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海外の教育大学院に行くには?④…出願書類全体で「自分」を表現する

前回の記事で、

将来 -( 思い × 経験 × スキル )= 学びたいこと

という等式を埋めて、「いま時点での自分なりのロードマップを最大限まとめたもの」がStatement of Purposeだ、ということを書きました。そしてそれは、前々回で書いたとおり、「大学側が求めているものにフィットしていること」が重要です。

では、「具体的にはどんな構成で書けばいいの?」という話なのですが、これには答えはありません。なぜなら、Statement of Purposeは、受験勉強的な「正解を書くもの」ではなく、「人とは違ったことを書くもの」だからです。似たような構成で書いても印象に残る可能性は低く、むしろ「かぶったら負け」とすら言ってもいいかもしれません。

とはいえ、分かりやすく伝えるための、ある程度の「型」のようなものは、日本語でも英語でも存在します。自分も「型」の全てを知っているわけではありませんが、以下のような点は少なくとも心がけるとよいだろうな、とは思います。

・「私は将来○○がしたいので、大学で××したい。」という、ストレートな結論から書き始める。

・一般的、抽象的な話(例:教育格差を解消したい)と、個人的、具体的なエピソード(例:学校で○○な家庭環境の生徒に出会い…)を両方とも書く。

・「自分の」想いや行動、体験を書く。(上記の例で言えば、「○○な家庭環境の生徒」の窮状を詳細に書くよりも、「自分がそれに対し何を感じたか、何をしたか」が重要です。また、組織の中での話を書くなら、「組織はこんな意思決定をした」「世の中はこう捉えた」よりも「私のこんな提案や行動が、組織の意思決定につながった」と書くべきです。あと、「偉人の言葉」とかは、それがよほど自分の体験と密接でない限り、ほとんど意味がないです。)

・やりたいこと、実現したいことを書くに当たっては、「それがなぜ大事だと思うのか」を一緒に書く。

・数字を使えるものは使う。(「教育格差が存在します」と書くより、「高等教育への進学率は、生活保護世帯とそれ以外との間で、約40%の差があります」の方が、問題意識が伝わるでしょう。)

・学びたいこと、体験したいことを書くにあたっては、「その大学にしかないもの」を書く。(授業、教授、クラスメイトの構成などなど)

・結論では、冒頭の
「私は将来○○がしたいので、大学で××したい。」に戻ってくる。その上で、「さらに長期的なプラン」や「実現したい世界」など、壮大なことや哲学的なことを堂々と書く。
大学によっては、エッセイに書くべきことをHPで示してくれていることも。


だいたいの場合、構成は
序文→自分の経験や課題、やりたいこと等→大学で学びたいこと→結論
のようになるとは思います(これにこだわる必要はありません。また、長さはプログラムごとに指定があります)が、ここで重要なのは、

④質問文で聞かれていることに答える。

という点です。あなたは将来何をしたくて、「なぜ」それをしたいのですか?という質問であれば、文章のどこかに必ず「理由」を書く必要があります。「このプログラムへの適性」「このプログラムに入るための準備」がお題になっているならば、これまでの人生で、きちんとプログラムに関連する経験を積んでいることを示すべきです。

あまり「本当に答えになっているかな?」と深く考える必要はないのですが、何かしらの答えを書く必要は確実にあります。

そして、書いたものは必ず、

⑤アメリカ英語圏の人の添削を受ける

ことが必要です。留学コンサルタントでも友人でも、自分が気兼ねなく頼める人ならば誰でもいいですが、とにもかくにも、アメリカ英語圏の人に添削してもらってください。日本人の感覚でも「意味が通じる」英語を書くことは十分できますし、それは学校教育の立派な成果なのですが、複雑な内容を、フォーマルな文体で書くのはまずムリです。(というか、日本語でも、フォーマルな文章を書くには学校教育の後も訓練要りますよね。)

どれだけTOEFLやIELTSで高得点を取っている人でも、英語が母語で無いならば、「自然な文体」に関する感覚を完全に理解するのは限りなく難しいと思います。(自分も、留学生活の最後まで、学校で習った知識どおりに書いた英語を最後まで容赦なく添削され続けました…)ただでさえ、バックグラウンドが異なる中で、書く内容や価値観を理解してもらうのが難しいのに、表現で損をしていると、スタートラインにも立てませんから、絶対にアメリカ英語圏の人の添削を受けるべきです。


