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「砂時計」 R2.1月課題

朗読を始める前に声出しをすると喉を痛めないのでオススメです。
・1分間声を出す
口を大きく開ける、お腹の底から声を出す。


発声練習をすると活舌が良くなります。
発声練習をする時は口の形をしっかり意識しましょう!
↓参考資料
北原白秋 『五十音』


「砂時計」

砂が落ちつづけている。
 砂時計だ。
 砂時計なんて、何年ぶりに見る?
 大ぶりの砂時計だ。


 私は目をあけ、それを見つめた。
そして、それまで目を閉じていたことに気づいた。

 眠っていたのか?
 いや、ちがう。

 では起きていたのか? それもちがう。

 では、なんだ? 私は眠ってもいず、起きてもいなかった。
まるで存在していなかったみたいだ。

でも、いま、私は、ここにこうやっている。
こうやって砂時計を見つめている。

砂がガラスの容器のなかを、さらさらと、上から下へと流れ落ちているのを見ている。

 その砂時計にはどこか違和感があった。非現実的な感じがした。
 どこが?

 彫刻をほどこされた古めかしい木の枠に、
白い砂が入ったガラス容器がはめこまれている。
いささか古風ではあるが、ごくありふれた砂時計だ。
しかし、なぜか違和感がある。

 見つめているうちに、その違和感はしだいに強まっていった。
 そもそも、この砂時計はいつからここに置かれていたのか。
 ここに置いていったのはだれなのか。
 私の記憶にはなかった。

 そして、違和感の原因を、私はついに見つけた。
 砂時計はいつまでたっても終わらないのだ。
上から下へ流れつづけて、終わりがない。
上の砂は、下へと流れ落ちつづけているのに、まったく減らないのだ。
 砂はえんえんと落ちつづけ、時はえんえんと進みつづけている。

水色文庫 「砂時計(抜粋)」 水城様

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