分に引きつけて考えさせられ、社会的にも重要な意味を持つこの作品を2020年に観られたことはただただ幸せでした。

7.行き止まりの世界に生まれて

 2020年最大のイベントである米大統領選の鍵を握ったのが「忘れられた工業地帯」ラストベルトでした。ドキュメンタリー映画のカタルシスは対象と冷静に距離を取っていると思っていた撮影者がいつしか対象と渾然一体となり変容していくというその芸術的瞬間にあると思っています。この映画はまさにその瞬間を垣間見ることができ、その意味でも大傑作でした。

8.異端の鳥

 昨年からこれほど公開を心待ちにし皆さんの反応を楽しみにしていた作品はありません。映画の作り手なら誰もが「ああこんな場面が撮れたらなあ」と羨むような究極の独創性、危険で誘惑的な魅力に満ちた作品でした。

9.国葬/粛清裁判/アウステルリッツ

 セルゲイ・ロズニツァ全作観ている大ファンとしては今まで1本も日本公開されてこなかったのが不思議なほどでしたがついにドキュメンタリー3本が日本に紹介されました。少々取っつきにくい題材にもかかわらず多くの人が足を運んだおかげで今後もっとドキュメンタリー映画が配給されることと思います。満席嬉しい~!

10.ひとつの太陽

 度肝を抜かれました。陰惨で救いのない話のように思えますが、自分ではどうしようもできない不条理や対立する価値観のぶつかり合いをこれほど誠実に描いた作品もありません。これがアカデミー賞台湾代表に選ばれたことも含めて台湾映画の底力を見せつけられました。

おわりに

 今年は劇場公開が難しかったこともありオンラインで話題作が配信されることも増えました。この種のベストテンは劇場公開作のみとしている人が多いと思いますが、私も迷った挙句今年からオンラインを含むことにし、『ハーフ・オブ・イット』『ひとつの太陽』(Netflix)『タイム』(Amazon)の3本を入れました。

 近年のドキュメンタリー豊作の流れを受け今年も素晴らしいドキュメンタリーが多数公開され、その中から3本を選びました。他にも『ハニーランド』『私はあなたのニグロではない』『彼女は戦場で生まれた』『ようこそ、革命シネマへ』など観てよかった作品ばかりです。

 『ダンサー そして私たちは踊った』と『ロニートとエスティ 彼女たちの選択』も入れたかったよ。。。来年もたくさんのいい映画と出会えますように!


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