さて、Statement of Purposeだけでだいぶ長くなりましたが、出願に必要な書類はこれだけではありません。どの大学でも必要になるものとしては以下のとおりです。

推薦状…第三者から見た出願者の能力や、それを示すエピソードを記したもの。長さに指定はないことが多いが、2枚くらいに収めるのがよいようで、2~3通必要です。海外にも名の知れたような業績のある人が知り合いにいれば、その人にお願いするのもいいでしょうが、一般的には有名人に書いてもらう必要は全くありません。「出願先にフィットした」素養や知見を持っていることを示してくれる人を探すことが最も大事です。教育大学院に出願するなら、教育現場の人に書いてもらうことは必須でしょうし、アカデミックな研究が中心のプログラムなら、大学時代の指導教官などに、「研究を行うにふさわしいこと」を証明してもらうとよいでしょう。また、出願先のプログラムの卒業生に頼むのも、「フィット感」を示してもらうのに有効です。
履歴書…自分の経歴、業績を網羅的に書いたものを「CV」、1枚にまとめたものを「レジュメ」と呼びます。どちらも重要なのは、「どこそこに所属していました」ではなく「○○を成し遂げました」という、できるだけ明確な「成果」を書くこと。これは教育関係だと結構難しいことも多いと思うのですが、小さなことでも「この世に自分がいなければ実現されなかったこと」を書かないと、大学側としてはその人を採る意味がないので、しっかり自分の経歴を掘り下げる必要があります。
TOEFLIELTSのスコア…留学生が英語力を示すためのもの。最低ラインはプログラムによって全然違うので一概に言えませんが、重要なのは、「英語力は、出願で必要なもののうち、(重要な)ほんの一部」ということです。英語がどれだけペラペラでも、プログラムに貢献する情熱が全くない人を合格させる理由はありません(英語圏出身の人を採ればいいですよね)。逆に、例えばTOEFLで110点くらい取れるとしても、実際に英語で問題なくコミュニケーションを取るには、正直言って全然足りません。自分も105以上ありましたが、他の非英語圏出身の人と比べても、まったく問題外でした。それでも合格させてもらえたのは、総合的に、プログラムにフィットしていると思ってもらえたからだと感じています。なお、昔はアメリカの大学ならTOEFL、イギリスならIELTSでしたが、近年、アメリカの大学はIELTSのスコアでも大丈夫なことが多いですし、Duolingoなど、更に別のテストを使えることもあります。
GREのスコア…留学生かどうかにかかわらず、読解力・語彙力・文章力・計算力などを示すために必要なもの。単語が鬼のように難しいので、リーディングの満点はなかなか難しいですが、計算問題は、日本の大学受験で数学をやった人なら(文系でも)満点が狙えます。

推薦状や履歴書の書き方のポイントについては、以下の本に分かりやすくまとまっています。(MBA用ですが、他のプログラムにも通じることが書いてあると思います。)

他にも、「あなたのDiversityについて書いてください」「あなたの社会貢献について書いてください」「簡潔に政策提言をしてください」など、大学として明確に「こういう人を採りたい」という意思を感じさせるような、追加のエッセイがあったりもします。

重要なのは、これら出願書類全体を読んだときに、「この出願者はきっとこんな人だな」と思ってもらえる、自分のイメージが明確であること(そして、それが出願先のプログラムにフィットしていること)です。

Statement of Purposeでいくら情熱や学びたいことが明確に示せていても、履歴書の中身があまりに「プログラムと関係なさそう」なら、門前払いのリスクがあります。履歴書とStatement of Purposeによる自己申告が完璧でも、推薦状がしっかりしていなければ、かえって、「自分を客観的に見られないのだろうか」と思われかねません。

出願書類全体で「自分」を表現する

ということを念頭において準備をすることが最も大事、と言えると思います!

次回以降は大学選びと、出願のほんの一部でありつつも日本人には高い壁である英語のことについて書いていきたいと思います。

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