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2023−10-14 海外展開に関するFAQs

最近、投資家の皆様や採用候補者の皆様とお会いする際に最も多く聞かれることが海外展開についてです。
本投稿は、海外展開を考えている起業家の皆様、海外展開の方針や現状に関心のある投資家の皆様、メドレーへの入社を検討している皆様に推奨します。



なぜ、海外展開をするのか?

メドレーの経営陣は、ミッションと卓越した成果を両立させることを目指して経営しています。ここでいうミッションとは「医療ヘルスケアの未来をつくる」ことであり、卓越した成果とは産業界におけるパフォーマンス指標である長期財務成績です。国内だけでは市場規模は限られることから、世界中で事業展開をしていくことが必要不可欠です。将来的に海外展開をするという前提で2019年から準備してきました。


なぜ、最初の市場がUSなのか?

包括的な理由になりますが、主な理由は3つです。

  1. 医療介護のエンドユーザーは高齢者が中心であり、市場規模規模は高齢者人口と相関が高くなります。メドレーでは、2020年〜2022年に市場調査を行ったところ、アジア及び英語圏ではUSが群を抜いて魅力的でした。日本の人材市場規模は現在、当社の単価換算ベースで約$2.6B。一方、米国の人材市場の規模は、約12.1Bであり、日本の約5倍です。為替変動が合っても相対的な魅力は高いままでしょう

  2. USは人種の多様性が高い国です。事業のグローバル化とは、エリア毎の法対応と多様なバックグラウンドのユーザーに受け入れられることが必要です。この観点でも、USを第一候補に選び、当社のグローバル化の能力を大きく進捗することは魅力的でした

  3. USでは職種の専門分化が進んでいます。会社は規模拡大に応じて、高度な専門性を必要とするポジションが増えていきますが、日本国内では適切な人材を見つけるのが困難なポジションもあります。過去の私たちは、会社の成長過程において、適切なタイミングで適切なレベルの知見を入れてこれたからこそ、現在に至っています。高度な専門性を持ったタレントが多いアメリカは、会社の将来の成長を想像する上で魅力的でした


成功確率はどの程度か?

日本企業、特にインターネットサービス企業群において、海外進出の成功確率は低い状態です。短期的に成功しているように見えても、長期で成功し続けている例は極めて稀なので、海外進出で大きく成功することについては「限りなく難易度を高いもの」として認識することが大切だと思います。その上で、難易度自体を下げ、難易度を正しく理解して対応することをします。例えば以下のようなものが挙げられます。

  • ゼロサム市場/勝者総取り市場"以外"を選ぶ。これらの市場では競合への警戒から過度な成長投資を選択しやすい

  • ストック性の高い事業/経年化により業績が伸びやすい業態を選ぶ

  • 売上が立つ事業を選び、早期にメトリック改善に持ち込む。数字の問題に早く辿り着くことが大切

  • 構造的に売上原価を下げる。開発費やオペレーション費用の削減のために、複数拠点の賃金格差や得手不得手を活用する

  • 販管費を下げる。エンティティ間のコミュニケーションコストを含めて、コストを可視化する。継続的に発生する無駄は定期的に削減する。IT投資を行うことも含まれる

  • 競争優位を意図的に作る。当社では、BtoBの王道である廉価な価格設定や顧客が楽に始められるようにするためのサービスの提供

  • 得意なやり方、日本で成功しているやり方を安易に捨てない

現時点で成功確率を明示することは困難ですが、すべきことをすべき時に徹底的にやり切れれば成功できるでしょう。経営陣としては、熱くなりすぎないようにしなければなりませんが、私個人としてはプライベートな生活の大半を犠牲にしてでもやり抜く覚悟です。


海外展開のタイミングはどう決めたのか?

タイミングについては、メドレーが海外展開されている状態をいつまでに実現しなければならないのか(Deadline)と組織や経営陣の能力と資金力(Capability)で考えました。前述の通り、挑戦し続けられる期間を長くする観点から、2020年からのスタートを予定していましたが、covid-19による渡航制限で難易度が高まったため見送りました。こういうコンサバな意思決定が、私の人生からドラマティックさを奪っています。

いつまでに実現しなければならないのか(Deadline)
社内の事業を成長市場の上に築くことは、上りのエスカレーターに乗るようなものです。当社は良い財務成績を出すために、成長市場を選んで競合他社よりも高い成長率を出せるように努力しています。
当社の主要事業における市場成長率がマイナスに変わるタイミングはいつでしょうか?今後政府の政策の変化や技術革新によって時期は変わっていくことになるでしょうが、2019年時点では「2040年頃から当社の事業市場の多くがマイナス成長になる」という少しネガティブな仮説を立てました。
補足すると人口構成の変化がない限り、国内の医療ヘルスケア市場は高齢者人口の減少に伴って衰退していきますが、医療ヘルスケア×ITというセグメントではもう少し成長期間が続くと見ています。

