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岩の娘

ある日鹿島大明神が、私の元にやってきて
「おい、岩の娘よ。同じ名のよしみで教えてやる。」と言った。
話を聞き終わって私は言った「やはり母は無理をしていたのですね」
その会話が終わったすぐあとに、地球全体のプレートが軋みをあげた。
地球史上最大の地震だった
母が、セーブしていた力を解放したのだ
母が自身のエネルギーをセーブしだしたのはバナナと出会ったのがきっかけだった。バナナは自分に似せて人間を作った。バナナのごとく左右対象に命に限りのあるものとして。
母はバナナが、好きだった
自分とは違う有限の命も、左右対象の顔も、朗らかな笑みも母はバナナのすべてが好きだった。
とある時には、バナナと母で人間の男に嫁いだこともある。そのときは趣向を変えてバナナは木花咲耶姫と名乗っていた。母は磐長姫だ。母らしく飾り気がない名前だ。案の定人間の男はバナナを選んだ
「やっぱり母親に憧れるんだなぁ。人間ってやつは」
母が、言うと
バナナは笑って返した
「でも、私との間にできた子供も本当に俺の子供かって疑うゲス男だったわ」
「ああ~バナナを疑うなんてなんて奴、ありえん」
「ありえん!」
そういって二人は笑った
母はバナナとバナナの作った人間が、大好きだった。だからなるべく人間の絶滅を延ばそうとしていた。それが裏目に出た。母のエネルギーは爆発してしまった
人間はそれから生きることに必死になった。必死で必死で、私の噂もしなくなった。私は人間を少しビビらすのが生き甲斐だったので少し寂しかった。私は母ほどのエネルギーは持っていない。でも人の噂話にのっかって無限増殖した時期もあった。大震災のあとはみんな生きることのみに心血を注注ぐようになった。
私の出番はない。
そもそも私はバナナを愛する母に、バナナの作った人間に似せて作られた。
けれど、作ったのが母だからやっぱり不均衡だった。
プレートの力はいつだってかなり不均衡だからこうなんかねぇ、と母は少々納得してない様子で私を見ながら言った。
時々勘のよい私を感知できる人間には恐れられた。
だって私は母の娘だから。
でもバナナとバナナ作った人間が好きで自らの力にセーブをかける母の娘である私も人間には甘かった。
母はバナナが、精根込めて作ったのが人間なんだから傷つけてはあかん。とよく言っていた。
だから私も驚かす程度にとどめた。
もうちょい私も母も人間にピリ辛に対処しても良かったのかもしれない。そうしたら違った結末だったかもしれない。
と、人間が、絶滅した地球の砂浜で私は思った。地震のあと、どうしようもない地震前から自分達が引き起こした異常気象と災害と更なる地震に見回れた人間は地球をこれでもかというぐらい恨みを込めてむちゃくちゃにして、一部の富裕層だけが、地球の外に理想郷を求めて出ていった
最後には、地球に残される貧困層と出ていきたい富裕層でバリバリの殺しあいになって、富裕層は核爆弾をこれでもかというぐらい貧困層の住む地域に打ち込んだ。貧困層などという概念がなくなるぐらい同胞をめちゃくちゃにしたあとも地球に後ろ足で砂をかける如くに、宇宙から核爆弾を打ち込んだ。
私はずーっとバナナと人間のために我慢していた母が、多少なりともとはいえ傷つけられて不憫に思ったが、母は意外と飄々としてそんなこともあるわと笑っていた。バナナももういない世界の母の笑みはやはりどこか昔と違う。

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