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【コラム】電子書籍の売り上げが紙を上回る。

 出版科学研究所様調べ:平成30年2月26日付の記事でコミックスの単行本売り上げで電子書籍と紙がはじめて逆転したと知り衝撃を受けました。

 遠からずそんな日は来るんじゃないかとは思ってましたけれど予想以上に進行が早い……いや、むしろ誰もが予測できていた未来を前にして、ここまで紙の本がよくもったというべきなのかもしれません。


 しかし、このコラムを書いたのはおよそ3年前。
 コミック市場のみに焦点を絞ったものではありますが……
 現在の情勢ではいわゆる「巣ごもり需要」なども影響して、2020年の電子書籍と紙の本・コミック誌を合わせた販売額では初めて6,000億円の大台に乗り統計開始以来最高の売上を記録
 なんと現代と比較にならない大量消費時代であった、ピーク時の1995年を上回っています。

 1995年といえばJ-POPで Mr.Childrenの『Tomorrow never knows』がヒットするなどCDセールスで音楽史上最高の売上を叩き出した年です。
 つまりエンタメ産業全体が空前の活気であった時よりも今のほうがコミックスが売れている、ということになります。これはとんでもないことです。

 おかげで私の書いたコラムそのものがすっかり過去のものとなり、記事そのものをほぼ書き直さないといけないほどになりました。
 うれしい悲鳴ですね。
 
 ある企業の方からは「出版は成長産業だ」というような趣旨のご発言があったというのをどこかで目にしましたが、この勢いで衰退論など吹っ飛ばしていただきたいです。

 しかし、あくまでもこれは出版のなかでも一部のことであり、書店や出版の業界全体を見渡せば苦境に立たされていることは変わりありません。
 『鬼滅の刃』や『呪術廻戦』などのヒットをうけて書店もかなりの恩恵を受けていることも確かではあるでしょうが……

 何よりコミックス誌の売り上げの落ち込みが深刻なのです
 一時は3つのコミックス誌を購読していた私としては悲しいところなんですが、実は出版不況といわれているものの大部分は、実を言うと「雑誌」の不振なんですよね。
 
 ネットで情報を手に入れられる時代ではどうしても速報性で大きく穴を開けられてしまいますから、今後ますます厳しい状況となっていくでしょう。

 しかし、かといって雑誌の役目が終わったのか、とまではまだ言えないのではないかと思います。

 デジタル・ディバイドという観点から、電子媒体に触れられないご高齢の方などにとってますます不利になっていき、情報格差がさまざまな面で今以上に表面化しないだろうか、という懸念を抱かざるを得ません。

 美容院さんなどの定期購読してくださっていた配達先などにとっては雑誌は必要だと思いますし、ご高齢の方にとってはまだまだ紙の媒体が主体で、それはおそらくそう簡単には変わらないでしょう。

 電子に追い抜かれたといっても、書籍の取扱量そのものは巨大です。
 衰退論なんてここ10年くらいずっと叫ばれていたのであって、そのようなものが叫ばれているうちはまだマシだと思います。

 しかし現在の雑誌は付録頼みの状況が続いており、その中身次第で売上にブレが出てしまいますし、根本的な解決策ではありません。

 速報性で敵わないのならば、ネットよりも情報を整理してまとめて提供し、情報媒体としての信頼性をアピールしていくことが必要なのかもしれません。

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