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【コラム】埼玉県にいったい何があるのか

  前作『私書店員~』

などでもたびたび触れている「取次」。

 前シリーズからエッセイを読んでくださっている方にとっては耳にタコかもしれませんが軽く説明させていただきますと、出版物をそれぞれの書店へ配本してくださっている人たちです。

 これまで日本の出版業を支えた影の立役者的にご紹介してきましたけれど最近この地位が危うくなってきています。

 KADOKAWAさんなど大手出版社を中心に、自前の印刷所を持ち「取次」を介さず各書店に直接納品するというシステムが本格的に確立されつつあるのです。


 本来なら配本が望めないようなライトノベルでも取次さんにかなり無理を聞いてもらったのは一度や二度ではなく、書店の規模にしてはかなり優遇していただいたと認識しています。

 なので「取次」さんの存在感が縮小する現状は心苦しいのですが……
 書店・出版の業界はかつてなく大きな過渡期を迎えているのでしょう。
 各書店さんも、出版社さんも、そして「取次」さんも――変革を迫られている、ということなのだと思います。


 KADOKAWAさんが本社を埼玉県所沢市に移し、ところざわサクラタウンという大規模商業施設をオープンさせたことは記憶に新しいと思います。


 紅白歌合戦に初出場したYOASOBIが、その中でもひときわ目を惹く武蔵野ミュージアムという書籍の博物館でパフォーマンスしたことで一躍注目を浴びたところでもあります。

 それ以前も特徴的な建物の形状からたびたび話題になっておりますね。

 noteさんだとこういう引用ができるのがいいですね。

 なんで取次からいきなり埼玉の話やねん、というご反応もわかります。
 突拍子もない話に見えますが実は埼玉県、出版取次の一大拠点なのです。

 所沢市ではありませんが、取次大手2社の一角・トーハンさんの巨大配送施設である「トーハン桶川SCMセンター」が桶川市に、そして上尾市にも「トーハン上尾センター」があります。もう一角の日販さんも過去に一大物流拠点を埼玉県に置いていました。

 つまり、日本じゅうのかなりの出版物が埼玉に集められているのです。
 1店舗めはトーハンさんのお世話になっていたのですが、関西で働いていた私も桶川の物流センターへと本を送っていましたからね。

 田舎への本社移転をネガティブに捉える向きもあるようですが、そういった意味では大手出版社が埼玉県に一大拠点を置くのはさほど変な話でもないのです。

 埼玉県が出版界・本にとってのある種の「聖地」化するのも、地方創生的な意味合いでも面白いんじゃないかなー……と思います。
 ところざわサクラタウン、話題を集めることにはある程度成功していると思いますので、今後のご発展を願っております。

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