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ブロンディールのフレジェと美学。

ブロンディールが止まらない。
そしてフレジェも止まらない。
だからフレジェの季節にはますますブロンディールが止まらない。

今季もブロンディールへと帰還する度にフレジェを真っ先に選んでいる。
フレジェとはそれほど強力な引力を持っている。
何故ならばフレジェは苺が旬の季節にしか提供されないからである。
フレジェフレジェフレジェと、フレジェを追い求めブロンディールに帰還する。

ブロンディールとフレジェ

もし、一年中フレジェがショーケースに並んでいたら、ここまではフレジェにときめかないのかも知れない。
苺はケーキに使用される果物の中でもトップクラスの人気者、いわゆる洋菓子店では苺のショートが一年中並んでいるが、ブロンディールはフランス菓子店なのでショートケーキは置いていない。
オーナーの藤原シェフはフランス菓子店としての店構えに強い拘りを持ち、徹底したフランス菓子としてのラインナップをキメている。ブレずにずっとキメている。
その為、フランス菓子以外の要素は全て排除されているといっても過言ではない。日本人にとって、いわゆる王道である苺ショート(ふわふわスポンジ+生クリーム+苺)の需要がどんなにあろうとも、世間には媚びず、譲歩して寄り添うような真似は絶対にしない、純度100%のフランス菓子店なので、世間一般の人気者ショートケーキは置いていない。
それがどんなに好まれ需要があろうとも決して置かないのだ。自身の道を信じ、自身の生み出す菓子の味を信じ、それを分かってくれる人たちがお店に来てくれればいい。
このブレない姿勢こそが、ブロンディールの揺るぎない強さの根幹となっている。
※苺ショートはショーケースに並ぶことはないが、誕生日ケーキなどに限りアントルメで注文可能なので安心して頂きたい

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フレジェで知る季節の移ろい

苺の季節は「フレジェ」が知らせてくれる。
フレジェとはフランス版の苺ショートのようなもので、ショートケーキとは似て非なるもの。
苺の存在をしっかりと味わいさせながら(苺ファーストでありながら)各パートが最高のパフォーマンスを魅せ、結果として一体感のある美味さの境地へと昇華させているのが特徴。
これは言葉で表すと簡単でも、実際にやるとなれば非常にバランスの取り方が難しい。何故ならば、互いに譲り合うというよりも互いに存在感のあるもの同士が高め合う関係性でこそ生まれる、自身の役割と他者視点を同時に捉え、各々パートが各々の力を最大限に発揮することではじめて生み出される賜物だからだ。
まさにチーム、チーム・フレジェなのである。

濃厚なクレーム・ムースリーヌ(カスタード+バタークリーム)とアーモンド生地で、苺を力強く支え、苺を優しく包み込む。
飲めると表されるショートとは真逆の存在。全体からしっかりと風味が主張し、食感にもコントラストがあり苺が存在感を持ってそこに居る、苺は可愛らしさを浮かべつつも旬の味わいを今こそ味わって欲しいというような、もう凛とした表情で並んでいるのだから、生半可な意志でそこに(フレジェに)納まっているいるのではない、という事だけは言っておきたい。
苺による苺の為の苺を味わうケーキ、旬の苺のポテンシャルを最大限に引き出し、なにかともてはやされがちな苺が自身のプライドを世間強く知らしめる、苺の本気とパティシエの本気が形となって表された苺ファーストのケーキがこの「フレジェ」なのだ。

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フレジェは冬〜春へ掛けて季節限定で登場する。
ブロンディールではフルーツを使用したケーキが少ないのにお気付きだろうか?
大まかに分けると、初夏の檸檬(タルトレットシトロン)、夏の桃(アシェットデセール)、秋の林檎(タルトタタン)、そして冬から春にかけてのフレジェ(苺)である。
※シトロンは神出鬼没なので夏に出ていて欲しいという願望、また、いちじくは一瞬、栗は果物カウント外、フランボワーズやグロゼイユは通年なのでカウント外
四季の移ろい、巡る季節をショーケースで知る歓び。
フルーツによる季節感のピークは苺でやってくる。
フレジェには思い入れが強くなる理由がある。それは、一年を無事に乗り越えれた事に、新しい春を迎えられる事に、フレジェとの再会を重ねているからではないか。人生における巡り会いの象徴こそがフレジェなのである。

