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スーパー下戸が「よなよなエール」LPでビール好きな人たちの喪失感を知る

私が編集に参加している雑誌『Web Designing』(隔月刊偶数月18日発行)が、今月も発売になりました。

Kindle Unlimitedや楽天マガジンなどでも読めるので、ぜひお手にとってご覧ください。

今月の特集は「ネット広告2022」です!クッキーレス対策してますか?

今号の特集は「ネット広告」です。クッキーレスで広告はどうなるのか、マーケティングに関わる方にとっては気になるテーマではないでしょうか。また、運用型を中心に広告の種類と特徴がわかりやすくまとめられていますので、広告初心者の方にもお役立ていただけるのではないかと思います。

私が担当している小特集「Point of View」(P97〜)では、制作会社の方を対象にランディングページ(LP)制作のポイントやアクセス解析&改善などを採り上げています。

Web Designing 2021年12月18日発売号 [Point of View]成果につながる広告制作と改善

LPの事例はヤッホーブルーイング「マジ福袋 2022」

事例をご提供いただいたのは、株式会社アライバルクオリティーさんです。同社のWebサイトに掲載されている多数のコンセプチュアルな制作事例を拝見してお声がけさせていただきました。誌面でご紹介いただいたのは、株式会社ヤッホーブルーイングさんの「マジ福袋 2022」のLPです。

ヤッホーブルーイングさんといえば「よなよなエール」で有名なクラフトビールの会社さん。他にもインパクトある商品名のビールをたくさん販売していらっしゃいます。「マジ福袋」は、毎年11月頃に販売される年末年始向けのスペシャルセットの名称で、そのLP制作をアライバルクオリティーさんが2019年から担当していらっしゃいます。

みんなでクラフトビールを楽しんでもらうために、色々な銘柄を詰め合わせた”福袋”。毎年人気で売り切れ必至だそうですが、今年は特に初速がすごく、あっという間に完売し、追加販売するもやはり即完売と、例年以上の人気ぶりだったそうです。久しぶりに「みんなで飲める」気運が後押ししているのでしょうね。

コロナの影響と企業の発信

この取材においては、デザインの話ももちろん非常に面白かったのですが、外せないのがコロナの影響に関する部分でした。アライバルクオリティーさんが最初に制作された2019年のデザインは、いかにも年末年始、おめでたい雰囲気のあふれるビジュアルになっていました。ローンチは2019年11月ですから、新型コロナウイルスなんてまだ誰も知らない頃です。

翌2020年。一転して感染の流行が繰り返し起こり、忘年会新年会も自粛ムード。飲食店で酒類の提供が制限されたことで逆に家庭向けの通販は需要が高まっていたとはいえ、おめでたムードを押し出すのは時節柄ふさわしくありません。では、この時アライバルクオリティーさんはどんなコミュニケーションを企画したのでしょうか。

ここはぜひ本誌を読んでご確認いただきたいところなのですが、一つだけ挙げると、今年のボディコピーにある「2022年も、いつもと変わらない『乾杯』が そこにありますように」という部分。

これ実は、昨年のメインコピー「いつもと変わらない『乾杯』が そこにありますように」を受けたものだったんです(誌面では昨年のコピーも掲載しています)。祈るように掲げられた昨年のコピー、対して今年は、それを実現できた(できそうな)ことをみんなで喜び合うための言葉に感じられます。同じセンテンスを使いながら、受け取る側の状況が違うことで意味合いが違って感じられるのがすごいと思いました。

その嬉しさの発現から、逆説的に「みんなで飲めなかった時期の喪失感」のようなものが浮かび上がってくるのを感じました。

ビール好きたちの喪失感

ちょっと関係ない話で申し訳ないのですが、自分すんごい下戸でして。自分で飲むために買ったお酒は覚えている限りで5年ほど前のチョーヤの梅酒ワンカップが最後で、それも開けて数週間がんばっても飲みきれない有様で。年末年始に実家へ帰っても冷蔵庫にビールの1本すらない(買ってない)下戸一家の血を濃く受け継いでおります(父が存命の頃は1本くらいあった)。

会社勤めをやめてから10年以上、忘年会新年会歓送迎会のようなものに参加する機会はなく、もちろん飲み友達もいないので、飲食店でアルコール提供が禁止されたり会食が制限されたりしたコロナ禍中も、私にとってはただの通常運転な日々でした。

でもこのLPを拝見して、人と飲むことが好きな人にとって、人と飲めない状況は、きっと深い喪失の体験だったんだと思わされました。「飲むことが好き」は、私にとって一生体験できない感覚ですが、それを無くした時に大きな喪失が生まれることを、このコピーを通じて仮想的に体験することができた……気がします。少なくとも、その存在に気づくことはできたのではないかと。

残念ながら私は「マジ福袋」を買うことのできない身体ではありますが、広告に心を動かされる体験を身をもって味わいました。あと、広告独特のエッセンスの濃さってすごいな、ということも。

取材にご協力いただいたアライバルクオリティー様、ヤッホーブルーイング様、ありがとうございました!

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