魔性の匂いに誘われて

現在、東京の馬喰町という場所で働いている。僕は埼玉の人間なので、大学も東京に通っていたし23区の地理や駅名くらいはほぼ把握しているものだと思っていたが、東京にこんな破天荒な地名があるなんて、就活で現職の会社に訪れるまで知らなかった。

馬喰町。

さぞ血生臭い歴史があるのかと思ってネットで調べてみたら、なんて事のない理由でガッカリした。↓

馬喰町の地名は天正年間(1573年-1593年)、幕府の馬労(博労)頭高木源兵衛、富田半七が居住し、この地にあった馬場を管理していたことに由来します。馬労(博労)は、馬や牛の仲介人のことです。初めは博労町と記されていましたが、正保年間(1645年-1648年)に現在の馬喰町と改められます(日本橋トポグラフィ事典)。

まあつまらないよね。完全に名前負け。
更に「中央区日本橋」の屋号まで頂いているもんだから、ハードルだけ勝手にぐんぐん上がってしまって、ガッカリされる可哀想な町だ。

そんな馬喰町から少し足を伸ばせば、割とすぐに丸の内やら銀座やら「THE東京」って感じの街が現れる。
今日は、丸の内までお使いを頼まれたので、久しぶりに丸の内を歩いた。
正直、丸の内は嫌いだ。
同じ東京の半径5km以内でここまで住む世界が違うのかと自分が惨めになるからだ。
昼過ぎの丸の内は、お洒落なイタリアンのテラス席で、カーディガンを肩に軽くかけたOLや、良い感じで日焼けして青いスーツで決めたツーブロックのサラリーマン達が、1500円もするランチプレートをゆっくり談笑しながら嗜んでいた。
片や自分は、降りた駅出口がどこだか分からなくなってGoogle mapを起動しながら目的地を急ぐ。もちろん昼なんて食べている余裕などない。
テラス席で昼食後のコーヒーを楽しむランチプレート貴族達が、どうせ内容もロクに確認せずに転送しただけであろうメールの無茶苦茶な指示に従って自分のような末端サラリーマンは、日々汗水流して動き回っている。
貴族達が、業界を変えたいだとか日本に新しいムーブメントを起こすだとか上空何万mからの景色を眺めている側で、硬い地面に無理矢理、棒を刺してみて、出来る限り上に登ろうとする自分が惨めでしょうがないのだ。

そんな事、もうどうでも良い。今日は決めている事がある。この仕事を片付けたら、行く時に通った東京駅地下の味噌ラーメンを帰りに食べるんだ。早くしないと閉まってしまうかもしれない。

仕事自体は代理のお使いなのですぐ終わった。
ああ、味噌ラーメン、味噌ラーメン、味噌ラーメン…。
味噌ラーメンが早く食べた過ぎて、自然と足が速くなる。この階段を降りてあと少しだ。

そんな時、思わずある店の前で足が止まる。
何だ、この匂いは。

正体はカレー屋だった。
ふむ、カレーか…。いや、でも僕には味噌ラーメンが待っている。ここまで来ての予定変更は許されるはずがない。


結局、僕はカレーを食べました。

少し前にみた「水曜のダウンタウン」でも“カレーの匂い嗅いだ後の食事は必ずカレー説”みたいな企画やっていたよな。
自分も例外でなく、魔性のスパイスの匂いからは逃げる事が出来ませんでした。
#カレー #丸の内サディスティク #馬喰町 #味噌ラーメン

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