見出し画像

旅のラジオを聴きながら①

出発当日、
いまからドイツに行くんだ。ドイツへ。

 朝5時に起き、シャワーを浴び、準備を済ませ6時30分のシャトルバスで空港へ向かった。チェックインは有人、無人と両方あり、私と友人は有人の方に並んだ。辺りを見ると日本人は少ない印象を受けた。チェックインを済ませて集合し搭乗口へ。しかし、整備のために少し時間が延び、11時ごろに出発となった。久しぶりの飛行機、楽しみである。

 座席に着くと、思ってたより広かった。昨年の夏はよく夜行バスで移動していたこともあいまって非常に快適に感じた。しかし、イヤホンジャックの場所だけは離陸してもなかなか見つけにくい場所にあった。

 飛行機の中はいろんなことができない代わりにいろんなことができると思っている。たとえば、飛行機の窓から見てる景色はほとんど変わらない。でも、どこかずっと見ていられる気がする。よく見ると動いてることがわかるからか、それとも自分がどこにいるのか確かられる気がするからか。そんなことを考えてもみる。

 また、ずっと暗い中飛び続ける飛行機をみて何故か自分の境遇と重ねてしまった。昨日は3月1日。世間的には就活解禁である。そんななか、ドイツという国へ行こうとしている。どこか、先が見えていなくて、どうしたいのか、どこへ進むか、何が正解なのかわかっていない。そんな状態が最近続いていたからこの景色がとても印象に残った。

 でも、そんな思考をよそに、飛行機はひとつの目的の地へ向かって飛び、風による抵抗を受けても進み続ける。そんな時、よく小さな目標を設定して少しずつ登っていくことが大切だと言われることを思い出した。でも、飛行機に乗り、真っ暗な中を進む姿を見て思うのは、はるか先にある目標があるからこそ動き続けることができるのではということである。小さな目標ももちろん大切だが、自分の性分と照らし合わせると目標が小さい故に、いつでもできるとたかを括り、結局手を出すのに時間がかかることが多い気がする。大学の課題とか、日頃の勉強がまさにそうだ。そうではなく、将来のはるか先にいる自分を見据えて、ただただ、どんな形でも進み続け、動き続ける方が夢には近づきやすいのではないか。ふと、そう思ってしまった。

 今でも、就活をした方がいいのか迷っている節は多くある。でも、こうしてドイツにくると決めたのは今しか得られない経験、見られない景色があると強く確信しているからである。自分を信じるのはこういうことなのかなと、ふと飛行機の中で思った。

 さて、今どこを飛んでいるかと思いフライトマップを見てみた。するとベーリング海峡を通って北極の上を通るらしいのだ。氷の大地、いわば地球の頭。きっとオーロラよりも高いところを飛んでいるだろう。不思議な感覚だ。行こうと思えばきっとどこへでも行けるのだ。

 そして、北極の大地は独特の雰囲気があった。黒から黒へのグラデーションがあったのだ。深い青、紫、青、そしてまた黒へ戻っていく。青は憧憬の色。それは青は手に入ひにくく、隔たりがある色だ。水も手ですくうと、青ではなくなる。青は空間の色だ。だから行きたくてもいけない、そんな憂いを帯びた色になる。そんな不思議な感覚を感じながら数時間は正面のモニターもつけず窓の外の光景に目を奪われていた。そう言えば、「北北西に雲と征け」第2巻に出てきた、雲が広がっていると思ったら氷河だったということを自分も体験して、どこか親近感と作品への愛着が強まった。

 機内食もどれもとてもおいしかった。オムライス、パスタ、間食のパン。しかし、特にしみたのは味噌汁。あの塩辛さが日本らしさを際立たせてよかった。

 また、映画「LIFE!」をみることができた。数週間で大きく成長する主人公の姿には3週間という間異国の地にいる自分にとって大きく勇気づけられるものだった。

 そして、ブルージャイアントシュプリームをKindleで読んだ。ドイツにドイツ語もわからない主人公、大が降り立ち、奮闘していた。難しい言葉でなくていい。簡単な文で言いたいことをいう。人を動かすのは言葉以上に姿勢であり眼だと思った。

 そうこうしているうちに14時間程度のフライトも終え、ドイツ、フランクフルトについた。現地時刻で17時。3月2日という1日24時間のなかで見れば7時間しか経っていないのだが。実は自分の3月2日は30時間くらいあったのである。さて、気候は日本とさほど変わらず、少し寒いくらい。バスでターミナル1へ移動し、19時12分発の電車でケルンへ、と行きたかったが遅れて出発、そして遅れてケルンへ到着。そこで乗り換えてデュッセルドルフへ行き、9時過ぎに到着した。そこでは語学学校の関係者の人が出迎えにきてくれていて、タクシーで宿先まで送ってもらえることとなった。滞在先は、現在家主が休暇中の一軒家。ドイツのイメージそのままの素敵な家だ。門番の人と英語で確認し合いながら、暮らしていく上での注意やおすすめのスーパーなどを教えてもらった。そのあとはもう眠かったのでシャワーすぐ浴びて寝る準備を整えた。布団がいい弾力で心地いい。よく寝れそうだ。

 そう言えば、フランクフルトでは5.2€のサンドイッチを買った。日本円にして700円くらい。高い。やはり自炊した方がいいだろうか。電車の中ではリンゴを食べている若者もいた。日本ではみない光景だけに異国に来たなと感じるし、それが異国で「普通に生活」をするということなのだろう。

 ちなみに、明日はストライキで公共交通機関がすべてストップするので、近所を散策したり、スーパーに行ったり、この土地に慣れていきたいと思う。

それではおやすみなさい。

3月2日ドイツ時間23:13
柔らかい布団の上から

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?