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セルビア①また会えると信じていたのに

(1)歴史と呼ぶにはまだ新しすぎる紛争

「セルビア」と聞いて、具体的な場所や国を思い浮かべられる日本人はどれくらいいるだろう。もしかしたら”セルビア・モンテネグロ”という国名なら聞いたことがあるかもしれない。

この国が日本人に馴染みがないのは仕方がない。東欧にあるこの国は、90年代の”旧ユーゴスラビア戦争”でバラバラになってしまった。ヨーロッパのバルカン半島というギリシャの北側にある地域は、元々が”ヨーロッパの火薬庫”と呼ばれていたほど多くの民族や宗教、言葉や文字が入り乱れていた地域だったのだ。

この地域をまとめて一つの国”ユーゴスラビア”として独立を果たしたのが世界史で出てくるチトー。結局その後それぞれの国が独立を目指し、大きな紛争になってしまったのが1990年代。まだまだ歴史と呼ぶには新しすぎるほど最近のことなのだ。

そんな馴染みのない国セルビアなのだが、中東に住んでいる人たちにとってセルビア人はよく会う国籍の人たちだった。平均年収が約70万円、月にするとたったの5,6万円というこの国は非常に貧しく、リッチな国ドバイへ出稼ぎに行くのだ。これはアラブ首長国連邦編①で書いた理由と全く同じである。華やかなイメージのヨーロッパ、でも貧しい国は思っているよりも多いと知った時は驚いたものだ。

(2)怖いセルビア人女性

セルビア人女性はとにかく気が強い。日本人とは対極にある人種だと言っていいだろう。ちなみに平均身長も180センチくらいある。とにもかくにも自分の意見があれば主張する、負けない。面と向かって「これが気に入らない」と口にする、上司や部下といった上下関係があっても遠慮はない。こういった面があるから、チームワークで働かなければいけないCAの職場ではセルビア人と一緒に働くときは要注意人物としてマークされていることが多かった。

ちなみにセルビア人「女性」と書いたが、男性は女性のあまりの気の強さのためか、少しおとなしくて嫌なことも引き受けてくれる、優しい人が多かった。女性が強い国の男性はこうなるから面白い。

(3)セルビア人女性の友達アナ

私はドバイでは引きこもり生活で、日本人・外国人関わらず休みの日に外へ遊びに出ることはそこまで多くなかった。でもそんな生活で唯一外国人の家に遊びに行ったのはセルビア人女性の家だったのだ。

彼女の名前はアナ。私よりも数年前に入社した先輩だったが、何度か一緒にフライトをしたことがあってお互い顔は覚えていた。私がセルビアに行くための飛行機の空席待ちをしていた時に、たまたま空港で再会して彼女が声をかけてくれたのだった。

2人とも同じフライトに乗ることができ、一緒にセルビアに降り立った。右も左もわからない国で、こうして現地出身のクルーと一緒にいるほど心強いものはない。人の好いアナはドバイを出るときに、自分を迎えに来てくれる手はずになっていた兄に連絡をし、私を市内まで連れて行ってくれることになった。「ホテルをとっていない」と言ったら、「それはいけない!ここに泊まりなさい!」と、自分のAir BNBのアプリから予約を取ってくれ、「行かなければならない!」というお店はすべてメモに書いてくれた。東欧では一度親しくなると、おせっかい以上に良くしてくれる人が多くていつも感動したものだった。

空港を出たら、これまた優しさが顔前面にあふれ出たお兄さんがいて、遠いドバイからやってきた日本人の私を温かく迎えてくれた。「私の自慢の兄なの」とアナ。お兄さんは初対面の私に「時間があるならぜひ付き合ってほしい」とおすすめのレストランへ連れて行ってくれた。

(4)素晴らしいランチタイムと重たい言葉

そのレストランは川沿いの自然が豊かな美しい場所だった。川で取れたナマズ料理を口にしたり、自家製パンを食べているとどんどん鳥がやってくるので手からパンをあげたりと、おいしい食事を楽しむことができた素晴らしい時間だった。

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そんな平和な時間だったが、どんどん仲が良くなり深い話をするようになった時、お兄さんが口にした一言を鮮明に覚えている。

旧ユーゴスラビアは、違う文化を乗り越えて一つになろうとした。でも、無理だったんだ」と。

戦争を経験したお兄さんのその顔はあまりにも悲しそうで、その重たい言葉に対して何も言うことは出来なくなってしまった。

一つの国になってうまくっていた時期もあった。でも結果的にたくさんの人の命が奪われた紛争になってしまった。今でもコソボでは独立問題がくすぶっている。理想論を語ることは簡単だけど、それを実現するのはとても難しいのだ、という諦めのような言葉に聞こえた。

(5)また会える、と信じていたのに…

セルビアを旅行した後も、アナとは住んでいるアパートが同じで数階違いという偶然もあり、彼女の家に遊びに行ったり、彼女の猫の面倒を見たりと親しく過ごした。そんなある日、彼女から一通のメッセージが入った。

「前もっていうことが出来なくてごめんね。仕事を急にやめなければならない事情が起こって、退職して今はセルビアにいる」と。

彼女は仕事を辞めるつもりはないと聞いていたし、お別れをいう時間もなかったことに混乱し、彼女を問い詰めた。

帰ってきた言葉は衝撃だった。

「兄が死んだの。脳卒中だった。」と。疲れて憔悴しきったアナがお兄さんの遺影を抱えた写真が送られてきた。

涙が止まらなかった。あの素晴らしいお兄さん、”いつかきっとまた会える”と心のどこかで信じていたのに。

あの日空港でアナと偶然再会し、お兄さんに出会ったこと。セルビアに行ったことを大歓迎してくれ、短い時間だったけれどランチを一緒に楽しめたこと。たくさんの条件や偶然が合わさったうえでの出会いだったのだ。

あのお兄さんの優しい笑顔も、悲しい顔と切ない言葉も、きっと一生忘れることはない。セルビアでの忘れられない思い出だ。

②に続く

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