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また会えるまであと1ヶ月

2019年の9月に別れを告げてから、大切な思い出としてしまい込んでいた作品にまた会えるまであと1ヶ月になった。そうです。『おっさんずラブ』です。ああ嬉しい…。

俳優さんや声優さんでいわゆる推しという存在もいるけど、推し作品ができるのはちょっとつらい。作品が完結したらもう会えなくなっちゃうから。特にオリジナルのアニメやドラマだと続きが作られるのかどうかわからない。生殺し状態…。

正直『おっさんずラブ』の続編が制作されるなんて、1ミリも期待していなかった。やってくれたら嬉しいけど、きっと無理だろうなと。だから人生で一番と言っても過言ではないほどめちゃくちゃに嬉しい。こんなに好きな作品の続編が制作されるなんて前世のわたしは、どんな徳を積んだんだろう。

2018年の春クールに恋に落ちてから5年。改めて『おっさんずラブ』の好きなところを言語化してみよう。まだ見たことないという人にぜひ読んでほしい。2024年1月5日から続編が始まる。まだ間に合う!TVerで配信中!


恋に落ちた瞬間が見えるドラマ

わたしのだいすきな脚本家の坂元裕二さんがインタビューでこんなことをいっていた。

車と車がぶつかる瞬間や、人が人を殺す瞬間は映像として撮れるけど、人が人を好きになった瞬間というのは目に見えなくて、撮影できないじゃないですか。画に映らないし、それは脚本にも書けないものです。

CREA 坂元裕二が語る“ラブストーリー”の作り方
「人が人を好きになった瞬間というのは目に見えないもの」

わたしは小さい頃よく母親と恋愛ドラマを見て、この登場人物はいつヒロインに恋したのかを議論していた。HEROであれば、久利生はいつ雨宮を好きになったのか、ホタルノヒカリであれば、部長はいつ蛍のことを好きになったのか、と…。

人が恋に落ちる瞬間は映像にできない。好きということはできても、恋に落ちるという気持ちの変化を映像として表すことは不可能だ。だから一口に恋愛ドラマといえど、さまざまな要素を組み合わせてドラマとして成り立たせている。

『おっさんずラブ』は、できる限りノイズを取り除いて、人が恋に落ちる瞬間を描くことに挑戦している。人が人を好きになることで生まれる喜びや悲しみ、痛みが温度を持って伝わってくる。まずここが好きなポイント。

1話では、牧が春田に恋に落ちていく過程が見える。牧は、街の人や後輩から好かれている春田のひだまりのような人間性に好感を持ち、仕事を教えてくれる優しさに懐き、気の合う先輩としても一緒にいるのが楽しい。そして春田が人のものになってしまうのが嫌で、恋愛感情として春田を好きなことに気づいてしまう。牧を演じる林遣都の表情が、牧が春田に恋するまでを全部伝えてくれる。

一方の春田は、恋に落ちることがなんなのかわからないまま33歳まで生きてきた。人を好きになることも自分の気持ちもわからないから、はっきりと相手に考えを伝えることができない。優しすぎる性格が仇となって、相手にも優しさを与えすぎてしまって優柔不断になる。

7話で春田は最後に、牧との日々を走馬灯のように思い出し、やっと自分の気持ちに気付く。春田から牧への恋心が見えるシーンだ。

『おっさんずラブ』は誰かに惹かれて想いを寄せる瞬間も、想いを寄せているが故に伴う痛みも、ハッキリ見せてくれる。人に恋をするとはどういうことなのかを純度100%で見せてくれるドラマなのだ。

言葉がないから伝わる

『おっさんずラブ』に出てくる登場人物たちは、あんまりセリフで感情を伝えてくれない。誰をどう思っているのか、自分はどんな気持ちなのかを全然教えてくれないのだ。

その分、演出や俳優の表情が感情を伝えてくれる。前述した牧の表情はもちろん、春田が自覚なく牧を愛おしく思っている表情や、春田に想いを寄せる人物たちの表情が、言葉よりも雄弁に隠れた感情を物語る。ここも好きなポイント。

現実世界を生きているわたしたちも、感情を的確に表現する言葉が見つからないことがたくさんあるだろう。むしろ言葉にしないけど、顔にでてしまっている感情の方が多いのではないだろうか。

言葉にすることでその気持ちを自分で理解したつもりになってしまうし、相手にもその言葉通りに気持ちを受け取らせてしまう。言葉にしていない感情の方が、受け取る側に想像の余地が生まれるのだ。

最低限のセリフで、登場人物の感情は俳優の演技力で示す。このバランス感覚のおかげで、観ている側は登場人物たちの感情を理解しようと集中するし、人によって感情の解釈も異なるため、キャラクターたちに奥行きが生まれる。言葉がなくて、表情でしか感情がわからないから、逆に深い想いがヒシヒシと伝わってくるのだ。

そしてこれはめちゃくちゃ恋愛ドラマと相性がいい。恋焦がれる喜びや楽しさ、苦しみ、悲しみが全部リアルに伝わってくるから、観ている者は感情を動かされる。

大事なことをコメディの皮に包む

『おっさんずラブ』は脚本と演出、俳優の芝居が組み合わさることで、人を好きになることの本質が伝わってくる作品だ。ぱっと見、コメディ色の強いドラマなのに、描いていることは人を好きになる感情の尊さなのが、なんともずるい。

2019年に上映された映画では、共に生きていくことを決めた春田と牧がすれ違いを経て、パートナーとして生きることを決意する姿が描かれた。コメディの皮に包まれているが伝えてくれるのは、本質的なことばかり。大事なことがコメディの皮で包まれているのが『おっさんずラブ』シリーズの特徴なのだ。

次のドラマではなにをコメディに包んで伝えてくれるのだろう…

ドラマ用サブスク代にします!