吾輩は童貞である。魔法使いになる気はまだ無い。⑯マッチングアプリ編その3

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これは魔法使い化の未来に抗う、アラサー童貞の記録である。


筆者スペック

身長:160後半
体型:確定申告中の不摂生が祟り怪しい
学歴:私立文系
職業:税金関係
スポーツ経験:バドミントン、水泳
趣味:映画鑑賞(ハリウッドからクソ映画まで)
世話になっているもの:モンスターエナジー

登場人物紹介

ベビー
たまたま俺に彼女できた報告をしたばっかりに、今に至るまで俺の無能童貞恋愛相談を受け続けているかわいそうな童顔の友人。ドラゴンボールGTには出ていない。圧倒的な恋愛強者でもあり、俺を本格的に恋愛戦場に引きずりこんだ元凶の一人でもある。④マッチングアプリ編その1に登場。

その加工に何の意味があるのか?

つくづく分からんのだが、なぜプロフの写真を加工する女の子がいるんだ?そりゃ彩度上げるとか肌を綺麗に見せるくらいは誰しも多少はするだろうが、時空を歪めるレベルの加工をして一体誰が得するんだよ。

身バレが怖い?半端な覚悟で入ってくるなよ…マチアプの世界によぉ!!

マッチ率を上げるため?男ってのは俺が知らないだけで明らかな加工に向かっていくような飛んで火にいる夏の虫だらけなのか?写真と実物の落差が大きければ大きいほど気持ちは離れていくってもんじゃないのか?

少なくとも、自分をよく見せるとかじゃなくてもはや偽ってるような人には俺は惹かれない。人に誠実さを求める前に、まず自身が誠実であるべきだろうよ。

エグめのパネマジでガッカリするのは風俗だけでいいわ。

話が逸れたが、今回俺が出会ったのは、加工抜きでも美人だったのである。

…いや、なぜ加工した?

ラウンド1:歪んだ時空を正しても

今回の女の子のことは、カラコン(27)と呼称しよう。

「プロフの写真の目が綺麗だ」と褒めたらカラコン装着が発覚した。

カラコンは自分の黒目が小さいことにコンプレックスがあるらしい。いや…女の子の三白眼ってめっちゃ良くないですか?(雑食)

これまでのマチアプ戦歴的に、美人様はそもそもマッチしないか、マッチしたところでシカトこかれるか、返事が返ってきても塩なことが多かった。ただ、恋愛市場における女の子は圧倒的に売り手であり、(プロフ写真を見る限りでは)美人ならそれだけ男からのアプローチからも多いだろう。井の中の蛙改め、大海のオキアミである俺では、クジラに太刀打ちできる可能性は低い。仕方のないことなのだ。

だから、メッセが続いたのもそうだし、デートの誘いに応じてくれたことに、俺はすっかり浮かれていた。

初回デートは都内某所のパンケーキ屋さん。

待ち合わせに現れるカラコン。

流石に写真は不自然ではない程度に盛っていたのだが、加工バフがない状態でも綺麗な子で、俺の心臓は不自然に跳ね上がった。

緊張しすぎてのっけから道を間違えるポンコツムーブをかましながら店へ辿り着く。

俺「予約していたケツアナゴ(筆者)と申しますが」
何かに気づいた店員のおばちゃん「ケツアナゴ…様…え~と…当店のご利用は初めてですか?」
何かに気づいた店員のおばちゃんに気づいた俺「はい(断言)

そう。俺は前日同じ店で別の子とお茶していたのである。

──しょーがねーだろ予約取りやすくて美味しいんだから。

そんなやり取りをしつつも俺はカラコンと席につき、話を始める。

……

………

カラコン「今まで何人と会ってきたんですか?」

──なんて答えるのが正解なんだこれ…

俺「二人ですね(大嘘)」

引かれないラインが分からないので、少なめに答える。「無い」というのは自分の男性的価値を過少申告する行為だろうが、多すぎてもそれはそれで必死感、あるいは遊んでる感が出そうだと思ったのだ。

