【コラム】かけがえのない書籍の購入、スリップレス。
お金では買えない価値があるのかもしれませんが、お金で買った本を読んで感じた思いはプライスレスですよね。ってこのCM知らない世代多いか……
私が文庫担当していたお店はエクセルに手入力で売上数を記録していた、というお話は以前のエッセイでもしていたと思います。
その時、どれだけ本が売れたかを見るために重宝していたのが、本を買った時真ん中あたりに挟まっているしおりみたいなアレ――補充注文カード(通称:スリップ)です。
このスリップはお客様が会計をする時に本から抜き取って保管、その本を注文する時に使います。
店頭で売れた本をすべて把握することなんて不可能です。
ですが、これがあれば注文し忘れをだいぶ防止できます。
ちなみに出版社さんにあとで送らないといけなかったりしたので、そういった意味でも保管が必要だったり……
仕事あがりのついでにスリップやら注文表やらをまとめて封筒に入れてポストにin、なんてのが毎月のルーティンだったりもしましたね。なお送ったら報奨金を下さるところもあったので、地味ぃ~~に大事な業務でもありました。
さてそんなスリップなのですが、最近は経費削減の一環でなくす動きが広がっているようです。
いつのまにか目にしなくなってきましたね。
これもデジタル化の流れか……
このスリップたちにはずいぶん助けられていたんですが……
最近はどこもデータで完全に管理しているでしょうし、やむをえないところなのかな、とさみしい思いもあります。
書店業、出版業も現在の形に合わせて少しずつ、変化をしていっているということは間違いないでしょう。
業界としていち早くスリップレス、そしてコミックスのビニール包装を始められたのが講談社さんでした。
最初からビニールで包まれた状態で納品されるので、立ち読みをしたくともできないような仕様になっています。
その他、商品の美しさを保つため……などさまざまな観点からああなったものですので今回とは少し違った話ではあるのですが……同時にスリップも廃止されたのですよね。
そういう意味では現在のスリップレス化の動きに先行した措置であったともいえます。
これも当初から賛否両論ありましたね。
お客様からしたらあらかじめ中身を確認できないのは不便でしょう。
これもわからなくはないんですよね。自分だって本を買うとき中身を確認したいタイプなので。
しかし……
それを読んだあと戻してくださるならいいんですけど、けっこう乱雑に置いて帰ってしまわれることが多かったのですよね。立ち読み防止のビニールを巻いててもわざわざそれを取って読んでらっしゃったりね。そんなのはひと目見たらわかりますからね。
多くの方が手に取り読んでいくにつれてやはり形が変わってしまったり汚れてしまったりで、売り物にならなくなってしまう。
ブックオフさんのような立ち読み前提の中古品店ならそれでよいかもしれませんが、新品を揃えなければならない通常の書店で状態の悪いものというのはそれすなわち売れない商品=在庫ロスなので……
私たちの書店業務の中でかなりの時間を占めていたのが、立ち読み対策のためにするビニール巻きでした(特に私のいたところのような手巻きならばなおさら)から、そこから解放されるのはある種ありがたいところではありました。
私たちだって好きこのんで多くの時間を割いてまでビニール包装したいわけではないですからね。
なおここ最近このビニール包装で新しい動きがありまして。
総額表示義務化の対応を期に、講談社さんはついに文庫にもビニール包装をなさるそうです。
ライトノベルならばまだしも、一般文芸の文庫本はコミックスとは違いビニール包装の習慣がまったくない中、これも業界で先駆けた動きですね。
なおのこと賛否は分かれることでしょう。元文庫本担当としても、かなり思い切ったご決断をなさったな、と驚きをもってニュースに接しました。
それにしてもあの講談社さんのビニール、「取ってくれ」と言われることも多かったのですが、書店員のみなさんやそのままお持ち帰りになってはるお客さまはどうやってあれを取っているのでしょう……? やりやすいやり方あるのでしょうか?
とりあえずは上部(あたま)の端っこあたりをちょっとつまんで持ち上げてカッターでちょんと穴を空けたあとその穴に刃を通して、シャーッと滑らせるようにして上部を切り取ってからひん剥く……という感じでやってたような……?
なにかよい方法がありましたらコメントをお寄せください(笑)
次の記事はこちら↓
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?