組織や経営陣の能力と資金力(Capability)
メドレーは、2023年から事業のテストマーケティングを開始しましたが、2019年時点から海外進出の準備を始めました。
2019年時点のメドレーは、日本の医療ヘルスケアの課題を解決しようというメンバーの集まりであったため、海外志向のメンバーが多い会社ではありませんでした。海外の事業をマネジメントできる人材も、事業メンバーが事業に専念できるようにするためのコーポレート部門も整っていませんでした。
2023年のテストマーケティング開始時の準備状況としては、決して万端ではありませんでしたが、時間が掛かるものは”ある程度”完了している、もしくは着手できている状態になっていました。


グローバル統治に対する基本スタンスは?

この章は、Entity-basedか、Function-basedかどちらを選択したのか?という話です。眠たくなりそうな話なので注意が必要です。

あなたが日本で会社を経営し、日本の上場企業を見なれているとしましょう。その場合、「会社」(=株主・取締役会(等)・執行といった1つのまとまり)を組み合わせてグループ経営を行う(以下、Entity-based)のがスタンダードであるかのように感じるかもしれません。Entity-basedは、子会社上場を想像すると分かりやすいでしょう。(説明がわかりにくいため、図を下に示します。)
USでもバークシャー・ハサウェイ等は、Entity-basedな設計にしていると聞きますし、事業種別が大きく異なるものを抱えるコングロマリットがEntity-basedを選択するのは合理的だと思います。

一方で大きな成功しているグローバル企業を見ていると、Function-basedな統治を行う企業が多いように感じます。例えばUSの巨大企業の日本支社は合同会社であることがあり、日本人が見ると違和感を持つかもしれません。これは、Function-basedな統治ではレポートラインの設計が重要であり、子会社の「取締役会」等での機関決定は限定的な役割となるからだと思います。

Entity-based、Function-basedは、どちらが正解ということではなく、双方にメリット・デメリットがあります。当社の場合、殆どの事業がソフトウェアであるため、プロダクトは違えど事業種別は類似しており、人事評価も事業別に大きく変える必要性がありません。Entity-basedのメリットも明らかにあるため、何度も繰り返し考えました。最終的に、当社ではFunction-basedな統治を行うことを選択しました。

※ややマニアックですが、ワールドクラスの経営という本には、この考え方が良くまとめられています。日本人的には馴染みが薄い概念なので、主要な著者である日置氏に連絡を取り、2023年から社外取締役に迎え、社内の一つひとつの意思決定においてベクトル上の問題がないかをレビュー頂くことにしました。

当社社外取締役日置氏作成

メドレーの海外展開の現在地は?

メドレーの海外展開は、まだまだ不完全です。回答は2023−10−14時点のものですので、特に事業サイドは軽微な方針変更が高頻度で発生します。

事業

  • Jobleyという「成果報酬型の求人サイト」を始めています

    • プロダクトは2022年半ば時点のジョブメドレーをフォークし、一時的に別プロダクトとしてやっています。これは改善スピードを優先するためです。全くの別プロダクトになって将来的に統合できなくなることを回避するために、稲本CTOがレポートラインに入ることは続けたいと考えています

  • Jobleyにおいて、求人を掲載する事業所が生まれ、採用が決まり、売上が小規模ながら発生しています

    • 日本では約50職種×47都道府県の求人を掲載していますが、USではまだ限定した職種×数州の求人としています

    • USでは州毎に異なるルールや商習慣があり、若干ですが日本よりも複雑です。USで成功しているプラットフォームは、エリア毎にシェアを高めていったものが多いです。そのため、50職種×50州の2,500セグメントとして捉えて、セグメントシェアを高めていきます

  • M&Aのソーシングは、緩やかですが進めています

    • 外部のアドバイザリーも入れ、自社でもソーシングを進めています。M&Aは国内優先です

    • USにおける経営体制が未だ脆弱なため、PMIの難易度の低いもの以外手を出さないようにする必要があります。先程のCapabilityの話にも繋がりますが、M&A対象は買収時点の経営陣が全て辞めたとしても何とかできる会社を選ぶべきです。(買収時点の経営陣を解任したことは、当社の短い歴史では未だありません)既にUSでもマネジメント・インタビューをした案件がありましたが、PMIのCapabilityの観点で見送りました

コーポレート

  • 期待値Meet以上

    • 同時に複数の事業に対して大きな投資をすることは経営の難易度を高めます。そのため、ここまで赤字での先行投資を続けていた医療PF事業を黒字での先行投資状況とすべく調整しています。これが実現できれば、売上対比の投資幅を決めるなどのP/L影響を限定する規律を設けても、それなりの事業投資ができます