カ「どんな女の子がタイプなんですか?」

──なんて答えるのが正解なんだこれ…

俺「うーん…まあ、綺麗系でよく喋る人?みたいな」

目の前の人から特徴が外れないように答える。まあ、定石だろう。

俺「逆にカラコンさんはどんな男性がタイプなの?」
カ「背が高くて筋肉のある人!まあ、理想ですけど」

どうやら、定石だと思っていたのは俺だけだったらしい。

俺「全然違うじゃん、なんでマッチしてくれたんだよ(半笑い)」
カ「顔」
俺「そんな身も蓋も無い…」
カ「でも実際そうじゃないですか?アプリだと見た目が良い以外に選ぶ要素ないですって」

前も少しだけ言及したような気もするが、俺は会う上で女の子の見た目にそこまで拘っているつもりはない。円滑にコミュニケーションが成立するかの方が遥かに大事だと思っている。俺がモチベ激高だったのは円滑にコミュニケーションが成立する上に美人だったからだ。見た目が最低限のラインを(その基準が人によって変わるのだろうから信用できはしないだろうが)越えてくれれば後は中身の方が大事だろう。美人とはあくまでオプションである。リアウイングなんかなくても車は走るんだよ。

女の子の場合、特に美人の場合、群がる男が無数にいるのだからビジュアルを高いラインで足切りするのは当然と言えば当然なのだろうが。

ん?俺今相当調子に乗ったこと書いてないか?

俺「まあ、そうかもしれないね」
カ「ていうかケツアナゴさん、写真より実物の方がカッコいいですから。写真があれじゃもったいないですよ」
俺「そりゃあ…ありがとう」
カ「私がもっと良い写真撮りましょうか?」

嫌なデジャヴを感じて反射的に断ってしまった。俺は愚かだ。

カラコンとは隣接業界で働いているということもあり、仕事に関する話も弾んだ。というかここが一番盛り上がったかもしれない。今まで自分の仕事を説明するのが難しかったので、多少なりとも理解してくれるのは有難かった。

カ「営業やってるのである程度話してれば相手がどういう人か分かるかもしれないです」
俺「じゃあ俺はどういう人だと思う?」
カ「初対面の人としてすごく気を遣ってくれてるのが伝わるけど、仲良くなったらもっとズバズバ斬りこんでくるんだろうなって感じ
俺「図…図星…」

旦那ァ、こいつは強敵ですよ。

ラウンド2:その言の葉に理は在るか

なんだかんだで2回目のデートを取りつけることに成功した。次は夜、居酒屋デートである。お互いの提案した店の両方に行ってみようということになり、無事その日を迎えることに。

──自分から店を提案してくるなんて、ボッタクリでなければ脈アリでしかないんじゃないか?

分からん。童貞は女の子の脈アリサインなんかよほど直接的でなけりゃ分かんねーんだよ。詳細は⑪初彼女編その1を参照。

まず、言っておくことがある。付き合う前のデートでは、絶対に普段のペースで飲むんじゃねえ。

俺は酒が大好きだが、そこまでアルコールキャパが大きくない。そのくせジュース感覚でグイっといってしまうので、酔いが回るのが早い。酔いが回るのが早いとどうなるか?俺の場合頭が回らなくなる。夜遅くまで残業してる時と同じくらいのパフォーマンスしか出なくなるのだ。そりゃ悪手だろ、蟻んコ。

とはいえ、大した粗相もなく、致命的な破綻もなく会話を続ける。

いつからだろう。女の子との会話で沈黙が生まれてもキョドらなくなった。むしろ「そっちから話してみろよ」くらいの雰囲気で堂々としているし、その方が確実に印象に良い。必死感を出さないのは、きっと大事なことだ。

だが、それでも俺は童貞である。内心ずっと必死なのだ。

カ「私、親友がいるんですけど超可愛いんですよ!ぶっちゃけあの子がいれば他何もいらないくらい仲良くて!ケツアナゴさんに見せてあげたいくらい!」
俺「そうなんだ。じゃあ、見せてよ」
カ「ちょっと待ってくださいね!最高の一枚を探し中~」
俺「そんなに気合入れるんだw」
カ「当たり前じゃないですか!ほら、これです!」
俺「(いや…微妙だ…)ああ~確かに!いいね!」

読者諸君に問う。カラコンのこれはどういう意図だったのか?