フレジェとの再会

「今年もフレジェに逢えた。」

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そのシーズンに初めてフレジェと遭遇した時の、あの胸の高鳴りを覚えているだろうか?すべてが真っ白になるあの瞬間を。
公式Webによる告知などは一切ないという、まだかまだかと思いつつショーケース前にまさかのフレジェが居るあの光景。
居るのか居ないのか、そろそろ居てもおかしくない、居たら居たでどのように振る舞えば…などと、頭の中がまさにイチゴ畑状態になりながら帰還すると、居る。
まだ居るはずのないフレジェがショーケースに居る…!という現実に、もはや歓びを飛び越えて頭の中が真っ白になってしまうBLONDISTにありがちなあの光景、どうすれば…?!と困惑するあの光景は、季節の儀式のように。
それほどまでにフレジェの季節は待ち遠しく、人はフレジェを求め、ブロンディストはブロンディールへと帰還し続ける。

導かれし

導かれしフレジェ、導かれしBLONDISTたち。
この度、そんな愛して止まないブロンディールのフレジェを、アントルメサイズで味わいたいというブロンディストの夢が実現する運びとなった。
記念日でも何でもない日常にアントルメは贅沢すぎるのではないか?という声がある、実際私自身もそのように思っていた。しかし、考え方が逆だったのだ。
まず好きなパティスリー、好きなシェフ、好きなケーキがあり、そのアントルメが実現するタイミングが来て、素晴らしい時間を過ごす事が叶う、と。
それを後から振り返ると、その体験こそがまさに記念日(アントルメで至福の時間を過ごした)になるのだと。
もしアントルメなんて後ろめたい…と感じている方がいるならば、まずは行動に移してみる事をお勧めしたい。なぜなら、好きなケーキのアントルメを目の前にしたら、「後ろめたさ」や「全部食べ切れるのか」といった不安はすべて吹き飛んでゆくのだから。
実際に、今回のフレジェでその考えは確信へと変わった。
ケーキはなにも記念日の為だけのものではない。もっと身近な存在、日常に彩りを添えてくれるのがケーキであり、日常に大きな彩りを与えてくれるのがアントルメなのだと、強く思わずにはいられなかった出来事だった。

ここでどのようにして心境の変化が起こり、フレジェ・アントルメを実現させるに至ったのかに触れておきたい。

以前からフレジェのアントルメに対する憧れはずっとあった。
遡ると、伊勢丹ノエルにブロンディールが登場し始めた頃のフレジェの姿だったのかも知れない。Webで見掛けたそれは、特別に大きなアレンジや装飾を施している訳でもないのにどこか惹かれる姿だった。煌びやに仕立てたノエルのケーキという格好ではなく、シェフのノエルに対する温かな気持ちが投影されたかのような姿が印象的だったのである。
いつかは…という憧れはこの時に出来ていたのかも知れない。
それから時が流れ、どうかしているというくらいにブロンディールの虜となり、お店に通い詰めていた自分にとって、なかなか手を出せない領域が「アントルメ」という禁断のフォーマットだった。
実は、アントルメ自体は誕生日のケーキとしては2回ほど注文した経験がある。
自分による自分の為の自分だけのアントルメとして、藤原シェフに特別なアントルメをお作り頂いた。誕生日という年に一度の大切な日だからこそ許される贅沢なアントルメ。特注のアントルメはBLONDISTとしてまさに夢の具現化そのもの。
ただ、私の誕生日は苺の季節ではないので、フレジェで注文することはこの先もずっと無いのだろうなと、何でもない日常にアントルメをするというのは何となく気が引ける、少々贅沢すぎるのではないだろうか?という気持ちも働き、そのうち保留になっていた。

