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【深い社会】16 世界を変えるアイデアが欲しい!

ジョブズがmacを売り出して次の商品を思案しているときに、とんでもない情報が入ってきました。

「ビルゲイツがMacをパクって新しいプログラムを売り出す」

Macの素晴らしさは、黒い画面のひたすら文字を入力するだけのコンピュータのイメージを一新させたことです。
シンプルで美しい画面に直感的な操作で、データを操作できるそのアイデアが世界を席巻しました。

そこに飛び込んできたニュース
「『Windows』デビュー!」

ジョブズは怒り狂います。
視覚的な操作感がMacそっくりです。

実はゲイツにはMac用に表計算アプリの開発を依頼していました。
それが「EXCEL」。
もともとは、Mac用だったんですね。
協力者だと思ってたのに!

ジョブズはゲイツを呼び出します。

「盗みやがったな!Macをパクるってどういうつもりだ!」

ゲイツは冷静に答えます。
「○○○○○!」

さあ、なんと答えたでしょう。

我々が追っている概念に「イノベーション」という名を与えたのが、シュンペーターです。
https://ja.wikipedia.org/wiki/ヨーゼフ・シュンペーター

「イノベーション」たどり着きました。
回り道をしてやっとここまで来ました。
長い旅路でしたね。ぜぇぜぇ。

さて、シュンペーターはオーストリアの経済学者。
若干29歳で1冊の本を書き上げました。
その本が、「経済発展の理論」です。

当時の経済学者たちの一番の問いは、
「なぜ、景気・不景気が繰り返されるのか」
でした。

当時の考え方は、個人の利益追求に重きを置かれていました。
個々がそれぞれ利益を追求するとトラブルも起きますが、
社会全体で調整して、自然にトラブルは除去されていきます。
その後、社会全体の利益は緩やかに上昇していきます。
これを「神の見えざる手」と言います。

ところが、自由に利益追求すると皆が幸福になるかと思いきや、
なぜか不況になるのです。
職を失い途方に暮れる労働者たちが生まれました。

経済学者たちは悩みます。
そんな学者たちの一人が、シュンペーターの尊敬した人物。
あの、「マルクス」です。
マルクスは不況の原因は、商品の過剰生産であると考えました。

マルクス
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%AB%E3%83%BC%E3%83%AB%E3%83%BB%E3%83%9E%E3%83%AB%E3%82%AF%E3%82%B9

資本家が利益追求をすると、どうしても過剰に生産します。
過剰に生産すると、全体の利益が減ってしまい、価値破壊が起きます。
価格破壊が起きると資本家が破綻し、労働者も仕事を失います。
これが不況の原因です。

よって、資本主義はベストな社会体制とは言えない、ということで、社会主義思想が生まれるのですが、
シュンペーターはこの尊敬するマルクスの考えに問いを持ちます。

本当にそうだろうか。

シュンペーターは鉄道を例に考えました。

我々はそもそも駅馬車を使っていた。
そこに蒸気機関が現れ、新たに結合し鉄道が生まれた。
鉄道によって移動が簡易になり社会全体の枠組みが変わってしまった。

もしかして、この新たな結合が原因か?

シュンペーターはどのようなときにこの新たな結合が生まれるか5つを挙げています。

1 新しい財貨(商品)の生産
2 新しい生産方法の導入
3 新しい販路の開拓
4 原料あるいは半製品の新しい供給源の獲得
5 新しい組織の実現(例えばトラストの形成や独占の打破)

このような新たな結合を成功させるのは、一部の資本家だけです。
彼らが困難を乗り越え、結合に成功すると道すじが生まれます。
他の資本家もその道すじをたどって、成功していきます。

これが好況です。

ところが、みんなが成功すると、商品が過剰に生産されることになります。
すると価値が下落し、経済の動きが落ち込むまで続きます。

これが不況です。

つまり、好況と不況は、経済の循環の中の一部であり、
必ず起きるものである、ということが言えます。

シュンペーターはこの新結合のことを「イノベーション」と呼びました。
そう、イノベーションとは何か突然ふってきたアイデアではなく、
既存のものを組み合わせて生み出した、新しい価値のことなんです。

すごい発見!
きっとみんなが注目したに違いない!

残念ながら、ほぼ無視されました。
当時はケインズ経済学など、政府が大きな投資をして需要を作る考え方が
もてはやされていました。
ニューディール政策もそうですし、
不況下の日本が行った「三本の矢」もそうですね。
不況のダメージを軽減するうえでは効果があるようですが、
底を打った経済を復活させるには足りないようです。
まさしく、イノベーションが待ち望まれています。

さて、Macのアイデアを盗みWindowsを作ったゲイツは、
怒り狂ったジョブズに、なんて答えたでしょう。

正解は・・・

「おまえもな!」

そもそもMacとWindowsが成功したアイデアである視覚的な操作感
「グラフィック インタフェース」は、
ゼロックスのコンピュータで生まれたものなんです。

2人が起こしたイノベーションも「新結合」だったんですね。


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