というか、女の子と会って話をしている時にその女友達を前面に推し出されてもどういうテンションでいればいいのか全く分からない。ある種自分を売り出すフェーズで自分以外の商品の紹介されても困るというか…、俺に興味が無いのかな?という気さえしてくる。童貞を拗らせすぎだろうか。

友人のベビー曰く「何も考えてないよそれ」ということだったのだが。

カ「私、家族と友達が一番大事なんです。次に仕事。その次に彼氏って感じかな。仕事と彼氏なら仕事を優先します」

嫌なデジャヴを感じて心臓が跳ねた。…いや、そりゃ仕事かなぐり捨てて俺ンとこ来られても困るんだけど。

カ「私、一人時間大好きなんですよ。だからそれは彼氏ができてからも確保したいんです。友達と会う時間も欲しいし、仕事も疎かにしたくないんです。無理のないペースで恋愛していけたらいいなって。まあ、本気で人を好きになったらその限りじゃありませんけど

アルコールで錆びついた俺の頭に、カラコンの言葉が突き刺さる。

読者諸君に問う。カラコンのこれはどういう意図だったのか?

ベビー「わかんないけど都合の良い彼氏が欲しいってことか?」
俺「そういう性格の悪さは感じなかったけどさあ」
ベ「ウジウジ考えてるけど、結局お前がそいつを好きかどうかじゃないの?そのスタンスに納得するなら付き合えばいいし、納得できないなら会うのやめたらとしか。まあ付き合う前の理想論なんてあくまで理想だし、そこから変わる可能性なんていくらでもあるけどね」

…正直、カラコンに関しては同調する部分の方が多い。相容れないのは唐辛子の好き嫌いくらいなものだ。いや…だが…しかし…

ベ「前から思ってたけどお前男脳すぎるよ。女は理屈じゃないんだぞ
俺「いやマジでよくわかんないんだよね。恋愛的には人里に降りてきた化け物に等しいんだよ俺は。女性に対しては理解に努めるのではなくそういう生き物だと受容することが必要だって解釈でいいの?」
ベ「うーん…身も蓋も無いことを言えばそうなんだけど、恋愛のれの字もわからん男にそれを言うと余計歪んじゃいそうで言いたくない」

俺「男と女として相対してると思ってたから、そこに別の女の子の話振ってくるとか彼氏の優先度低いみたいな話されたら俺に興味ないんじゃないかと思っちゃったんだよ。大親友で~性別違えば絶対彼氏にしたのに~とかその友達されいればあとは最悪なんでも~とか言われたら気にするって」
ベ「過敏になるのは分かるけど理屈で考えすぎなんだよお前は!もっとその理想に近づくようにしなきゃ!とか、なんで一人の時間が欲しいって強調するようになったんだろう?とか、もっと感情に寄った意見はないのかよ?」

ベ「全てにおいて0か100かなんだよね。こいつはこう考えてる→そういう意味に違いないってなりすぎ」
俺「会話って言われた相手はどう考えるどう感じるって考えながらしゃべるもんだと思ってたけど、それを向こうなりに考えててアレが出てきたんなら、案外皆の考える普通って俺が思ってるより前向きなのかな」
ベ「少なくともお前がどう捉えるかについては、その女は何も考えてないよ。全部打算とか理屈で物を言わなきゃいけないなら迂闊に口も開けないやんけ」

ベ「てか、普通脈のない相手の3回目のデートの誘いに乗らないから」

これが童貞の度し難いところである。これだけウジウジしているのに、まだ次があるというのだ。そりゃベビーも辛辣になる。

これは魔法使い化の未来に抗う、アラサー童貞の記録である。


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