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そんな折、今回のフレジェアントルメが実現する。
実現したのはもう一人の某BLONDISTの存在が大きい。
そのお方は、昨年に伊勢丹マ・パティスリーでのブロンディール最終出店において、アントルメに目覚めてしまったと告白している。
グロゼイユ(赤すぐり)のとびきり酸っぱいタルトのアントルメ、モンブランのアントルメ、この二つともブロンディールでは定番中の定番として通年ショーケースに並んでいるのだが、某BLONDISTな彼女曰く「普段のそれとは全く印象が違う」「食べても食べても終わらない」「思うがまま好きなカットで楽しめる」と。
つまり、アントルメでしか得られない快感(ステージ)が確実に存在し、一度体験してしまったら、アントルメせずにはいられないほどの魔力的な魅力があると。
熱く、暑く、圧く、興奮して語っていたのである。
結果として、その彼女は2020年は月イチのペースでアントルメを頼む事を年始に誓う。まっすぐに固い意思で誓う。

アントルメ計画とフレジェ

「毎月アントルメ計画」

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1月はパリブレストをアントルメで特注しようとしていたが、シェフのスケジュールと仕入れの関係で今はその時ではないと。
代わりになるアントルメを頼もうと、春先に頼む予定だったというフレジェを前倒しでお願いする事に決定した。
ならば、と便乗してお願いする運びとなったのである。
ずっと憧れていたアントルメのフレジェ。
憧れはあったが特注しなければ入手出来ない、記念日でもなんでもないのに特注なんて、踏み出す勇気が私には無かった。
だが彼女は違った。
明確な意思と行動力でフレジェアントルメを、いや毎月アントルメ計画を実現させようとしていた。その姿は只々眩しかった。
ここはブロンディスト同士、同じ歓びを共有してみたいという思いが生まれた。
そして一緒に同じものを注文するのならシェフにも負担が掛かりにくいだろうという勝手な想像のもと、同日に受け取るスケジュールで注文をすることに。

フレジェフレジェフレジェ

それからはもう気持ちはフレジェへと真っしぐらである。
フレジェフレジェフレジェ!とフレジェへと前のめりになりながら、日常業務・日常生活を送るという、人間は少し先に楽しみがあることで日々活力が湧いてくるような、フレジェに応援されながら、来たるフレジェアントルメに備えて体調を整えていく日々。ずっと憧れていたフレジェアントルメとの念願の対面に備えて、フレジェアントルメを味わうのはまさしく真剣勝負なのである。
フレジェへのカウントダウン。
高鳴る鼓動。
そして、ついにその日がやってきた。

フレジェ2

いつものように平静を装いブロンディールに帰還すると、先に到着していたBLONDISTの彼女が待っていた。いや、フレジェが待っていた。
一足先に見させて貰ったという彼女は、顔が緩んで止められないようだった。
さっそく一緒にフレジェをお見せ頂く。
アントルメになったフレジェは特別に飾り付けられ、藤原シェフの美学が全身から溢れ出ていた。プチガトーでも美学が滲み出ているが、アントルメは圧倒的な美学量とともにこちらに迫ってくるのだ。
豪華絢爛という意味ではない、装飾のための装飾ではない装飾、フルスペックの藤原シェフの揺るぎない美学を感じてまた惚れ込んでしまうBLONDISTたち。

フレジェ1

フレジェよ永遠に

心ゆくまでフレジェに溺れたい。

そんな夢が実現したことに、某BLONDISTなお方に、藤原シェフをはじめとした関係者の皆様に感謝しかない、フレジェアントルメを味わった束の間の夢のような時間。

不思議なことに、アントルメをしたのにも関わらず変わらず今でもフレジェを求め続けている。 

以前のように自由に行き来出来なくなってしまった世の中で会いたくても会えない、恋焦がれる存在として。
またカフェスペースでフレジェと向き合い、フレジェと大切な時間を愉しめるその日を待ち望んでいる。

fin.

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