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一枚しか貼られていない箇所に発生するモアレ

重ね貼りではない箇所なのに、網点トーンの部分がモアレになってしまう場合があります。

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この画像は、かなり極端にモアレを起こさせたサンプルですが、実際はモニターで見ていたら気づかないくらいなのに印刷されたらモアレになっていた、という場合もあります。

これは、「アミのドットの形が不揃いになっているため」に起こるモアレです。

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このモアレは「画面のアミトーンの部分すべて」に発生する可能性もあり、見た時にかなり気になる場合も多いので、できるかぎりこのモアレの発生は抑えたいところです。

なお、アミ部分を拡大して見た時に「綺麗な丸になっていないからモアレになる」と思う人がいるかもしれませんが、「モノクロ2階調600dpi」の「アミのドット」は、綺麗な丸にはなっていません

「モノクロ2階調600dpi/60線10%」

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これはモアレは起こしていないアミです。400%くらいに拡大表示させてみると、ドットはこんな形をしています。

「モノクロ2階調1200dpi/60線10%」

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1200dpiだと、このくらいの丸にはなります。

ではなぜアミのドットの形状が不揃いになってしまうかですが、これは様々な理由が考えられます。

1:2値アミ点ドットの画像を回転や拡大縮小した

二値化が確定している「アミ点ドット」のラスター画像は、回転も拡大縮小も厳禁です。
ちょっと変形させただけでもあっという間にドットの形状が劣化し、結果的にその部分にモアレを起こすことになります。

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「トーン素材」「画像素材」として、すでに2値網点化にラスタライズされている画像を使うことはおすすめしないのはこれが理由です。
この「拡大縮小」は、キャンバス上の操作だけではなく、書き出し時にキャンバスの大きさとは違う大きさでリサイズして書き出す操作も含みます。B5で描いた原稿をA5サイズに書き出す、などの操作です。
2値網点化ラスター画像を使用する場合は、その画像を一切変形させないように注意をはらう必要があります。

2:ドットがグレーになっている

ドットの形自体は揃っていても、ドット自体が「黒100%」ではなく、グレーになっている場合、モアレの危険があります。

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この画像は30%ぐらいのグレーになっていますが、70%以上の濃いグレーになっている場合気づきにくいので注意が必要です。
ドットがグレーになっている状態のアミを「グレースケールデータ」として「AMスクリーン印刷」にすると、かなりの確率で目立つモアレになってしまいます。

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これは、印刷結果のモアレを擬似的にクリスタで再現したものですが、実際の印刷結果はもっと目の細かいモアレになると思います。
ただし、「FMスクリーン印刷」の場合は、あまりモアレは気にならない結果になる可能性があります。

3:ドットにアンチエイリアスがかかっている

クリスタでトーンのドットにアンチエイリアスをわざわざかけるのは結構手間ですが、Photoshopの「カラーハーフトーン」などは、一見網点化されていてもドットにアンチエイリアスがかかっています。

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ドットが綺麗な丸に見えて一見良さそうなのですが、この状態の網ドットを「グレースケールデータ」として「AMスクリーン印刷」で印刷すると、高い確率でモアレになります。

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アンチエイリアスのかかったドットがAMスクリーンで印刷されると、ドットが不揃いになる原因になります。
ただし、「FMスクリーン印刷」の場合は、あまりモアレは気にならない結果になる可能性があります。

これらは、線数が高い(目の細かい)アミほど印刷結果としては顕著にモアレが目立ちます。

モニターで見ている場合、モニターの解像度とアミの相性の関係で、表示倍率によっては実際には問題ないのにモアレになって見えたり、逆に実はモアレを起こしているのにそう見えない、という場合も結構あります。
モニターの見た目だけでモアレになっているかどうかを完全にチェックするのは難しいのですが、表示倍率を100%以上にして、アミのドットが不揃いになっていないかをチェックするとある程度判断できます。

実際のモアレの原因は、これらが複合している可能性もあります。
それぞれの詳しい説明と回避法はまた改めてご紹介しようと思います。

番外:アミ点部分の上にグレーを重ねている

アミ点トーンの上にグレーが重なった状態のデータを「グレースケールデータ」として「AMスクリーン印刷」をすると、重なった部分がモアレになる可能性が高いです。

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これは、現象としては「重ね貼りの箇所に発生するモアレ」になります。

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「グレースケールデータのAMスクリーン印刷」というのは、「グレー部分をアミ点に変換して黒インク一色で印刷する」技術になります。
理屈としては、クリスタ上での「グレー部分のトーン化」と同じことをしているわけです。

実際オフセット印刷の場合は線数が175線、軽オフセットでも133線か100線で処理されているそうですので、クリスタなどのトーン化よりもずっと目は細かくなりますが、それでも「網点化」にはかわりありません。
2値網点化の60線などのトーン部分の上にグレーが重なっていると、印刷の製版段階でグレー部分が175線や133線などで網点化され、結果的に「線数の違うアミを重ねた」状態になり、モアレが発生するわけです。

これと同じ理由で「アンチエイリアスのかかった描線にアミトーンが重なっている部分」も、AMスクリーン印刷ではモアレになる可能性があります。
「線のアンチエイリアス」はかなり範囲が狭いので気にならない場合も多いとは思いますが、重なっているトーンの線数が高く目が細かい場合、描線のエッジのボケの部分のモアレが目立つ可能性もあります。
アミトーンを使う場合、描画線はアンチエイリアスはかかっていない二値化されている線の方が安全です。

ただし製版方法の「FMスクリーン」というのは、グレーの階調表現を「網点化」ではなく「点描」で行うため、重なった部分にもモアレは起きない可能性が高いです。

同じグレースケール印刷でも「AMスクリーン」と「FMスクリーン」では結構画面の印象が変わり、どちらがいいかは好みも大きいかと思いますが、アミトーンとグレーを混在させている画面の場合は「FMスクリーン」印刷の方がモアレの危険は少ないと言えます。

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