    • 人事制度リニューアルやグローバル人事のデータベース構築などの大玉は、2020年から早めに進めて、完了させています

      • グローバルで成長を続けるソフトウェア企業の従業員のコンピテンシーを含める形で行動規範をリニューアルし、人事等級制度や昇給アルゴリズムを作りました

      • 人事データベースは、Workdayを入れて世界の社内タレントの状況が分かる状態を作りました。2021年の通期決算資料のP.8に控えめに記載されています。より使えるデータベースに変えていきます

      • 財務ITは、改善幅が大きいです。ビジネス・ファイナンスと制度会計がなめらかでなく、フォーキャスティングが人力対応なので、テコ入れしていきます

      • 運用面では課題も多く、運用しながら改善していくフェーズです

    • 外部の協力が、想定以上です。by nameで書くと趣旨と外れそうなので避けますが、プロダクトサイドでも力強い仲間が非常勤で参加してくれています。今週も15万人のオペレーションを統括していた方が日本に一緒に来てくれてグローバルオペレーションの設計を手伝ってくれました。海外進出経験のある日本の経営者の先輩方も色々アドバイスを気前よく下さり、感謝でいっぱいです

    • 事業の本格展開に向けて、コーポレート一丸となり、長期運用に足る制度・システムの計画を策定を進めています。イメージしやすいように図を貼ってみます。

MEDLEY GLOBAL ONEプロジェクトのアウトプットイメージ 
  • 期待値を下回るもの(事前察知できなかったものも含む)

    • Function-basedを志向したことや、時差を考慮したオペレーションの想定漏れがあったことで、小さな会社にとって重要な短期改善サイクルが十分に回せていませんでした。特に2023年上半期は、USで雇用している事業メンバーが事業に集中できる環境を提供できませんでした。(2022年後半〜2023年上半期での私の意思決定で最も大きな失敗はここかもしれません)
      2023年7月から私がUSに長期滞在する、知人づてで非常勤の協力者を集める、常勤VPを2名補強、SVP関与を高める、などの短期手当をしました。引き続き補強を進めており、USでのポジション、オフショアオペレーション拠点でのポジションがオープンしています

    • 経営陣・社員のUS戦に対する意識の醸成状況は、やや私の期待値を下回ります。メドレーの経営陣・社員の大半が日本人で、かつ「日本の」医療ヘルスケア分野の未来をつくることに取り組んでいるため、US戦に対する意識を醸成するには、少し時間が掛かりそうです。私はせっかちなので若干苛つく時もありますが、時間の問題なので心配はしていません

    • 業務レベルで英語が使えるメンバーを増やしたり、採用や社内メッセージで緩やかに英語学習を促したり、TOEICを社内で受けられるようにするなどの補強を進めてきました。コーポレート系人材に比べて、事業サイドの人材の補強が不十分であり、急いで補強を進めています

オフィス

  • USはBizDev系のメンバーを中心に配置し、開発は日本/第三国中心、事業オペレーションは第三国とする想定です。第三国は、目下、詳細検討フェーズです。BizDevチームは、開発、マーケティング、セールスなど多様な背景の業務経験を持つ人を含めたいと考えています

  • 2023年2月からワシントン州BellevueのWeWorkで業務を開始していました。エリア選定は、日本との時差考慮で西海岸、直行便がある、税制が無難、採用市場が大きい、治安が良好を基準にしました

    • ワシントン州は、Amazon, Microsoftだけでなく、MetaのAIチームなども増えています。この記事によるとSeattleの住民の約15%はコンピューターや数学の職業に就いており、この比率は全米で最も高い比率です。BellvueはSeattleから車で20-30分の所にあり、非常に治安が良く、洗練された街です

  • USでの売上発生を機に、2023年8月にオフィスを構えました。オフィス規模も30名ギリギリ入れるかな?という小さな規模です。メドレー社の創業期のオフィスを思い出させる小さなオフィスで、新鮮な気持ちを取り戻しています

Our Office at Bellevue, WA

メドレーの海外展開を一緒にやりませんか?

募集職種一覧の通り、メドレーでは沢山のポジションでリーダーを集めていますが、ページ下部にUSオフィスの求人も掲載しています。期待値調整のために記載すると、海外展開のポジションは、その他のポジションとは大きく異なります。ハリケーンの中のような目まぐるしい環境の中で、ワークライフバランスは仕事中心になるでしょう。
私生活を柔軟に調整しミッションや成果に集中できるリーダーを特に求めています。一定の権限を持つ創業社長を含む本社の経営陣、US担当の経営陣とともに、USでも本当に価値あるプロダクトを作って広めていくことや、USに存在しないような企業文化の組織を作っていくことは、きっとかけがえのない経験になると思います。
BizDevは多彩なバックグラウンドのメンバーが必要です。自身のキャリアにピッタリの募集が、募集職種一覧にない場合は、Open Positionにエントリーしていただければ幸いです。

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